【連載】Nursing 最前線 ―看護の現場をリポート―

円滑な開院を実現した新病院移転プロジェクト 看護師たちが取り組んだ体制づくりは「人材教育」<岩手医科大学附属病院>【前編】

提供 ニプロ株式会社

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岩手医科大学附属病院は、岩手県唯一の大学病院として高度医療を中心に県内の医療ニーズに応えてきました。その歴史は120年余と古く、時代の求めにより体制の拡充を行ってきましたが、施設の老朽化は進行。2002年に新たな場所への総合移転計画を立ち上げ、17年を経た2019年9月21日に移転を実現させました。病床数1000を有する大規模病院の大移動の様子を2号にわたってご紹介します。


移転に向けた本格的な準備が2016年からスタート

 岩手医科大学附属病院の新病院は、2017年3月末~2019年6月という2年3カ月の期間を費やして建設されました。場所はかつての病院があった盛岡市に隣接する矢巾町。旧病院からは11km、車でおよそ30分の距離です。旧病院は「附属内丸メディカルセンター」として、引き続き地域の医療を支えています。

 新病院の建設計画と並行し、移転に向けてのプロジェクト実行委員会が本格的に始動したのは2016年10月。2018年に看護部長となり看護部を率いる役割を担った佐藤悦子さんは身の引き締まる思いがしたといい、「それまでも副看護部長として携わってきた移転プロジェクトがいよいよ本格化し、あらためて責任の重さを自覚してスイッチが入りました」と話します。
 
 看護部としては、すでに設置されていた移転構想委員会により、新病院での体制づくりと移転計画の立案をスタートさせました。

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佐藤悦子看護部長

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移転プロジェクトが進められている時期の病院建設風景。北西方向にみえるのは岩手山

移転準備と並行して行った新体制づくりに向けての人材教育

 副看護部長の千葉香さん、同出口育美さん、同安保弘子さんらの協力を得て、佐藤さんがまず着手したのは「人材教育」でした。

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写真左から)高橋弘江岩手県高度救命救急センター師長、安保弘子副看護部長、千葉香副看護部長、出口育美副看護部長

 新病院では、部署の広さや配置の見直しがなされており、それに伴い患者さんの収容や導線も変化しています。ICU・HCU・SCUなどの集中治療部門、手術室、NICUを含む周産期部門は広くなり、隣接した診療科との間は治療に応じて患者(患児)さんがスムーズに行き来できる構造になっていました。「そのため、看護職員には今まで以上に診療科同士の連携が求められ、相手の看護も理解しておかなければなりません。また一方で、規模の拡大によって人員の補充が予定される病棟もありました。人材の育成は急務でした」(千葉さん)。

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新病院になり広く機能的になったICU・PICU病棟

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新病院にはドクターヘリ基地ヘリポート(2012年3月落成)も。救急病棟で働く三上奈津子さんは要請時にはフライトナースとして出動する

 看護部では、各病棟の看護師長と話し合いを重ね、相互連携のための教育を行うとともに、要件に合った人員構成にするため人事異動も実施。高橋弘江さんが師長を務める岩手県高度救命救急センターでは、新たに30名の看護職員が加わることになったといいます。
 
 高橋さんは「新スタッフへの教育を担う従来スタッフに対し、指導者としての教育を行いました。さらに、新スタッフには救急で重要となる視点や安全な看護を理解してもらうための情報提供を行いました」と話し、教育によって移転後すぐに診療・治療できる体制を整えることが重要だとしました。

 「移転に際しては、新たなスタッフを受け入れるだけでなく、異動も必要でした。病棟師長はとても大変だったと思います」と出口さん。師長は自分の病棟の人員構成を考え、病棟スタッフ一人ひとりと面談を行いました。そして、本人の希望も踏まえて異動するスタッフを選択、他病棟や附属内丸メディカルセンターへの異動に納得してもらったうえで、要件に合った病棟づくりをしていきました。

 「スタッフ個々のモチベーションを保ったまま、新たな体制をつくらなければなりません。そこが一番苦労した点でしょう」(出口さん)

移転がリセットの機会に 変化は成長のチャンスになる

 新病院の建設にあたっては、設計段階から、特に医療ガスや水回りなど療養環境にかかわる部分について、看護部の意見が重視されてきました。新たな施設は、患者さんにとっての快適・安全とスタッフの働きやすさを担保したものとなっています。

 「施設の面からも、働く職員にとっても、新病院の建設・移転はリセットの機会に。新しい環境・職場・土地を受け入れたとき、私たちも成長できたような気がします。大切なことは、変化を嫌がらずチャンスだと捉えること。今にこだわりすぎると成長できなくなってしまうように思います」(佐藤さん)
 
 このように、同院の看護職員にとって、移転プロジェクトは医療・看護の提供体制を整えるための人材教育から始まりました。
 
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新病院でも変わらずにベストな看護を提供できる裏には人材教育がある(写真は緩和ケア病棟)

DATA

岩手医科大学附属病院
岩手県紫波郡矢巾町医大通2-1-1
https://www.hosp.iwate-med.ac.jp/yahaba/
開設1936年病床数 ●1000床
職員数2200名(うち看護職員1203名)※2019年現在
看護配置一般病棟7:1
特定機能病院/岩手県高度救命救急センター/基幹災害拠点病院/がん診療連携拠点病院
/肝疾患診療連携拠点病院/総合周産期母子医療センター
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ニプロ株式会社発行:看護情報誌「ティアラ」2020年2月(no.126)より転載

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