【書籍紹介】酸塩基平衡の考え方 故きを・温ねて・Stewart

酸塩基平衡はムズカシイと思っている人へ

 酸塩基平衡とは、体内の酸と塩基のバランスを一定に保つためのしくみで、これらの調整は主に肺と腎臓で行われています。理解するには生理学や生化学の知識が必要なため、難しそうというイメージ人も多いのではないでしょうか。

 この本の著者は、救急や集中治療分野を専門とする医師です。酸塩基平衡をはじめ、人工呼吸、周術期輸液、痛みのしくみなどを主な研究のテーマとし、それらの分野の著書も多数あります。そんな著者が、医師だけでなくそのほかのメディカルスタッフへ向けて酸塩基平衡をわかりやすく説明したのが、この「酸塩基平衡の考えかた」です。

理解させることに重きを置いている本

 酸塩基平衡に関する知識は主に血液ガスのデータを読む際に使いますが、頻繁に使用する部署は限られています。そのため、いざ読もうとしてもなかなか読めなかったり読む方法を忘れてしまっていたりと、スムーズにいかないことでさらに敬遠してしまう、という悪循環に陥ってしまいます。しかし、成り立ちや理由を理解すれば、目の前の患者さんに「今なにが起こっているか」がすぐにわかるようになるはずです。

 本書は、書いてあることをただ暗記するのではなく、読み進めることで理解を深めていけるような内容になっており、理解をやさしくするための工夫が随所にちりばめられています。すべての章は会話形式で始まり、疑問点や要点を挙げたうえで、図や表を多用した説明が続きます。本の冒頭部分に全体の構成と内容の簡単な説明、章ごとのレベルについて書かれているので、自分の学びたい箇所や知りたいことに合わせて読み始める場所を選ぶことができます。

 酸塩基平衡に関することは全て網羅されているといっても過言ではなく、読み手が疑問に感じることの答えはきちんと用意されています。例えば、「アシデミアとアシドーシスの違いは?」「BE、AGってなに?」というような基礎はもちろん、計算式の成り立ちの歴史などのコアなものまでさまざまです。すぐに理解するということはムズカシイかもしれませんが、臨床で実践できるようなコツや裏ワザもあり、血液ガスを読むためのレベルは各段にアップするはずです。

従来の方法を次のステップへ生かす

 これまで血液ガスを読むためにはpH、pCO2、HCO3に焦点を当てた伝統的な方法である「Henderson-Hasselbalch」の式が多く用いられてきました。しかし近年、強イオン差を用いる「Stewertアプローチ」が少しずつ注目されつつあります。電解質異常が酸塩基平衡障害の原因になるということがわかると、これまでとは違った視点から血ガスを読み解けるようになります。知識が増えることは、自身の医療や看護の幅を広げることにもつながります。

「食わず嫌い」はもったいない

 血ガスについて解説している書籍は数多くありますが、これほどまでに初心者からベテランまでが満足できる本にはなかなか出会えないのではないでしょうか。内容の全てを理解することはムズカシイかもしれませんが、少なくとも苦手意識を減らす一助となるはずであり、一読の価値アリです。

書誌情報
書籍名:酸塩基平衡の考え方 故きを・温ねて・Stewart
著:丸山一男
発行:南江堂
定価:本体3200円+税
ページ数:261

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