終末期の看護・看護計画|ターミナルケアで看護師ができること

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目次

終末期看護(ターミナルケア)とは

 終末期看護(ターミナルケア)とは、終末期(ターミナル)にある患者さんに対して、全人的苦痛を緩和するために行われる医療や看護のケアを指します。多くは、患者さんの精神的・身体的苦痛の軽減をはかることを目的に行われる医療・看護行為を指し、この点が、身体介助や声かけを中心とする看取りケアとの違いです。

終末期(ターミナル)の定義  

 さまざまな団体が個別の定義づけを行っており、1つに定義づけることは困難です。いかなる治療の効果も期待できず、人生の最期を迎えるそのときが迫っている時期を医学的な終末期(ターミナル)と呼ぶことが多いようです。

「終末期医療に関するガイドライン」(全日本病院協会)では、以下の3点を満たす場合を終末期と定義しています。

表1 終末期の3条件

3つの条件
1.複数の医師が客観的な情報を基に、治療により病気の回復が期待できないと判断すること
2.患者さんが意識や判断力を失った場合を除き、患者さん・家族・医師・看護師等の関係者が納得すること
3.患者さん・家族・医師・看護師などの関係者が死を予測し対応を考えること

全日本病院協会:終末期医療に関するガイドライン~よりよい終末期を迎えるために~(2020年3月4日閲覧)https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/161122_1.pdfより引用

終末期看護(ターミナルケア)のポイント    

死の受容のプロセス

 キューブラー・ロスによれば、人が死を受け入れるプロセスには5段階あり、「否認」 「怒り」「取引」「抑うつ」「受容」です。この5つのプロセスを順番に進むのではなく、行きつ戻りつして進んでいくといわれます。また、当事者である患者さんだけでなく、家族も同様のプロセスをたどります。

表2 死の受容の5つのプロセス

プロセス 状態
・否認 事実を突きつけられても「そんなはずはない」と感情が否定する段階
・怒り 「なぜ自分だけが」と突きつけられた事実に対し怒りを抱く段階
・取引 神や仏に延命を祈るなど、取引を願う段階
・抑うつ 逃れられない事実を前に気力を失いつつ、受け入れつつある段階
・受容 事実を受け入れ諦観していく段階

終末期の苦痛

 終末期(ターミナル期)に、患者さんや家族が抱えがちな苦痛は、主に次の4つに分類されます。これらは相互が関連し合って、全人的苦痛として捉えられます。

1.身体的苦痛
 疼痛、倦怠感、呼吸困難、浮腫などの身体症状に起因した苦痛です。原因を見極め対症療法により、できるだけ早く苦痛の緩和を図ることが大切です。

2.精神的苦痛
 迫りくる避けられない死を前に、不安、孤独、恐怖、抑うつなどを感じることが多くなります。これらを起因としたせん妄を起こす場合もあります。また脳そのものの機能不全によるせん妄を生じることもあります。

3.社会的苦痛
 仕事上の問題、家族やコミュニティからの離別や役割の変更にまつわる問題、家庭内の問題、経済的な問題などにより感じる苦痛があります。

4.スピリチュアルの痛み
 自分が生まれた意味、人生の意味、病になった意味、この苦しみの理由など、精神よりも深いところから生じる苦悩を表します。

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意思決定支援

 終末期看護(ターミナルケア)を行ううえで大切なのは、患者さんが「最期はこうありたい」という思いを表出し、それを患者さん自身の意思で選択・決定できるようにすることです。私たちは患者さんの人生観や価値観などを十分に把握し、必要なケアが包括的に提供される環境を整えていく必要があります。
そのためには、次のようなことが大切となります。

1.医療従事者から意思決定に必要な情報が十分に伝えられること
2.患者さんとの話し合いを繰り返し、思いの表出を促し、受け止めること
3.一度決定した意思は、いつでも変えられることを十分伝えること

