【連載】看護師のための経腸栄養講座

第4回 半固形化栄養剤(semi-solid)

監修 日本コヴィディエン株式会社

シングルユース医療機器の製造及び販売、並びにこれらに関連する一切の事業

【目次】


ポイント

1.液状栄養剤に対して、形状を変化させた栄養剤をひっくるめて、「semi-solid(半固形化)」と称する。
2.半固形化栄養剤の効果は、
 (1)胃食道逆流の予防と誤嚥性肺炎の回避、
 (2)胃瘻の漏れの防止、
 (3)便通の改善、下痢の予防、
 (4)短時間注入の効果として、体位を長時間一定にする必要がなく、褥瘡の予防、改善、
 (5)時間をリハビリやその他に有意義に使用できる、
などがあげられる。
3.半固形化栄養剤には、
 (1)液体栄養剤にゲル化剤・増粘剤を添加して調整した栄養剤、
 (2)市販の半固形化栄養剤、
 (3)粘度を調整したミキサー食、
がある。現在、10種類以上の製品が市販されており、いずれも食品扱いである。
4.半固形化栄養剤は非ニュートン流体に属し、その粘度の単位はmPa・s(ミリパスカル秒)=cP(センチポワズ)を用い表記する。


▼経腸栄養について まとめて読むならコチラ
経腸栄養(経管栄養)とは|種類・手順・看護のポイント


寒天法の登場と用語の統一

 内視鏡的胃瘻造設術(PEG)にて造設された胃瘻からの経腸栄養療法でも、胃食道逆流や誤嚥がしばしば経験されます。このような合併症を予防する目的で、蟹江による寒天を用いて栄養剤を固形化する方法が登場し、在宅を中心に短期間で本邦全域にこの方法が広く行われるようになりました。寒天法の臨床効果が逆流防止にとどまらず、多岐にわたることが観察され、寒天以外による栄養剤のゲル化、半固形化、トロミ剤による栄養剤の粘度増強などが次々と試みられるようになりました。

 このような栄養剤の工夫は、固形化、半固形化、ゲル化、ゾル化、増粘化、粘度増強などと称され、用語の面においても統一がとれず、また実際の栄養剤の粘度や固さも多種多様で、混沌とした状態となっています。このような状況を改善し、形状を変化させた栄養剤を科学的に研究する目的で、2007年に「栄養材形状機能研究会」が発足しました。研究会ではまず用語の面からの検討がなされ、通常の液状栄養剤に対して、寒天法をも含めた、形状を変化させた栄養剤をひっくるめて、「semi-solid(半固形化)」と称すると決定されました。

半固形化栄養剤の効果

 通常の液状栄養剤の注入は、胃瘻から時間をかけてゆっくり行われるため、食物の容積による胃の弛緩が起こりません。そのため正常な胃の蠕動運動が起こらず、消化吸収能にも影響することが予想されます。半固形化栄養剤では、原則的に短時間で胃内に注入されるので、通常の食物と同様に、その容積により胃の弛緩が起こり、生理的な蠕動運動が惹起され、栄養剤が逆流せずに十二指腸に順調に流れると考えられています。


 半固形化栄養剤の利点は、上述のように栄養剤の胃食道逆流を予防し、誤嚥性肺炎を回避することにありますが、そのほかにも、1)胃瘻の漏れを防ぐ、2)少しずつ栄養剤が胃から排出されるのと、豊富な食物繊維により便通が改善し、下痢がおさまる、3)ボーラスの短時間注入のため(図1)、体位を長時間一定にする必要がなく、褥瘡の予防、改善によい、4)やはり短時間注入のため、余った時間をリハビリやその他に有意義に使用できる、5)液体栄養剤に比較して胃内の停滞時間が延長し、下痢やダンピング症候群などの症状が改善し、また食後の血糖上昇を緩慢にする、など多岐にわたる利点があげられます(図2)。

(図1)
半固形化栄養剤をシリンジを用いてポーラス投与をおこなっているところ、実際の写真
(図2)
半固形化栄養剤の効果

半固形化栄養剤の分類と種類

 胃瘻から投与される半固形化栄養剤は以下の3種類に分けられます。

(1) 市販の液体栄養剤にゲル化剤、あるいは増粘剤を添加して粘度や硬さを調節したもの
(2) 市販の半固形化栄養剤
(3) 粘度を調整したミキサー食

(1)ゲル化剤や増粘剤で調整する半固形化

 寒天による栄養剤のゲル化をとくに「固形化」と称してきました。蟹江は固形化栄養剤の定義を、単にゲル化するだけでなく、「重力に抗してその形態が保たれる」固さの栄養剤であり、「粘度を増強することなく固形化を行う」ことに重点をおいています。杏仁豆腐やプリン程度の硬度を目安にしており、寒天による固形化をもっともふさわしいものとしています。

 具体的な調理方法は、粉末寒天を200mlの水に充分溶かしてから約2分間煮沸させます。それを人肌に湯煎した栄養剤を400mlによくかき混ぜながら流し込み、約10本の50mlカテーテルチップ型シリンジに取り分けて冷まします。

