【連載】知っておきたい お金のはなし

vol.4 積立投資を始める前に これだけは準備しておこう!

執筆 高梨子あやの

看護師・2級FP技能士/日本FP協会認定AFP

前回のvol.3では積立投資の仕組みを解説しましたが、読んでくれたみなさんのなかには、銀行に預けるよりもお金を増やすことができそうだと、貯金がなくても投資を始めようと考える人がいるかもしれません。筆者は、以前積立投資中に貯金残高が不足し、投資資産をほとんど売却せざるを得なかったことがありました。その時点で購入時より値下がりしていたため、結果的に損をすることになりました。投資をする際には資金面での計画を立てることが重要だということを強く感じたものです。

積立投資においては、リスクを減らし、メリットを最大限に得るために、長く続けることが大前提となります。これを踏まえ、積立投資を始めるときの注意点や積立投資を取り入れた場合の家計の変化などをシミュレーションも交えて解説していきたいと思います。

■積立投資は何となく始めてはいけない

 最近では買い物でたまったポイントでも積立投資ができるようになるなど、気軽に投資を始めることができるようになりました。でも、その手軽さゆえに、証券口座を開設し、いきなり商品を選んでしまいがちなことも事実。何となく始めると思わぬリスクが生じる可能性もあるので、しっかりと準備して始めるようにしましょう。

 また始めたとしても、投資商品の購入を開始した直後に半年ほど運用がストップするなどトラブルの可能性もあります。実はこれは筆者の体験です。想定外のことも起こり得ることは忘れずにいてください。

図1 積立投資の始め方
積立投資の始め方

1.投資プランの立案

 投資先を選ぶには、まず資産をつくる目的と目標額を考えることが大切です。証券会社のホームページなどに積立シミュレーションが紹介されているので、いつまでにどのぐらいの資金が必要なのか目安となる金額を決め、そこから逆算して投資額を決めるとよいでしょう。

 また、働き続けることを前提に考えてしまうことが多いと思いますが、病気などで働けなくなった場合に今の生活を保てる準備はしておきたいところです。最低でも3カ月~半年分のお給料に相当する額の貯金があると安心ですね。看護師は収入が安定していますが、慢性的なストレスや余裕のなさから、支出が増えてしまう人が筆者の周りにも多くいました。思うように貯金ができないという方は、まずは収入の20%を貯蓄へ回せるよう家計を見直してみましょう。

2.「10年以上続く」がポイント

 積立投資は、手数料の大きさが利益を左右することがあります。そのため、「できるだけ手数料の低いものを選びましょう」といわれることは多いと思います。でもその一方で、長期間運用できるかどうかの見極めも重要です。日本で取り扱っている投資信託は、7割以上が実績10年以下の商品。また、約半数は初めから10年以下の運用期間に設定されています。そのため、商品を選択する際に確認することが必要です。

 さらに、途中で運用がうまくいかない、人気がなくなったなどの理由から、運用会社が商品の運用をやめてしまったり、強制的に運用年数が短くなることもあります(繰上償還:決められていた信託期間よりも短い期間で運用が終了する、あるいは、信託期間が決められていなかった投資信託の運用が終了する)。こうなると、損失が出たり、複利の効果を得られにくくなることも考えられます。こういったことを避けるために、純資産額が大きい運用会社であるか、長く運用できる商品かにも着目する視点をもっておくとよいでしょう。

■積立投資にはやってはいけない7つのNG行動がある

 積立投資で商品を選ぶとき、そして運用するときには、やってはいけない「NG行動」がいくつかあります。ここで初めての人がしがちなことを整理しておきます。7つ挙げてみましたので、頭に入れておくといいでしょう。

○無計画に始める
○手数料の安さだけで判断する
○過去のリターンだけで判断する
○人気ランキングで選ぶ
○毎月分配型をチョイスする
○とにかく分散と考え、やみくもにいろんな商品を買う
○価格の変動に左右され短期売買を繰り返す

 投資信託では、長期間の運用と一定額の積立により価格を平準化(価格の出入りをならし一定になるよう調整すること)することが重要です。ですから、その時々の価格変動に一喜一憂して積立額や投資先を変更すると、長期運用のメリットが損なわれてしまいます。ハラハラすることもあると思いますが、積立投資では見守りも大事です。

 また、ランキング上位の商品でも、先に述べた繰上償還のリスクが高い商品も多くあり、運用実績や純資産額の推移、投資先など広い視野をもって判断していくことが大切となってきます。

 毎月分配型のものには、月の不労収入が増えるというメリットがあります。しかし、その分複利で増やす効果は低くなるため、将来的な資産は目減りしてしまいます。

 運用の目的から、どのメリットを優先するかを決めていきましょう。

■積立投資を取り入れると資産形成はどう変わる?

