【連載】看護師のための経腸栄養講座

第6回 経鼻ルートと経胃瘻的空腸瘻

監修 日本コヴィディエン株式会社

シングルユース医療機器の製造及び販売、並びにこれらに関連する一切の事業

ポイント

1.経鼻経管栄養には、栄養カテーテルの先端が、胃におかれる経鼻胃管ルート(幽門前ルート)と、十二指腸、小腸上部におかれる経鼻十二指腸・空腸ルート(幽門後ルート)の2種類がある。
2.経鼻ルートにはカテーテルの太さはできるだけ細いもの使用するのを原則とする。成人には8-12Frの使用が推奨される。
3.経鼻ルートのカテーテル挿入後は、レントゲン撮影を行い、カテーテル先端の確認を行う。
4.先に作成された胃瘻または胃瘻カテーテルを通して、新たな栄養カテーテルを幽門輪を通過させて、先端を空腸に留置することを、「経胃瘻的空腸瘻」と呼ぶ。その主な適応は、胃瘻栄養管理で経腸栄養剤の胃食道逆流が認められ、誤嚥性肺炎を繰り返す場合である。
5.経胃瘻的空腸瘻には、内視鏡を用いる方法、X線透視下で行う方法がある。


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経腸栄養(経管栄養)とは|種類・手順・看護のポイント


はじめに

 経腸栄養を行うためには、消化管アクセスルートが必要となります。このアクセスルートには経鼻、胃瘻(内視鏡的、手術的)、経胃瘻的空腸瘻、PTEG、手術的空腸瘻などがあげられます。今回は経鼻ルートと経胃瘻的空腸瘻に関してまとめます。

経鼻ルート

概要と適応

 栄養管理の選択において、消化管の機能が維持されている場合には、経腸栄養の適応です。経腸栄養の期間が4~6週の比較的短期間の場合は、経鼻からの栄養ルートが選択されます。経腸栄養がそれ以上の長期にわたる場合は、胃瘻や空腸瘻の適応となります。

 経鼻経管栄養の症例としては、消化器手術後や炎症性腸疾患、さらに意識障害、摂食・嚥下障害などで経口摂取が困難で、かつ栄養投与期間が短期間であると予想される場合です1)

 経鼻経管栄養には、栄養カテーテルの先端が、胃におかれる経鼻胃管ルート(幽門前ルート)と、十二指腸、小腸上部におかれる経鼻十二指腸・空腸ルート(幽門後ルート)の2種類があります(図1)2)

 幽門前ルートは、ベッドサイドで挿入することができ、簡便であること、胃の貯留能を利用し、いっぺんに大量の栄養剤を投与できること、生理的なルートであること、などの利点はありますが、一方、挿入したカテーテルの影響で、胃食道逆流や誤嚥性肺炎などをきたしやすいと考えられています。

 幽門後ルートは、胃の幽門輪を超えて栄養剤が注入されるため、栄養剤の逆流は起こしにくいと考えられています。しかし、いっぺんに栄養剤を投与すると浸透圧性の下痢がおこるため、少量持続投与が原則で、注入ポンプをつかう必要があります。

経鼻経管栄養テーテルの二つのアクセスルート

 経腸栄養管理に用いる経鼻胃管ルートの利点を挙げると以下のようになります1)(表1)。

(1)ベッドサイドで非侵襲的に容易かつ安全に挿入が可能であり、しかも、抜去すれば何ら障害を残さない。
(2)栄養剤が食物の貯留場所である胃に入り、生理的である。
(3)胃に栄養剤が入るので、一度に多量の栄養剤の注入が可能であり、注入ポンプの必要はない。
(4)胃酸が栄養剤の汚染物質を破壊するため、安全である。
 などが挙げられます。

 一方、欠点としては、
(1)胃食道逆流が起こり、誤嚥の危険性がある。
(2)チューブによる鼻翼や咽頭などの刺激により、潰瘍なの合併症があり、使用は短期間に限られる。
(3)胃瘻に比較してチューブが細いため、チューブが詰まる可能性が高い。
(4)事故および自己抜去の危険性が高い。
(5)摂食・嚥下リハビリテーションがしにくい、などが挙げられます3)

