第18回 肥厚、爪白癬、変形した爪②〜症例でみるケアの実践
- 公開日: 2020/4/1
前回に引き続き、肥厚したつめのケアを一緒に考えてみましょう。
少しおさらいすると、爪が厚くなる原因としては、以下のようなことが挙げられます。
①爪が重なって厚くなっていくもの
原因は深爪や骨の変形などもありますが、長年の摩擦によって起こることもあります。
深爪をすると先端の皮膚や軟部組織が硬く盛り上がり爪が伸びるのを邪魔するからと言われています。あさりやはまぐりの貝殻のように層になって肥厚するものや、爪全体が一枚のように厚く、硬くなるものもあります。爪の色も混濁し、茶褐色や灰色に変色します。
長年放っておくと巻貝のように曲がっていくこともあります。
②爪の下の角質が増殖して厚くなるもの
爪の下の皮膚が厚く、硬くなり爪と皮膚の境目がわかりにくくなります。
③爪白癬によって厚くなるもの
これらの知識をもとに、患者さんの生活背景を加味して観察を行い、最低限のケアを考えてみましょう。
症例1
施設に入所中の脳障害のある患者さん
30代 男性
生活動作はほとんど自力ではできない。
車いすで散歩はできるが靴は履かない。
長年の爪白癬による肥厚あり。
ケア前
<観察ポイントとケア>
①爪表面の硬さ
硬さは保っているので表面は通常の爪切り
②肥厚
肥厚が原因の苦痛はないので切り端を整える程度にやすりがけを行う
③剥離
剥離は見られないので現状維持
ケア後
<ポイント>
①爪の厚みを変えなくてもよいケースはたくさんあります。患者さんの生活背景に合わせてケアを考えましょう。
②次回のケアまでの期間を考えて長さを調整してください(季節や刺激も考慮する)。
症例2
高血圧、心不全、認知症
80代 女性
認知症にて日常生活は自力では行えず60代息子家族と同居。
爪は、いつからこの状態か不明。
靴を履いて歩行可能、デイサービスに通所する。
ケア前(短く切った後)
<観察ポイントとケア>
①爪表面の硬さ
見えている面は爪が剥離した裏側で爪全体が線維化している。
②肥厚
爪が反転して肥厚しているので表面はもろい。
靴や靴下が引っかかり、摩擦により爪が剥がれる、傷ができるリスクがある。
③爪剥離
剥離もみられ、皮膚が露出している。現在、炎症はみられないが疼痛は認知症のため確認できない。
④日常生活に支障
今後の支障を考えると、変形した爪が靴を履いたときなどに他の指などを傷つけないように指の中に収まるようケアする。
身体の感覚の認識がしづらいいため、少しずつ他の爪と長さ、厚みをそろえる。
爪だけでなく指、足首、膝、股関節等全身の状態も変形も観察する。
<実際のケア>
①長さを4回(月一回、4カ月)かけて短くし、指に沿うように調整した
②爪の生え際の皮膚も観察し、汚れがあれば足浴、泡浴等で掃除する。
③爪の表面ががたがたになっているので目の細かいやすりで引っかかる部分だけ削って整える。
④削っても爪が崩れない硬さであれば時間をかけて徐々に薄くしていくが、初回ですべて削らないで身体が適応できるか観察する(違和感や歩行状態)
ケア後
<注意点>
※切った爪や周囲に炎症や出血がみられることがあります。その際には、出血部位の確認をしましょう。
靴や靴下の観察、他の疾患が原因と思われる場合は医師に報告、相談しましょう。
※変形はとても長い時間をかけて起こります。今すぐなんとかしなければならないケースは少ないので徐々に患者さんの状態に合わせて行いましょう。
肥厚した爪を削る場合、患者さんの身体への影響を考えるのはもちろんですが行う人は自分が削った爪の粉を吸い込まないように、削った粉を衣服や身体に付けて他の場所や他の患者さんに運ばないよう気をつけましょう。
私は対策としてシャボンラッピングや爪や器具をしめらせることで爪の粉が舞い散らないようにしています。受ける人も、行う人も支障ないケアが大切だと思います。