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終末期(ターミナル)の身体的特徴

 終末期(ターミナル)に表れる主な身体の変化は表3の通りです。

表3 終末期(ターミナル)の主な身体的特徴

項目 特徴
バイタルサイン ・血圧低下
・心拍数は増加した後、徐々に低下または不整
・SPO2の低下
呼吸 ・チェーンストークス呼吸
・死前喘鳴
・下顎呼吸の後、呼吸数低下し、呼吸停止
栄養状態 ・食欲不振、食事量の低下
・水分摂取量の低下
排泄 ・便秘、便失禁
・尿量減少、尿失禁
循環状態 ・心機能の低下
・血圧低下
・チアノーゼ出現
・浮腫、腹水
精神状態 ・意識レベルの低下、意識混濁
・せん妄、幻覚
・臨死体験

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終末期(ターミナル)の観察・看護のポイント

 終末期(ターミナル)に現れる症状・苦痛について、看護師ができるケアについて解説します。患者さんの苦痛ができるだけ緩和されるように関わっていきましょう。

身体的苦痛への看護

疼痛

 疼痛には、体性痛、内臓痛、神経障害性疼痛の3つがあります。

表4 疼痛の種類と特徴

種類 原因 薬物療法
体性痛 皮膚、骨、筋肉などの体性組織の損傷など 鎮痛薬、オピオイドの投与
内臓痛 内臓の損傷、内圧上昇、組織の伸展など 鎮痛薬、オピオイドの投与
神経障害性疼痛 神経の損傷などのダメージ 鎮痛薬、鎮痛補助薬の投与

疼痛の観察とアセスメント
 疼痛のアセスメントにあたっては、下記を観察することが大切です。

<疼痛時の観察項目>
・痛みの部位
・痛みが始まった時期と期間
・痛みが出現するパターンや状況
・痛みの強さ
・痛みの性状(ズーンとする、ズキズキ、ビリビリなど)

 痛みは主観的な感覚であるため、痛みの強さについては、疼痛スケールを用いて数値化したうえでアセスメントを行います。また、疼痛への処置を実施したあとは、経時的に評価を繰り返し、効果を確認することが大切です。
疼痛スケールには、ヌーメリック・レイティング・スケール、フェイス・スケールなどさまざまなものがあります。

疼痛の看護のポイント
 医師の指示に基づき、疼痛緩和を目的とした薬剤投与を実施します。終末期(ターミナル)の疼痛には、高容量のオピオイドや非オピオイドが使われることが多いため、有害事象の出現に注意します。オピオイドの有害事象には次のようなものがあります。

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<オピオイドで現れる有害事象>
・眠気
・便秘
・悪心・嘔吐
・せん妄
・呼吸抑制

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倦怠感

 終末期(ターミナル)の倦怠感は「身の置きどころがないだるさ」などと表現されることが多い強い主観的症状です。倦怠感はそれだけが生じていることは少なく、貧血、胃腸の不快感、不安、不眠などを伴うことも多いといわれます。薬剤の副作用によるものなど原因があるものと原因不明のものに分かれます。

倦怠感の観察とアセスメント
 倦怠感のアセスメントにあたっては、下記を観察することが大切です。薬の副作用や肝機能の低下など原因が明らかな場合は、まず原因への治療を行います。

<倦怠感への観察項目>
・いつから起きているか
・どのような倦怠感か
・使用薬剤
・検査データ
・不安や気分の落ち込みはあるか
・痛み、めまい、悪心などの身体症状はあるか
・眠れているか

倦怠感への看護のポイント
 1日のうち、倦怠感に強弱のある時間帯があるようであれば、軽い時期に日常生活動作を行ってもらうようにします。体力の消耗を示している場合もあるため、体力を温存できるようにし、マッサージや温罨法などによりリラクゼーションをはかることも有効です。不眠が強い場合は睡眠薬を医師と検討します。
 
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食欲不振

 終末期(ターミナル)の食欲不振は、疾患そのものの影響、体力の低下や代謝異常、治療や薬剤による有害事象、不安やうつなど精神的影響など、さまざまな原因によって引き起こされます。

 特にがん末期の患者さんでは、食事摂取量の減少と代謝異常が組み合わさった「がん悪液質」という症候群に陥ることがあります。がん悪液質では、進行性の著しい筋肉組織の減少を生じ、不応性悪液質期に至ると、生命予後が3か月未満といわれます。

表5 がん悪液質の分類

分類 定義
前悪液質期 体重減少が5%以下、食欲不振、軽度の代謝異常、明らかな症状がない
悪液質期 体重減少が5%以上、BMIが20未満でありかつ2%を超える体重減少、筋肉減少症かつ2%を超える体重減少
不応性悪液質期 異化亢進・治療抵抗性であり、Performance statusが低下