 使用方法は、栄養剤入りのシリンジを直接PEGチューブにつないで、ボーラス投与を行い、3本続けて注入し、その後20分休む、を繰り返しながら投与します。寒天による固形化は栄養剤の種類を選ばないことがメリットでありますが、火を使った調理の手間がかかることが問題点です。

 市販のゲル化剤として、ペクチンが使用されています。イージーゲルやREF-P1などがあり、栄養剤中もしくは添加した遊離カルシウムとペクチンが反応してゲル化をおこします。イージーゲルは事前に栄養剤に混ぜてゲル化を促し、REF-P1は栄養剤を入れる前に胃に注入し、胃の中でゲル化を促進させます。

 増粘剤にはデンプン系と増粘多糖類系に2分類され、増粘多糖類はグアーガム系とキサンタンガム系に分かれます。デンプン系のものにもデンプン単独のものとグアーガムなどの増粘多糖類が混合されたものがあります。デンプン系にはムースアップ、トロメリン顆粒などがあり、グアーガム系にはトロミアップ、スルーソフトS、スカイスルーなど、キサンタンガム系にはソフティア、つるりんこ、トロメリンHなどがあります。増粘剤のなかで、リフラノン、ソフティア、トロメリン、つるりんこなどにより粘度増強した栄養剤を胃瘻から注入した報告がなされています。増粘剤による栄養剤はその効果については議論があるところですが、他の方法に比較し廉価です。

(液状栄養剤を半固形化するゲル化剤、増粘剤の一覧を表1として載せてあります。これは、PDN通信31号の栗山とよ子先生がまとめたものを改変してある表です。)

(表1)
半固形化に用いられるゲル化剤、増粘剤一覧

(2)市販の半固形化栄養剤

 半固形化栄養剤は1998年に発売以来、栄養剤メーカー各社より様々な粘度や物性、栄養的特徴をもつ製品が開発され、現時点では10種類以上の製品が市販されています。いずれも食品扱いで、薬品扱いのものはありません。すでにsemi-solidの状態でチアバッグにパックされ、そのまま連結管で胃瘻カテーテルに結合して注入可能な、レディーメイドの製品化された栄養剤がほとんどです。これらは手絞りで注入するか、加圧バッグ式ポンプや専用の注入機で一定の圧力をかけて注入します。

 PGソフトEJは粘度20,000mPa・s、メディエフプッシュケアは2,000mPa・s、ハイネ・ゼリーは6,000mPa・sと粘度も製品ごとに違い、その範囲は1,000~20,000 mPa・sと大きな幅があります。

 (現在市販されている半固形化栄養剤の一覧を表2として載せてあります。これも、PDN通信31号の栗山とよ子先生がまとめたものを改変してある表です。)

(表2)
市販の主な半固形化製品

(3)粘度を調整したミキサー食

 ミキサー食もPEGチューブから注入した場合は、一種の半固形化栄養剤といえます。合田らは経口摂取できなかった残った食事をあわせて、ミキサーにかけ、そのあとテルミールソフトと同じくらいになるように、トロミ剤または白湯で粘度調整をおこない、胃瘻チューブから注入して、良い成果を得ています。一方で、毎回の適度な粘度調節に関する技術的問題や胃瘻チューブを詰まらせてしまうなどの問題も指摘されています。

 しかし、胃食道逆流による誤嚥性肺炎や瘻孔部のスキントラブルが見られず、注入後に患者に満腹感があり、本来の胃の貯留、排出能がもどり、ダンピングや下痢が改善し、血糖や消化管ホルモンの変動も正常化に近づいたと報告されています。工業製品に頼ることなく、本来の人体の生理機能を引き出すという点で、きわめて合理的でかつ、今後の栄養療法の流れとなるEco-Nutritionの一つの試みとして高く評価されます。

半固形化栄養剤の粘度と粘度計

 嚥下調整食をも含めた形状を変化させた栄養剤では、粘度、硬さ、凝集性、付着性などの指標が用いられています。嚥下を対象とした栄養剤では離水も問題となります。しかし、胃瘻栄養用の半固形化栄養剤では、粘度がもっとも重要です。

 半固形化栄養剤の粘度の単位はmPa・s(ミリパスカル秒)=cP(センチポワズ)を用い表記します。25℃で測定した市販の液体経腸栄養剤は1~10mPa・s、ネクター状飲料は200mPa・s、中濃ソースは1,000mPa・s、マヨネーズは45,000mPa・sほどです。合田は粘度調整したバリウムの胃内注入の検討から、粘度が高いほど胃内貯留率が高いのにもかかわらず胃食道逆流は減少したと報告しています8)

