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最新の血糖測定方法で変わる糖尿病の血糖コントロール

2020年4月1日の診療報酬改訂により、これまでの血糖自己測定の回数に応じた保険項目に加えて、「FreeStyleリブレ」を主とした新たな保険項目が設定されました。
2020年3月31日に開催された、アボットジャパン合同会社主催のWEBセミナーでは、東京都慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科主任教授 西村理明先生により、血糖自己測定器「FreeStyleリブレ」の保険適応と今後の糖尿病治療について解説がなされました。

減少しない糖尿病の患者数

 平成28年の国民健康・栄養調査1)で、平成9年から平成28年にかけて、糖尿病が強く疑われる人は増え続けています。

 糖尿病の可能性を否定できない人は、平成19年をピークに減りつつありますが、強く疑われる人と合計すると患者数は横ばいになっています。

 治療状況については、平成9年には約55%が未治療でしたが、平成28年には80%近くが治療を受けるようになっています。同時に、未だに5人に1人が治療を受けていないということになります。

人生や命にかかわる糖尿病合併症

 糖尿病は「真綿で首を締める病気」と言われ、初期症状はないまま進行し、糖尿病細小血管や動脈硬化症などのさまざまな合併症を引き起こします。

■糖尿病細小血管合併症(三大合併症)

・網膜症
視覚障害原因疾患の12.8%を占め、年間3,000人以上の失明を引き起こしています2)3)。失明原因のトップ3です。
・腎症
透析導入原因疾患の42.3%が糖尿病による腎症です。年間16000人以上が新規透析導入しています。患者1人あたりの年間の透析費用が500~600万円かかり、日本の医療費を切迫する疾患の1つです4)
・神経障害
化膿や壊疽のリスクが高く、非外傷性下肢切断の原因の第1位です。年間3000人以上の方が足を切断しています5)

■動脈硬化性疾患

・脳梗塞:HbA1cが6.5以上の人では、脳梗塞の発症が約10倍以上になります6)
・心筋梗塞:初発リスクが約6倍、再発リスクが約2.4倍になります7)
・末梢動脈疾患:壊疽や潰瘍のリスクが高くなります。

■糖尿病との関連が指摘されている疾患

・認知症:認知症リスクが1.65倍になります8)
・がん:肝臓がんや大腸がんのリスクを上昇させ、膵臓がんでは1.85倍になります9)
・感染症:さまざまな感染症に対するリスクが上昇します。流行中の新型コロナウイルスに対してもハイリスクになります。また、歯周病リスクも2.6倍になります10)
・うつ病:糖尿病が2~3倍かかりやすくなります11)
・骨粗鬆症:骨が脆くなるため、大腿骨近位部骨折のリスクが上昇します12)

■社会への影響

 糖尿病で通院中の男性がフルタイムの就業者として働く割合は、通院中でない人と比較して10%弱低くなっています13)。また、医療費への影響は、国民医療費の約15%(約3.7兆円)を糖尿病関連の医療費が占め、死亡数割合では約3割を占めています14)

 このように糖尿病の影響は極めて大きいと言えます。

血糖値と合併症のリスクを防ぐには

 HbA1cを7%未満に抑えておくと、かなりの確率で心筋梗塞の発症や細小血管症の発症を抑えられます。そのため、日本糖尿病学会では、合併症予防のためにHbA1c7.0%未満を目指して治療が行われています。

 しかし、生活習慣の改善や経口血糖降下薬療法、インスリン療法、GLP-1受容体作動薬療法など、状態に合った治療法の選択や併用療法が必要なため、糖尿病治療は非常に複雑です。患者数も多く、医師は対応に苦慮しているのが現状です。

 また、糖尿病治療の指標となるHbA1cは平均血糖値であり値が良くても、血糖値の推移まではわかりません。1日4回の計測値で問題なくても、その間に高血糖や低血糖が起きている可能性はあります。それが、数年後の合併症の発症にかかわるのではないかと示唆されています。そのため、血糖値を連続的に測定することが必要だといわれています。

3つの血糖自己測定方法

 血糖値の自己測定方法は3つあります。

・SMBG(血糖自己測定)
指先に針を刺し、チップにつけて測定します。痛みが強い測定方法ですので、測定回数が増えるほど患者さんの負担が増します。

・CGM(持続グルコースモニタリング)
腹部などにセンサーとデータ送受信機を装着し、データを記録する方法で、3~7日間連続測定ができます。2010年に保険収載されました。

・FGM(フラッシュグルコースモニタリング)
センサーを腕に付けるだけで、連続的に血糖が測定でき、好きなときにリーダーを使って血糖がチェックできます。
2017年に保険収載され、今回、診療報酬改定により、このFGMの保険適用が新設され、多くの人が利用できるようになりました。