食欲不振の観察とアセスメント
<食欲不振時の観察項目>
・食事の摂取量
・主訴の聴取
・体重、BMI
・検査所見(血液検査データ、腹部聴診、腹部超音波、腹部X線、腹部CTなど)
・精神状態の聴取と観察
・排便状態
・食事環境の整備(臭気、量、盛り付け、落ち着いた雰囲気など)

食欲不振への看護のポイント
 原因の観察とアセスメントを行い、原因がある場合は医師の指示のもと対応を行います。消化器症状、不眠、倦怠感、疼痛などを原因とする場合は薬物による対症療法が行われるため、服薬管理と観察を行います。

 食欲には周囲の環境が大きく影響を与えます。落ち着いた静かな場所、食べやすい食事量や食形態などの工夫、周囲の臭気への注意など、環境整備が重要になります。

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呼吸困難

 呼吸の際に努力や苦痛を感じる主観的な症状が呼吸困難です。終末期(ターミナル)の呼吸困難には、肺の疾患によるもの、心臓の疾患によるもの、がんに関連するものなど疾患に起因するものの他、治療や薬物投与によるものなどがあります。また呼吸困難には、咳嗽、胸痛、喀痰などが同時に現れることがあります。

呼吸困難の観察とアセスメント
<呼吸困難時の観察項目>
・主訴の聴取
・呼吸器所見(呼吸数、リズム、深さ、喘鳴、呼吸補助筋の仕様など)
・検査所見(CRP、WBC、血沈、胸部X線、胸部CT、肺機能検査など)
・循環状態所見(SpO2、チアノーゼの有無、心電図、心臓超音波など)
・呼吸困難度の評価(VAS法、NRS、mBSなど)

呼吸困難への看護のポイント
 呼吸困難の原因となる疾患への治療とともに、酸素療法を行います。指示された酸素流量のコントロールとSpO2などにより低酸素血症改善への評価を行います。

 患者さんの姿勢の工夫やNPPVなどにより換気補助療法を行い、呼吸仕事量の改善をはかることも有効です。呼吸リハビリテーションによる徒手的な呼吸補助により、呼吸苦が改善されることもあります。

 終末期(ターミナル)の呼吸困難では、オピオイドの使用も検討されます。ただしオピオイドには呼吸抑制作用があるため出現に注意します。

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腹水

 腹水は腹腔内に体液が異常に貯留した状態です。原因疾患によるもの、循環動態の不良によるもの、低栄養状態によるものなどさまざまです。多くは利用薬の投与が行われますが、腹部膨満感が顕著な場合は、腹腔穿刺を行います。

腹水の観察とアセスメント
<観察項目>
・主訴の聴取
・腹部の触診・聴診
・呼吸困難
・食欲
・消化器症状(悪心・嘔吐)
・便秘
・検査所見(血液検査、炎症反応、腹部X線など)

腹水への看護のポイント
 腹水には、腹部膨満感、呼吸困難、悪心などを伴うことが多く、患者さんの苦痛と不安は増大します。そこで全身状態の観察とあわせ、不安へのケアを実施します。活動量の低下に対しては、無理なく安楽に過ごせるよう環境整備を行います。

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浮腫

 終末期(ターミナル)における浮腫はさまざまな原因によって生じているために状態改善が難しく、なかなか患者さんの苦痛軽減に至らない場合が多くあります。そのなかでも、患者さんのQOLが維持できるように精神的ケアに努め、褥瘡や感染などの合併症が起こらないよう皮膚状態の観察とケアを怠らないようにしましょう。

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精神的苦痛への看護

不安

 不安は誰にでも生じるものですが、特に終末期(ターミナル)における患者さんは、病状の悪化、孤独感、迫りくる死への恐怖などから精神的ストレスを感じ、不安につながりがちです。強い不安はせん妄や不眠などの身体症状を引き起こし、療養生活への妨げにもなるため、不安の程度をアセスメントし、強いときには薬物療法などの対処が必要です。