経鼻胃管ルートの利点と欠点

経鼻経管栄養用カテーテルの選択

経鼻経管栄養チューブ(市販されているもの)の表

経鼻経管栄養用カテーテルの選択の表

太さ

 カテーテルの太さはできるだけ細いもの使用するのを原則とします4)。太いカテーテルは、それだけ鼻腔や咽頭に対しての刺激が強く、また胃食道接合部の逆流防止機能を阻害します。

 成人用としては5-16Frが、乳幼児用としては3-8Frのものが市販されています。成人には一般的には8-12Frの使用が推奨されています(表3)。

 投与する栄養剤の種類によってもカテーテルの太さを考慮する必要があります。アミノ酸やペプチドを窒素源とする成分栄養剤と消化態栄養剤は、タンパク質が含まれていないため、カード化現象を起こしません。そのため、カード化に起因するカテーテル閉塞は起きないので、細いカテーテルでも使用可能で、5Fr以上が推奨されます。

 一方、タンパク質を窒素源とする半消化態栄養剤では、カード化によるカテーテル閉塞がおこり易いため、8Fr以上の太さのカテーテルが推奨されています。

長さ

 成人用には90-150cm、乳幼児用には30-40cmから市販されています3)

 カテーテル先端を幽門前(胃内)に留置する場合は、挿入側の鼻孔から耳たぶを経て剣状突起までの距離以上の長さのものを選択します(図2)。幽門後にカテーテル先端を留置する場合は、さらに必要な長さを加えたものを使用します。いずれの場合も鼻孔から体外へ誘導される部分や固定に必要な長さを考慮する必要があります。

 成人では一般的に鼻孔から約55cmでカテーテルの側孔が胃内に入ります。これを考慮して幽門前留置の場合は70-90cm、幽門後の場合は90-120cm以上の長さのカテーテルを選択します。

経鼻胃管(幽門前)ルートのカテーテルの長さの目安

材質

 カテーテルの材質には、ポリ塩化ビニール、ポリウレタン、シリコーン、ポリブタジエンなどが使用されているものが市販されています(表4)4)

 ポリ塩化ビニールは廉価であり、硬さもあってカテーテルが挿入し易い。しかし、消化液での変性が起こり易い。ポリウレタン製は挿入時にはある程度の硬さを有しますが、体温で適度にやわらかくなるという材質で、広く用いられています。シリコーンは生体適合性に優れており、皮膚や粘膜に対しての刺激も少ですが、やわらかいため、カテーテルの挿入に際しては、付属しているスタイレットやシースを用いる必要があります。

経鼻栄養カテーテルの材質別の特徴

経鼻経腸栄養カテーテルの先端部などの特徴とその選択

 カテーテルの先端部の形状は、さまざまに工夫されたものが市販されています(図3)5)。とくに幽門後の十二指腸や空腸にカテーテルの先端を挿入、留置し易いように、先導子や錘が付けられています。オリーブと呼ばれるプラスチックの先端形状や、不活性タングステンやステンレスの小さな棒状やボール状の錘が付けられています。

いろいろな経鼻経腸栄養チューブ

経鼻経管栄養カテーテルの挿入と留置

 経鼻栄養カテーテルの挿入には、ベッドサイドで行うブラインド法、X線透視下で行う方法、内視鏡を用いて行う方法があります5)6)

 カテーテル先端を胃の中に置く幽門前ルートの場合は、通常ブラインド法で行われますが、十二指腸より奥に先端を留置する幽門後ルートを選択する場合は、一般的には透視下か内視鏡補助下で行われます。

挿入手技

カテーテルの挿入手技(ブラインド法)