血糖自己測定方法 保険適用対象

血糖自己測定方法 コード 適用対象
SMBG C150 1ーC150 4 インスリン・ヒトソメトマジン製剤、GLP-1RAの自己注射実施患者
SMBG C150 5ーC150 6 インスリン・ヒトソメトマジン製剤、GLP-1RAの自己注射実施患者、但し1型糖尿病の患者または膵全摘患者に限る
FGM(新設) C150 7 強化インスリン療法を施行中のものまたは、強化インスリン療法を施行後に混合型インスリン製剤を1日2回以上使用しているもの
CGM C152 2 ポンプと連動させずCGMを使用する場合 ・急性または劇症1型糖尿病の患者
・インスリン療法中の2型糖尿病患者で不安定かつ重症低血糖発作既往がありコントロールする意志のあるもの。但し因性インスリン分泌の欠乏(空腹時血清Cペプチドが0.5ng/mL未満を示すものに限る)を認めるものに限る

FGM(FreeStyleリブレ)の特徴

 今までの1日数回の血糖測定(SMBG)では、その間の血糖値の推移は予測するしかありませんでした。しかし、FreeStyleリブレが使えるようになったことで、昼夜を通して血糖測定ができ、より効率的に高血糖、低血糖を避けながらHbA1cの改善が可能になりました。

 また、FreeStyleリブレのセンサーの穿刺はほとんど痛みがなく、98.6%の患者さんが痛みを許容できると回答しました。リーダーをセンサーに近づけ、ボタンを押すだけで、簡単に血糖値の推移と現在の血糖値がチェックできます。

FGM(FreeStyleリブレ)による血糖トレンド把握のメリット

 血糖のトレンドを把握することでどのようなメリットがあるのかを紹介します。

■インスリン治療の効果を確認できる

 いつでもどこでもチェックできるため、食後の血糖値変動が簡単に確認でき、食事やインスリンの調整に役立ちます。

■食事と血糖の関係がわかる

 その人によって、食物の吸収割合は違ってくるため、どんな食事のときに血糖値が上がりやすいかを知ることができます。

■睡眠中の血糖の変化がわかる

 夜寝ている間も血糖値の変化を記録してくれます。朝起きてチェックするだけで夜間の低血糖の有無がわかるため、インスリン調整に役立ちますます。

■血糖コントロールの質がわかる

 HbA1cの値が良好でも、血糖値の変動が激しく低血糖と高血糖を繰り返していることもあります。FreeStyleリブレであれば、血糖コントロールの質が一目でわかります。

FGM(FreeStyleリブレ)の臨床試験成績
臨床試験により、下記5点の効果が示されました。
①1型糖尿病において、血糖コントロールの質を改善
②2型糖尿病においては、低血糖を増加させずにHbA1cを改善し、患者満足度も向上
③2型糖尿病患者のHbA1cが低下
④低血糖の時間が有意に短縮、維持された
⑤FreeStyleリブレ測定回数とHbA1c低下および低血糖リスク軽減に関係性あり

FGM(FreeStyleリブレ)レの保険適応が意味すること

 今まではSMBGの補助として使われていたFreeStyleリブレですが、これからは条件をクリアすれば2型糖尿病の患者さんも、FreeStyleリブレを中心とした糖尿病の自己管理が可能になります。HbA1cも改善し、低血糖や高血糖もなくすことができ、生活の質を上げることに繋がります。これは、新しい糖尿病管理の時代に突入することを意味します。

医療従事者側にとっては、血糖変動が「見える化」でき、グラフ化によって患者さんの糖尿病管理状況を簡単に把握できます。治療時間の短縮に繋がり、よりきめ細やかな診断・治療・指導を行えます。
また、患者さんとっても、機械を付けるだけで自分の状態を把握でき、医師とも情報共有しやすいため、改善策を模索しやすくなります。

糖尿病治療の今後の方向性
①血糖モニタリングの環境が向上
②より継続した血糖モニタリングを中心とした糖尿病治療管理が可能に
③HbA1c以外の糖尿病管理目標となるAGP(Ambulatory Glucose Profile)の普及
④患者さんと一緒に糖尿病治療・管理ができる
⑤患者さんの状態が改善され、よりよいコントロールができる
⑥日本全国に普及すれば、医療の質が向上、効率化できる。
以上のような方向性により、5年10年後には、糖尿病合併症の減少が期待できます。

引用・参考文献

1)厚生労働省平成28年国民健康・栄養調査結果の概要(2020年4月15日閲覧)https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/kekkagaiyou_7.pdf
2)厚生労働者科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究」平成28年度報告書
3)厚生労働省難治性疾患克服研究事業「網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する研究」平成17年度総括・分担研究報告書
4)わが国の慢性透析療法の現状「2018年末の慢性透析患者に関する集計
5)糖尿病対策推進会議統計
6)秦淳、清原裕「糖代謝異常・脂質異常症と脳卒中の疫学:久山町研究」
7)SM Haffner et al. N EnglJ Med, 339:229-234,1998
8)小原知之、清原裕、神庭重信「地域高齢住民における認知症の疫学:久山町研究」
9)日本糖尿病学会・日本癌学会糖尿病と癌に関する委員会:糖尿病と癌に関する委員会報告. 2013.糖尿病;56(6): 374-90.
10) Nelson RG, Diabetes Care,1990 Aug;13(8):836-40
11) Anderson RJ, et al:Diabetes Care 24.2001; 6:1069-1078.
12)日本骨粗鬆症学会:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年
13)内閣府「60代の労働供給はどのように決まるのか?」(2018)
14)日本糖尿病学会第3次対糖尿病5カ年計画

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