不安の観察とアセスメント
<不安への観察項目>
・主訴の聴取・傾聴
・精神状態(イライラする、落ち込む、マイナス思考に陥る、考えがまとまらない、悲しい、怖いなど)
・身体症状(不眠、肩こり、食欲不振、めまい、頭痛、下痢・便秘など)
・社会的行動(飲酒、暴言・暴力、孤立する、自棄な行動など)
・強さの評価(評価スケールの使用)

不安への看護のポイント
 不安は主観的な感覚であるため、程度を適切に評価することが大切です。評価スケールには「抑うつや不安症状の評価表:HADS」や身体症状と気分に焦点をあてた「エドモントン症状評価システム:ESAS」などがあります。軽い~中程度の不安には、睡眠導入薬や抗不安薬の投与のほか、リラクセーション法やマッサージなどの代替療法も効果を示すことがあります。強い不安に対しては、抗不安薬、抗精神病薬などの投与が行われるとともに、適切なタイミングで精神科へつなぐことも大切です。

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せん妄

 せん妄は、高齢などの準備因子に、疼痛などの誘発因子が重なることで生じます。急性な脳の機能不全によって起こる変動する意識と認知の障害です。終末期(ターミナル)の患者さんにはよくある症状の1つで、がん患者さんの終末期では、死亡直前の9割に発症するとされています。せん妄は、うつや認知症と間違われやすく、誤った対処により遷延化させると死亡率にも影響を与えるため、適切な鑑別と対応が大切です。

せん妄の鑑別
 せん妄の診断には、アメリカ精神医学会による診断基準(DSM-5)や国際疾病分類第10版(ICD-10)などが用いられます。なお、うつや認知症の悪化との違いは表6の通りです。

表6 せん妄の特徴

特徴 内容
急激な発症 数時間から数日以内の急激に発症
症状の日内変動 症状が夜悪化することが多く、日中との差がみられる
軽度の意識障害 見当識に障害を来す

せん妄のアセスメント
<せん妄の観察項目>
・注意力(集中・維持できるか、会話があちこちに飛ぶなど)
・急な発症(数時間~数日で発症したか)
・日内変動(1日の中で症状に変化がみられるか)
・認知の障害(失見当識、記憶の欠損、言語や空間認知の障害など)
・病歴、身体所見、検査値、投与薬物など誘因の探索

せん妄の看護のポイント
 見当識の障害を軽減するとともに、苦痛を少しでも緩和し、安心感をもたらすかかわりが大切です。具体的には、適切な照明や室温、騒音を避けるなどの環境整備、時計やカレンダーをわかりやすい場所に配置する、声がけやタッチングなどを用いたコミュニケーションをはかるなどが有効です。

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さらに終末期(ターミナル)のせん妄ケアに関する記事はこちら
第12回せん妄の幅広い症状から異変をキャッチする|終末期の症状緩和⑤

せん妄の治療とケアに関する記事はこちら
第13回せん妄の治療やケアはどうするの?①可逆性・不可逆性せん妄

不眠

 不眠は、睡眠が十分にとれないという主観的症状です。終末期(ターミナル)の不眠の原因には、予後への不安や悲しみ、迫る死への孤独や絶望感などの精神的原因のほかに、体力の低下による強い倦怠感などがあります。不眠は、主観的症状であるものの、思考力や集中力の低下、抑うつにつながるなど身体的・精神的影響があるため、適切にアセスメントを行い、対応をはかります。

表7 不眠の種類

種類 状態
入眠困難 眠ろうとしてもなかなか寝付けない
中途覚醒 睡眠中に何度も目を覚ましてしまう
早朝覚醒 起床時間より2時間以上早く目が覚め、そのまま寝られない
熟眠障害 十分睡眠をとったはずなのに熟睡感が得られない

不眠の観察とアセスメント
<不眠への聴取項目>
・睡眠時間
・すぐに眠ることができているか
・夜中に目が覚めているか(その理由)
・明け方に目が覚めているか
・熟睡感の有無
・眠れないことでどのように困っているか
・投与薬の確認
・寝室周囲の環境(照明、室温・湿度、騒音など)など

不眠への看護のポイント
 終末期(ターミナル)の患者さんのなかには、「眠るともう二度と目覚められないのではないか」という不安や恐怖感を抱いていることがあります。終末期(ターミナル)特有のこのような訴えを傾聴・受容するとともに、睡眠に適した環境整備、睡眠導入を促す働きかけ、マッサージなどのリラクセーションなどを行い、睡眠を促すとともに、必要があれば医師につなぎ薬物療法を実施します。