(1)体位:患者を仰臥位とし、上半身を30~45度程度挙上する。
(2)鼻孔をよく観察し、詰まっていない方、患者の希望する方、挿入しやすい方を検討し、決定する。
(3)経鼻胃管の挿入長さの目安つける。挿入側の鼻孔から耳たぶを経由して剣状突起までを長さの目安とする(図2)。
(4)カテーテル先端と鼻孔にキシロカインゼリーを塗布する。
(5)鼻孔より後咽頭までカテーテルを挿入し、次いでゴックンと唾液を飲み込むように促し、その際にカテーテルを食道に挿入する。水を一口のませる場合もある。
(6)予定の挿入位置までカテーテルを進める。通常成人では約50cmで胃内に足している。
(7)胃内にカテーテル先端があるかどうかを、注射器を用いて胃内容物(胃液)の吸引や、空気を注入しての聴診法などでまず確認する。
(8)空気を注入しての確認法は、聴診器を心か部にあてて、10から20mlの空気を素早く注入して、「ゴボッ」という気泡音を聴取する。
(9)スタイレット(ガイドワイヤー)付きのカテーテルではスタイレットを抜去する。
(10)カテーテルの固形:鼻翼および頬部にテープ固定をする(図5)。
(11)レントゲン撮影を行い、カテーテル先端の確認を、必ず行う。

カテーテルの固定法

X線透視下挿入法

 幽門後ルートが選択された場合にX線透視下で行われる場合が多いです。スタイレットが付いているカテーテルの方が幽門輪を越えての挿入がしやすいです。挿入に際しては体位変換を必要とするので、重症患者には向きません。

内視鏡下挿入法

 やはり、幽門後ルートが選択された場合に用いられます。カテーテル先端に縫合糸を結びつけて、内視鏡から鉗子を入れてその糸を胃内で把持して、内視鏡とともに十二指腸に誘導する方法や、内視鏡を十二指腸まで挿入し、鉗子孔よりガイドワイヤーを挿入して、内視鏡を抜去し、そのガイドワイヤーに沿って、カテーテルを幽門後に留置する方法があります。

経胃瘻的空腸瘻

概念と適応

 先に作成された胃瘻または胃瘻カテーテルを通して、新たな栄養カテーテルを幽門輪を通過させて、先端を空腸に留置することを、「経胃瘻的空腸瘻」と呼びます7)。空腸カテーテルにより空腸への経腸栄養が可能となり、胃瘻カテーテルからは胃に貯留する液体や空気を吸引することができます。

 PEGの胃瘻カテーテルと細径の空腸カテーテルが別個になったもの、胃瘻と空腸瘻カテーテルが一体型となっているものが市販されている(図6,7)。

経胃瘻的空腸瘻に用いる空腸カテーテル

経胃瘻的空腸瘻用 胃瘻/空腸瘻一体型カテーテル

 適応症例は、まず前提条件として、安全に小腸が使用可能であり、小腸の機能が維持されており、かつ4週間から6週間以上の長期の経腸栄養管理が必要となる症例である。その上で、以下の適応が挙げられる。主な適応症例は、胃瘻栄養管理で経腸栄養剤の胃食道逆流が認められ、誤嚥性肺炎を繰り返すケースです。

 たとえば、多発性脳梗塞患者で嚥下障害を呈し、PEGを施行し胃瘻栄養に移行しましたが、栄養剤の逆流により誤嚥性肺炎を起こしてしまうような症例です。幽門輪を越えて、空腸に栄養剤を注入することで、栄養剤の胃食道逆流はみられなくなると考えられています。

 その他にも、
 (1)経腸栄養管理で、空気嚥下・嘔吐が認められるケース。重症心身障害児で、片方の鼻孔から空腸に栄養用カテーテルを留置し、もう一方の鼻孔から空気嚥下でたまる胃内の空気を引くための胃管を留置しているような症例がそれにあたります。

 (2)胃瘻の瘻孔不全の症例で栄養剤の漏れが著しい場合、胃瘻が拡大して太くなってしまったようなケース。このような症例では、胃内容を吸引し、空腸栄養を行なうことで胃瘻からの胃液などの漏れを減少させ、胃瘻自体の回復を促すことができます。

 (3)幽門狭窄症状を示すケース。幽門部の胃癌で幽門狭窄症状を呈する寝たきりの老人の症例に、細い幽門部を通して空腸カテーテルを挿入し、空腸栄養とし、胃瘻からは減圧を行うような時にも使用できます。

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