 将来を見据えて資産形成をするときに、特に考えなければならないのは、教育費、住宅資金(住宅ローン)、老後の生活に対する備えになると思います。それらに積立投資を取り入れる場合には、どのように考えていけばよいのか、具体的にみていきましょう。

1.教育費の準備

 子どもの教育費は進路によって大きく変わります。子どもが生まれたばかりで2人目も希望している夫婦を例に考えてみましょう。

 子どもの進路によって必要額は変わります。夫婦には、中学校までは公立の学校に通うこととし、高校と大学は私立でも行けるようにしたいという希望がありました。そうすると、私立高校で291万円、私立大学で459万円がかかり、子ども2人分なので、15年後までに1500万円の準備が必要となることがわかりました。貯金だけで準備するとなると月8万4000円の貯蓄が必要となります。

 そこで、積立投資を導入することにしてみます。必要な資金を1500万円として、逆算して投資金額を考えると、目標平均利回りを3%で計算した場合は毎月7万円、利回り5%を目標にすると毎月6万2000円の積立金額となります。もちろん運用実績によっては目標以上の利回りになる場合もありますが、初めから高い利回りで計画してしまうと目標に達しなかったときにカバーできなくなってしまいます。低めの利回りで計画しておくほうが安全でしょう。

 教育費を考える場合は、途中で進路に変更があっても大丈夫なよう想定することが大切です。

図2 積立投資を用いた教育費の準備
積立投資を用いた教育費の準備

2.住宅ローン&老後資金での考え方

 住宅ローンは長期にわたることが多いので、老後資金も踏まえて資産形成を考えることが必要です。

 30歳の共働き夫婦がマイホームを購入したとしましょう。住宅ローンは3500万円で1.5%の固定金利、35年で毎月11万円の均等払いとします。繰上げ返済をしたほうがよいか悩んでいるので、積立投資を導入した場合をシミュレーションしてみます。

 パターンAとBは35年間住宅ローンの支払いと7万円貯蓄で、Aは貯金、Bは積立投資を継続。パターンCでは20年目まではBと同様に積立投資をしながら20年目に住宅ローンの一括返済をして、65歳までの15年間は返済分を積立投資にまわし、毎月18万円積立投資をしました。

 この結果、貯金と積立投資では35年後の資産額に明確な違いが現れます。平均利回りを5%としてシミュレーションした場合、パターンBがより多くの資産をつくれることがわかりました。住宅ローンには団体信用保険もあるため、もしものときはローンの返済が免除になるというメリットもあります。

 住宅ローンはあくまでも借金なので、早く返済したい! という方もいるでしょう。何かあったときのため資産は十分確保したうえで、返済していくとよいでしょう。

図3 住宅ローンと老後資金の準備
住宅ローンと老後資金の準備



☆vol.4のまとめ☆ 積立投資は長期間続けることでリスクが軽減し、資産を増やすことができるということがわかってもらえたかと思います。そのためには、ライフプランを考え、投資後のお金の流れをイメージすることが何よりも大切。必要な積立金額がわかることで、自由に使ってよいお金がいくらあるのかも把握できるようになるのです。

 老後の不安が大きいからと、我慢ばかりの生活では、人生を楽しむことができなくなってしまいます。より豊かな人生を送るためにも、“今”を楽しみながら、生涯収入を増やすための「自己投資」もしていけるとよいですね。まずは自分自身の人生の全体像を想定・把握して、積立投資のプランを立案してみましょう。

参考資料

●金融庁:家計の安定的な資産形成に関する有識者会議 議事録・資料等 第2回 平成29年3月30日開催 説明資料(2020年2月3日閲覧)
https://www.fsa.go.jp/singi/kakei/siryou/20170330/03.pdf
●文部科学省:平成30年度子供の学習費調査 調査結果の概要(2020年2月3日閲覧)https://www.mext.go.jp/content/20191212-mxtchousa01-00000312303.pdf
●文部科学省:教育 小学校、中学校、高等学校 私立学校の振興 各種調査結果 私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金調査結果について(2020年2月3日閲覧)https://www.mext.go.jp/amenu/koutou/shinkou/07021403/141203100001.htm
●金融庁:金融庁の政策 投資の基礎知識 NISA特設ウェブサイト NISAとは? NISA  NISAの概要(2020年2月3日閲覧)https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa/overview/index.html
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●金融庁:金融庁の政策 投資の基礎知識 NISA特設ウェブサイト 投資の基本 分散投資 時間の分散(2020年2月3日閲覧)https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/knowledge/basic/index.html
●一般社団法人投資信託協会:投資信託を学ぼう 投資信託ってなんだろう? そもそも投資信託とは?(2020年2月3日閲覧)https://www.toushin.or.jp/investmenttrust/about/what/
●一般社団法人投資信託協会:投資信託を学ぼう 投資信託ってなんだろう? 投資信託の仕組み(2020年2月3日閲覧)https://www.toushin.or.jp/investmenttrust/about/scheme/
●楽天証券:投資信託 投信積立 積立かんたんシミュレーション(2020年2月3日閲覧)https://www.rakuten-sec.co.jp/web/fund/saving/simulation/
●CASIO:Keisan生活や実務に役立つ計算サイト お金の計算 ローン返済(毎月払い)(2020年2月3日閲覧)https://keisan.casio.jp/exec/system/1256183644
●CASIO:Keisan生活や実務に役立つ計算サイト お金の計算 積立計算(複利毎課税)(2020年2月3日閲覧)https://keisan.casio.jp/exec/system/1254841870

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