<睡眠を促す働きかけ>
・入眠2~3時間前に入浴や足浴を行う
・入眠前に明るいテレビの画面やスマートフォンの画面などを見ない
・室内を薄暗くし、騒音を避ける
・睡眠薬や睡眠導入剤の使用を検討する

表8 睡眠薬の種類

種類 商品名
ベンゾジアゼピン系 レンドルミン(短時間型)、ハルシオン(超短時間型)、デパス(短時間型)、ベンザリン(中時間型)、サイレース(中時間型)、ロヒプノール(中時間型)、ドラール(長時間型)
非ベンゾジアゼピン系 アモバン(超短時間型)、マイスリー(超短時間型)、ルネスタ(超短時間型)
メラトニン受容体作動薬 ロゼラム

超短時間型:効果のピークは1時間以内、作用時間は2~4時間ほど
短時間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は6~10時間ほど
中時間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は12~24時間ほど
長時間型:効果のピークは3~5時間、作用時間は24時間以上

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社会的苦痛への看護

 患者さんを社会のなかに存在する個人として捉えると、家庭における個人、職場における個人、友人・知人関係のなかでの個人など、さまざまな立場と役割があることがわかります。終末期(ターミナル)における社会的苦痛とは、これらさまざまな立場と役割の変容と喪失に伴う苦痛といえるでしょう。看護にあたっては、患者さんを1人の社会的存在として包括的に捉える視点が欠かせません。
 
 患者さんのライフスタイルにより社会的苦痛は多岐にわたりますが、一般的に次のような問題を抱えやすく、これらの問題を起因とした痛みを感じる立場に置かれがちです。

・仕事上の問題(仕事の引継ぎや跡継ぎについて、自己実現への諦めや挫折、役割の喪失など)
・家庭内の問題(子供の将来への心配、離別の悲しみや苦痛、役割の喪失など)
・経済的な問題(家計への不安、学費・養育費への問題、医療費の問題、葬儀費の心配など)
・人間関係上の問題(仲間との離別、所属していたコミュニティからの離脱・離別、役割の喪失など)

家族への支援

 終末期(ターミナル)においては、死が迫っている患者さんを前に世話を続ける家族もまた、患者さんと同様に強いストレスに曝されがちです。支える側としての負担感や本人でないからこそ感じる無力感などに対して丁寧にアセスメントを行い、必要な援助を行っていくことが大切です。

家族の観察とアセスメント
<家族のアセスメント項目>
・家族構成
・キーパーソン
・家族間の人間関係
・患者さんの家族内での役割
・家族の価値観
・患者さんへの希望
・家族間のコミュニケーション
・終末期(ターミナル)への理解と受容度
・患者さんの世話にあたっての家族資源
・経済状況
・課題の有無と解決能力など

家族看護のポイント
 患者さんの終末期(ターミナル)にあたり家族は、離別の悲しみ、絶望感、受け入れ難い現状への怒り、無力感、今後の生活への不安、新たな役割や関係性の変更などに直面しており、強い危機状態にあります。

 看護師は、家族の価値観を尊重したうえで抱える課題をアセスメントし、寄り添った支援を行うことが大切です。家族の想いに配慮し寄り添い続けることで、思わぬ家族の力を引き出し、問題解決へ向かう手がかりをつかむことができる場合もあります。

 またこの時期は、患者さんが死を迎え家族が穏やかに看取りを行えるように、これから起こるであろうことを予測し、できるだけ具体的に伝えることで、看取りの準備を進めていく時期でもあります。家族にとっても納得した気持ちで患者さんの看取りを行うことができると、その後の死の受容にもつながり、家族の生きる力にもつながっていきます。

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さらに家族・遺族のケアに関する記事はこちら
第13回家族ケア・遺族ケア|がん患者さんの家族も緩和ケアの対象です


