お気に入りに登録

HIV感染症の治療・ケアにおいて看護師に期待すること

解説 松下修三

ヒトレトロウイルス学共同研究センター熊本大学キャンパス 臨床レトロウイルス学分野 教授/一般社団法人 日本エイズ学会 理事長

2020年1月31日、ヴィーブヘルスケア株式会社主催のHIVに関するセミナーが開催されました。ナース専科plus編集部ではセミナー後にヒトレトロウイルス学共同研究センター熊本大学キャンパス 臨床レトロウイルス学分野 教授である松下修三先生へのインタビューを実施。HIV感染症の治療における看護師に対して期待すること、実際にケアに当たる際の心構えなどを伺いました。

チーム医療の中心的役割を果たし、治療の継続を支える

 我々の病院は中核拠点病院として、HIV治療については医師・薬剤師・看護師・カウンセラー・ソーシャルワーカーなどの職種からなるチームで対応しています。HIV治療の継続を左右するのは、患者さんの生活とメンタルの安定です。2,3か月に1度来院していた患者さんが急に来なくなるというケースがあり、看護師さんにはそういった事態をなくすためにチームの中心的役割を果たしてもらっています。

生活とメンタルの乱れを看る、感じる

 例えば、患者さんは医師の前では普通を装って振舞っていても、看護師さんには心の内を言えたりするものです。患者さんにはゲイの方も多く、家族関係が希薄化している場合があります。このような問題を抱えていると社会でも疎外されている可能性があり、仕事に行けなくなり、そのうち薬も取りに来られなくなる、適応障害のようなケースが起こります。実際のところ、HIV感染症・AIDS患者さんには自殺企図が多いと報告されています。その原因として、情緒障害が関係しているといわれています。

 実際の診療でも、このような社会背景を抱えている可能性を念頭において対応しています。しかし、やはり生活により近いところにいるのは看護師さんです。患者さんに寄り添ったかかわりの中で、生活やメンタルに関したケアの必要性を看たり感じ取ったりすることを期待しています。そして、生活に問題がある場合はソーシャルワーカー、メンタルに問題がある場合はカウンセラーと情報を共有するなどして、継続的な長期療養・在宅療養のサポートを行ってもらいたいです。

普通に接すればいい

 HIV陽性者やAIDS患者さんの中には、一般の医療従事者の無理解からくる言動が、とても大きなスティグマとして残っているケースがあります。過度な警戒は、反対に彼らを傷つけてしまいます。構えてしまう看護師さんも少なからずいるのかもしれませんが、それはHIVに関する正しい知識を知らない、そして慣れていないからです。現在は、患者さんに通常行っているケアを通じて看護師さんにHIVがうつることはありません。正しい知識へとアップデートした上で普通に接するのが一番です。

〇HIV曝露事故後、曝露後予防内服を全く行わない場合の感染率
・針刺し事故:0.3%(0.2-0.5%)
・粘膜曝露:0.09%(0.006-0.5%)
〇多剤併用による曝露後予防内服実施後のHIV感染確定例報告数(職業的曝露)
  0件 (米国サーベイランス 2010年12月時点)

エイズ治療・研究開発センター「血液・体液曝露事故(針刺し事故)発生時の対応」(http://www.acc.ncgm.go.jp/medics/infectionControl/pep.html)を元に作成

*注射針のリキャップをしないなどのユニバーサルプレコーションが守られてる場合。また、曝露事故後は速やかな対処が必要。

参考文献

1)厚生労働省:後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針(2020年2月10日閲覧)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000186686.pdf
2)エイズ治療・研究開発センター:医療機関におけるHIV感染対策の原則(2020年2月10日閲覧)http://www.acc.ncgm.go.jp/medics/infectionControl/principles.html
3)エイズ治療・研究開発センター:血液・体液暴露事故(針刺し事故)発生時の対応(2020年2月10日閲覧)http://www.acc.ncgm.go.jp/medics/infectionControl/pep.html

ページトップへ