【連載】看護師のための経腸栄養講座

第5回 内視鏡的胃瘻造設術:PEG

監修 日本コヴィディエン株式会社

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【目次】


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経腸栄養(経管栄養)とは|種類・手順・看護のポイント


ポイント

1.摂食嚥下障害を呈する高齢者が増加の一途をたどっており、PEGの症例は飛躍的に増加している。
2.PEG造設の方法には、Pull法、Push法、Introducer法の3種類がある。最近、Introducer変法のセルジンガー法、ダイレクト法が開発された。
3.胃瘻カテーテルには胃内部分がバルン型、バンパー型、体外部分がボタン型、チューブ型がある。


はじめに

 PEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy):内視鏡的胃瘻造設術は、1980年にGaudererとPonskyにより開発された、内視鏡下で簡便に胃瘻を造設する方法です。

 近年、本邦でも寝たきり老人や脳梗塞による嚥下障害患者に対しての消化管アクセス法として、広く行われるようになりました。PEGの手技が比較的簡便であることと、超高齢化社会を迎え、摂食嚥下障害を呈する高齢者が増加の一途をたどっていること、さらにまた最近の栄養療法に対しての認識の向上なども手伝って、PEGの症例は飛躍的に増加しています。

 NPO法人PEGドクターズネットワーク(PDN)はセミナーやその知識の普及などの活動を通じてPEGに関する社会的な取り組みを行っている組織です。このPDNの登録からすると、PEGを実施している医療機関は2010年6月時点で、全国に1216施設存在しています。PEG患者の数はしっかりとした統計はありませんが、2008年の時点で約32万人前後とPDNは推定しています。

PEGの適応と問題点、そして予後

 PEGの適応症を表1に示します1)。必要な栄養を自発的に経口摂取できず、4週間以上の生命予後が見込まれる成人および小児が一般的な対象となります。長期間経鼻胃管が留置されている患者の多くはPEGの適応となります。

 またPEGで作製された胃瘻は決して恒久的なものではなく、カテーテル抜去により瘻孔は速やかに塞がるので、一時的な経腸栄養のアクセスルートとしても考慮されるべきです。栄養経路以外の適応とて、外科領域では幽門部の癌による閉塞の症例に消化管の減圧ドレナージを目的としたPEGが行われることもしばしばです。

(表1)
PEGの一般的適応

 PEGの普及に伴い、単なる延命処置目的のPEGに対しての問題が指摘されています。意識状態がよいにも関わらず嚥下障害のために経口摂取ができない例、減圧ドレナージ、頭頸部・食道癌では有用性が認められていますが、意識レベルが低下した症例やいわゆる植物状態の症例、重度の認知症に対するPEGは疑問視されています。医学領域だけでなく倫理的、社会的な観点からの取り組みが必要で、簡単には結論づけられない問題です。実臨床的には現実的な治療ゴールを設定した上で適応の是非を多角的に決定する必要があります。

 PEGの長期予後に関して、1000例近い造設症例を扱った2010年のPDNの全国調査によると、生存率は、30日以上;95%、60日以上;88%、半年以上;75%、1年以上;66%でした。生存日数でみると、約半数が753日以上、約1/4が1647日(約4年半)以上生存していました。

 女性は男性より予後が良く、造設時に肺炎の既往歴のないもの、虚血性心疾患の既往歴の無いものは、既往のあるものと比較して有意に予後が良かいという結果になっています。また、造設時、明らかに栄養不良と思われる患者は予後が不良でありました。基礎疾患が脳血管疾患の場合、それ以外の基礎疾患(神経疾患、認知症など)と比較すると明らかに予後が悪いという結果になっています。

造設方法とその特徴

 造設の方法には、Pull法、Push法、Introducer法の3種類があります2)。最近Introducer法の変法であるセルジンガー法、ダイレクト法が開発されました(表2)。