コラム:鎮静(セデーション)について

 鎮静(セデーション)は、患者さんの苦痛緩和を目的に検討される薬物療法です。鎮静(セデーション)を行うかどうかの判断は、医療スタッフと家族が十分に話し合ったうえで決定していきます。耐え難い苦痛への緩和としての鎮静(セデーション)や死亡直前に起こりやすい不可逆性せん妄に対する鎮静(セデーション)などでは、予後を早めることにもつながる場合が多いため、家族の精神的ケアにも注意を払います。


看護計画

 終末期(ターミナル)の看護計画の例として「倦怠感」に焦点をあてて紹介します。患者さんが自分の症状とうまくつき合っていけるよう、状態を見極めたうえでのケアが大切です。

看護問題

#1 全人的苦痛に伴うQOLの低下
#2 ADLの制限に伴うセルフケア不足

看護目標

・倦怠感が軽減する
・QOLを維持しながら終末期(ターミナル)が過ごせる

観察計画

・バイタルサイン
・意識状態
・食事摂取量
・飲水量
・睡眠状態
・排泄回数
・苦痛の有無と程度
・ADLの変化
・精神症状の変化
・言動や言葉数の変化

ケア計画

・NRSやフェイススケールなどを活用して倦怠感の程度を把握する
・安楽な体位の調整
・ADLに応じたベッドサイドの環境調整
・摂取しやすい食事形態、内容への変更
・入浴、清拭、洗髪、足浴、手浴の実施
・温罨法
・指圧、マッサージ
・傾聴
・疼痛コントロール
・抗不安薬、睡眠導入剤の使用検討
・活動状況に合わせたステロイドの使用検討

教育計画

・スケールを用いて倦怠感の程度が伝えられるように指導する
・患者さんに症状のパターンを把握してもらい、倦怠感の程度に合わせた活動ができるように指導する
・患者さん自身が安楽な体位を把握し、休息がとれるように指導する
・家族や介護者に対し、体位調整及びマッサージの方法を指導する

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さらに倦怠感の緩和ケアに関する記事はこちら
・倦怠感への対応|症状別がんの緩和ケア

ガイドライン・マニュアル

 終末期看護(ターミナルケア)に関連するガイドライン・マニュアルは、厚生労働省をはじめ各医学会でも作成されています。日本緩和医療学会のHPには、「終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン(2013年版)」や「終末期がん患者の泌尿器症状対応マニュアル」などが掲載されています。

関連リンク
日本緩和医療学会

関連記事
救急・集中治療における終末期医療に関するガイドラインを公表
2025年に向けた医療政策の方向性

学会

 終末期看護(ターミナルケア)に関連する学会としては、前述した日本緩和医療学会が、緩和ケアを目指す看護職を対象にした各種セミナーを開催しています。また、日本ホスピス緩和ケア協会は、ホスピス・緩和ケア病棟や在宅緩和ケアに携わっている看護師を対象に「専門的緩和ケア看護師教育プログラム」を開催しています。

関連リンク
日本緩和医療学会
日本ホスピス緩和ケア協会

資格

 終末期看護(ターミナルケア)に関連する資格には、日本看護協会が認定する「緩和ケア認定看護師」「がん看護専門看護師」があります。また、日本在宅ホスピス協会では、在宅医療のキーパートンとなる「THP(トータルヘルスプランナー)」の資格認定制度を設けています。

関連リンク
日本看護協会
日本在宅ホスピス協会

緩和ケア認定看護師が執筆または監修した記事の一覧はこちら
緩和ケア認定看護師 執筆・監修記事一覧



<参考文献>
・全日本病院協会:終末期医療に関するガイドライン.(2020年1月24日閲覧)https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/161122_1.pdf
・厚生労働省:人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン.(2020年1月24日閲覧)https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10802000-Iseikyoku-Shidouka/0000197701.pdf
・日本緩和医療学会:ガイドライン.(2020年1月24日閲覧)https://www.jspm.ne.jp/guidelines/
・日本緩和医療学会:がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2010年版).(2020年3月6日閲覧)https://www.jspm.ne.jp/guidelines/pain/2010/chapter02/020202.php
・日本ホスピス緩和ケア協会:専門的緩和ケア看護師教育プログラム(SPACE-N).(2020年1月24日閲覧)https://www.hpcj.org/med/space_n.html
・田村恵子編:経過別成人看護学4 終末期看護:エンド・オブ・ライフ・ケア.メヂカルフレンド社、2017.


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