 また、胃瘻による経腸栄養施行中に誤嚥性肺炎の既往がある15名の検討で、粘度上限の50,000mPa・sでは全例で、20,000mPa・sでは14例で胃食道逆流は認められなかったとされています。しかし、粘度が高くなるにつれて高い注入圧が必要となるため、胃内圧に影響しない300mmHgの注入圧で注入が可能な20,000mPa・sを栄養剤の指摘粘度であろうとしています。一方、稲田らはペクチン液を利用した粘度調整食品の検討で、900mPa・sでも逆流の予防効果があったと報告しています。現在、胃食道逆流を起こしにくい栄養剤の粘度に関してはコンセンサスが得られていません。

 半固形化栄養剤は通常、B型粘度計で測定されています(図3)。半固形化栄養剤は、水のようなニュートン流体といわれる「ずり応力」と「ずり速度」が比例する液体と異なり、非ニュートン流体という物性に属します。非ニュートン流体は「ずり応力」と「ずり速度」が比例しません。そのため、B型粘度計では、ローターの種類や、回転数、回転時間、試料の事前のかき混ぜ程度により「ずり速度」が変化し、安定した値が得られにくいと考えられています。

 一方、E型粘度計では、非ニュートン流体にみられる「ずり速度」の勾配がなくなる測定法をとっているため、比較的安定した数値が得られます(図3)。そのため、栄養材形状機能研究会は半固形化栄養剤の測定にはE型粘度計を推奨しています。

(図3)
栄養剤の粘度を測定する粘度計

半固形化栄養剤の現状と実際の使用方法

 栄養材形状機能研究会の調査ワーキンググループとPDNの共同で、「半固形化」の全国アンケート(2009年)が行われました。それによると、「半固形化」の投与理由は、胃食道逆流防止(27.3%)、下痢対策(19.3%)、嘔吐対策(18.2%)、投与時間の短縮(15.0%)、栄養剤のリーク防止(10.6%)でした(図4)。

(図4)
半固形化栄養剤の使用理由

 「どのような半固形化栄養剤を使用しているか」との問いには、あらかじめ半固形化してある製品を使用(40.9%)が最も多く、次いで、粉のタイプの増粘剤で調整(24.5%)で、寒天法は15.3%と比較的少なくなっていました。半固形化した既成品が使われることが多くなってきていることがうかがえます(図5)。

(図5)
現在使用されている半固形化栄養剤の種類

 臨床症状の効果に関しては、「下痢をしなくなった」(26.4%)、「肺炎を繰り返さなくなった」(21.6%)、「瘻孔からの漏れがなくなった」(17.3%)、「熱が出なくなった」(16.4%)と、予想どおりの結果でした(図6)。介護者のメリットとしては「投与時間が短縮して、他のことに時間がさけるようになった」(47.2%)、「便の扱いが楽になった」(21.6%)であり、やはり半時間注入のメリットが出ているようです。

(図6)
半固形化栄養剤の臨床的効果

 半固形化の投与にあたっての問題点は「コストがかかる」(31.3%)、「調整に手間がかかる」(23.9%)、「投与に手間がかかる」(22.4%)で、既成品を使うとコストがかかるという点が問題視されています。アンケートの自由意見の中でも、「半固形は介護者の負担を軽減し、便利であるが、高価なため購入しづらい」、「コスト問題で半固形化食品を採用していない」など、コスト面により使用しづらいという意見が多く見られました。今後半固形化既成品がエンシュアやラコールと同様に、薬化収載、保健適応になることを望む声がいくつかみられ、やはり、薬品扱いの「半固形化栄養剤」が期待されるところになりそうです。

 注入時間に関しては、半固形化栄養剤は短時間注入が基本です。全国調査によると、病院・施設においては、平均投与時間は17分で、最多回答は10分となっています。また1回投与量の平均は330mlで、最多回答は300mlでした。

 水分補給に関しては、多くの場合(80%)は水で補給され、形状を変化させたゲル化水を投与している頻度は高くありません。水分補給の半数は栄養剤投与直後、1/4は投与と投与の間、残りの1/4は栄養剤投与前でした。栄養剤投与前に水分を与える場合は30分前に与えていることが多いという結果でした。水分補給に、通常の水を使用した場合、逆流を起こす危険性が増すと考えられます。そのため、水分補給をしなくても済むように、低濃度カロリーの半固形化栄養剤が市販されています。

参考資料

1)合田文則:胃瘻からの半固形短時間摂取法ガイドブック、医歯薬出版、東京、2006
2)丸山道生編:経腸栄養バイブル、医事新報社、東京、2007
3)PEGドクターズネットワーク・ホームページ
4)高田浩次:胃瘻患者における半固形化栄養剤の有効性について、Journal of Clinical Rehabilitation 15: 1164-1168, 2006
5)金子哲也:胃瘻患者の長期管理における、半固形化経腸栄養剤投与の有用性、群馬医学 80: 160-163
6)田部井功:粘度調整ゲル化剤を用いた経腸栄養剤投与法の胃食道逆流に対する予防効果と臨床経験、日本消化器外科学会雑誌 36: 71-77, 2003
7)Kanie J, et al: Prevention of gastro-esophageal reflux by an application of half-solid nutrients in patients with percutaneous endoscopic gastrostomy feeding. Journal of the American Geriatrics Society 52: 466-467, 2004

ページトップへ