(表2)
PEGの方法とその特徴

Pull法

 内視鏡下で適切に穿刺針を腹壁から胃内へ穿刺し、ガイドワイヤーを挿入します(図1)。そのガイドワイヤーを内視鏡のスネアで把持し、内視鏡とともに食道、咽頭口腔内を経て、口腔外へと引き出します。

 このガイドワイヤーに造設用の胃瘻カテーテルを接続し、腹壁側からガイドワイヤーを引っ張って、カテーテルを口腔内、食道、胃内へと引き込みます。後は胃内の内部ストッパー(バンパー)と腹壁側の外部ストッパーで腹壁と胃壁を接触させ、固定する。再度、内視鏡を入れ、胃内のバンパーの状態など観察します3)

 現在、Pull法がPEGのもっとも一般的な方法となっています。この方法の利点は、細い穿刺針で胃の穿刺がうまく行けば、あとはほぼ問題が起こらず、手技が容易な点です。内視鏡の出し入れが必要で、煩雑なこと、口腔咽頭を胃瘻カテーテルが通過することにより、口腔咽頭の細菌が胃瘻部に付着し、感染を引き起こす可能性があること、また咽頭、食道に胃瘻カテーテルの通過可能な太さが確保される必要があることなどの問題点もあります。

Push法

 Pull法とカテーテルとガイドワイヤーの接続がことなるだけで、カテーテルが口腔咽頭を通過して留置される点で、Pull法と同じ利点、欠点を有しています。

(図1)
Push法説明図

Introducer法

 内視鏡を挿入し、まず「胃壁腹壁固定具」を用いて、穿刺部近傍に胃壁と腹壁を2箇所で固定します(図2)。太い穿刺針で、腹壁から胃を穿刺し、内筒をぬいて、バルン型の胃瘻カテーテルを挿入、バルンを膨らませて固定します。

 この方法の利点は、内視鏡挿入が1回ですみ、胃瘻カテーテルが口腔咽頭を通過しない点にあります4)。しかし、胃壁腹壁固定が必須で、鋭く太い穿刺針を一気に刺すなど、手技が複雑です。また、カテーテルがPull法に比較して、細いという欠点があります。

 最近、このIntroducer変法であるセルジンガー法、ダイレクト法が行われるようになりました。穿刺針はPull法と同様の細いもので行い、その孔を拡張器で拡張して、ボタン型の胃瘻カテーテルを直接、孔に挿入するという方法です。拡張時に腹壁、胃壁に圧力がかかるため、胃壁腹壁固定はより強固に行う必要がります。この方法により、Introducer法の穿刺針が太い点、カテーテルが細い点の改善がなされました。

(図2)
Introducer原法

Introducer変法

胃瘻造設後の管理

 当日は体外ストッパーを皮膚から約5~10mmの位置に固定し、皮膚を直接圧迫しないようにし、厚めのガーゼを間に挟みます。翌日はガーゼを取り除き、消毒もしくは洗浄し、ガーゼを入れます。

 術後1週間までは、1)毎日の瘻孔の観察し、2)瘻孔周囲の消毒、洗浄(1日1回、1週間)、3)カテーテルの回転、皮膚とチューブストッパーに多少ゆるみをもたせる、4)抗生剤投与(1-3日くらい)、5)栄養剤の注入開始(術後1-3日位から)、などの管理をおこないます。

 術後1週間以降のガーゼ保護は不要で、浸出液や液漏れがないことを確認します。周囲皮膚を清潔に保ち、石鹸と微温湯でスキンケアを行ないます。シャワーは1週間後を、入浴は2,3週間後を目安に開始します。

栄養剤の投与方法

 PEG後1-3日目位からはじめは少ない量から徐々に多くしていきます。消化管を長期間使用していない症例は、ポンプによる持続投与、初期段階の糖液の使用などを考慮するようにします。

 維持期の栄養剤のカロリーは25~30kcal/kgとし、定期的に、体重、アルブミンなどの栄養評価を行い、維持期の必要エネルギー量、水分量を調節するようにします。

胃瘻カテーテルの種類とその管理と交換

 PEGカテーテルの基本的な構造は、カテーテル本体に付随して、胃の中に位置する内部ストッパー(内部バンパー)と対外に位置する外部ストッパー(外部バンパー)で構成されています。内部ストッパーが、蒸留水を入れる風船のものをバルン型といい、それ以外の形状のものをバンパー型といいます(表3)。

 外部ストッパーの種類により、PEGカテーテルは2種類に分類されます。カテーテルが短く、ボタン形式になっているものを、ボタン型、カテーテルが長いチューブのものをチューブ型と称します(表4)。

 バルン型、バンパー型にそれぞれボタン型、チューブ型があるので、PEGカテーテルは基本的に2×2=4種類に分類されます(図3)5)

(表3)
バンパー型とバルン型の特徴

(表4)
チューブ型とボタン型の特徴

(図4)
PEGカテーテルの特徴

バンパー型

 バンパー型は抜けにくいため、自己抜去(事故抜去)の可能性がすくないです(表3)。しかし、抜けにくいため、交換が難しく、技術を要します。交換は4ヶ月から保険適応となります。

 多くのバンパー型のカテーテルでは無理抜き法(用手法)が可能ですが、製品として不可能なものもあるので注意を要します。また、無理抜き法(用手法)が可能なカテーテルでも、胃瘻カテーテルが斜めに刺入され、瘻孔が異常に長い場合、極端な肥満で瘻孔が長い場合、全身状態が悪く、瘻孔が脆弱化していると考えられる場合などは内視鏡を用いて、交換を行った方が安全である場合があります2)

バルン型

 バルンを膨らませるのには、注射用蒸留水を使用します。生理的食塩水や水道水は使用しません。バルンの中の水は自然に減っていくので、1~2週間に1回は正確な量の新しい蒸留水に入れ替える必要があります。バルンは耐久性に乏しく、1~2ヶ月に1回の交換が必用となります。保険請求ができるのは24時間以上使用すれば可能となっています。

ボタン型

 ボタン型は体外部にチューブがないため、自己抜去(事故抜去)の可能性は低いとされます(表4)。その反面、栄養剤投与時に接続チューブをカテーテルに付けたり、外したりが必要であり手間がかかります。

 またボタン型のカテーテルに接続チューブを付けるのは、やや細かい作業であるので、老老介護には不向きと考えられます5)。ボタン型カテーテルの選択は、1~2cm遊びのあるシャフト長のカテーテルを選択するようにします。

チューブ型

 体外にチューブが出ているため、患者の活動が活発であったり、患者の移動の際に、チューブが引っかかり、自己抜去(事故抜去)の危険性があります。自己抜去(事故抜去)の可能性が想定される患者の造設時には、胃壁腹壁固定具により胃壁腹壁固定を行い、安全性の確保を試みる必要があります。

 栄養剤注入用のチューブとの接続は容易であり、老老介護の環境には向いています。胃瘻カテーテルを清浄に保つために、チューブタイプの胃瘻チューブは栄養剤注入後、水でフラッシュの後、酢水(酢1:水9)を充填する方法が在宅を中心に広く行なわれています。

文献

1)上野文昭、鈴木裕、嶋尾仁;経皮内視鏡的胃瘻造設術ガイドライン、日本消化器内視鏡学会編、消化器内視鏡ガイドライン、p295-309、医学書院、東京、2001
2)鈴木裕:経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)の挿入手技と管理法、日本静脈経腸栄養学会編、コメディカルのための静脈経腸栄養手技マニュアル、p180-190, 南江堂、東京、2003
3)丸山道生:内視鏡的胃瘻造設術(PEG)と栄養管理、臨床栄養102 : 393-400, 2003
4)高橋美香子:造設手技、鈴木裕編、PDNセミナー胃瘻と栄養、p28-32,PEGドクターズネットワーク、東京、2004
5)小川滋彦:PEGの長期管理と在宅医療の基本、小川滋彦編、PEGパーフェクトガイド、p58-93, 学習研究社、東京、2006

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