【連載】看護師のための輸液講座

第3回 輸液量と投与速度の決定

監修 日本コヴィディエン株式会社

シングルユース医療機器の製造及び販売、並びにこれらに関連する一切の事業

執筆 井上善文

医療法人川崎病院 外科 統括部長

【目次】


輸液の投与量・投与速度

カテーテルは挿入できた。輸液ラインについても勉強した。それでは、次に勉強すべき内容は「どんな輸液を選択するか」、ということになりますが、『それはさておき』、輸液の投与量、投与速度をどうやって決定するか、というテーマを第3回として取り上げます。
しかし、よく考えると、輸液の投与量や投与速度を決めるのは医師がやる仕事ですので、ナースとしては指示通りにやれば問題ないのです。
ということは、このテーマはナースのための勉強講座としては適切ではない?のでしょうか。
輸液の選択、投与量・投与速度の決定は、医師の仕事だからナースは何も知らなくていい、という考えの方は、ここでこのページを見るのを中止してください。
別に、私は寂しくもありません。
しかし、世の中、ナースの役割が非常に重要になってきています。
それなのに、ナースの仕事の中でも非常に時間を割く必要がある『輸液』について、その投与量や投与速度について、医師の指示通りやっとけばいいんだ、とりたてて勉強する必要ない、ではダメでしょう。
本当の意味で『いい医療』はできないのではありませんか?
という、前書きで『最後まで読んでください』というお願いをして、本論に入りたいと思います。
この輸液の投与量・投与速度の決定という問題は、実は最も基本的な問題なのですが、本当に理論的に理解できている医師は少ないのではないかと思います。
かなり曖昧な部分もありますし、医学教育ではきちんと教えていないという問題もあります。
とりあえず心不全に陥っていなければ、安全域はかなり広く、そう厳格に決める必要はないとも言えるかもしれません。
しかし、基本的な投与量・投与速度から逸脱し過ぎて決定し、それがある程度の期間持続すると、生命にかかわる重大な合併症を起こしてしまうことも間違いないのです。
患者さんのために輸液を投与しているのですが、少々の誤差があっても、患者さん自身の力(実際には腎臓が調節してくれる)で処方のまずさをカバーしてくれている、という、逆説が成り立つのも変な話ではありますが。
ということで、できるだけ簡単に、概論を解説して参ります。

水分量のバランスとその計算方法

図1は、よく教科書に記載されている、水分量のバランスとその計算方法についての図です。

経口摂取が行われている場合には、飲む水分として1200mL、食事として800ml摂取し、同時にこれらを代謝する際に発生する代謝水が200ml生じますので、合計で2200mlとなります。
この場合に体から出て行く水分は、尿として1200ml、不感蒸泄(呼気および皮膚から失われる水分、汗は出ていることを感じるので不感ではなくて『感蒸泄』。)として900ml、大便として100mlで、合計で2200mlとなり、これでバランスがとれていることになります。

水分量のバランスとその計算方法についての図

水分量のバランス説明イラスト

次に、絶食状態となって輸液だけで必要水分量を補う場合を考えます。
計算上、予測する尿量に不感蒸泄の900mlを加えた水分を補う必要がありますが、この水分量から代謝水の200mlを引いた分が実際に輸液として投与する量になります。
食事をしていなくても、代謝は続いていますので、代謝水は生成されます。
また、絶食ですから、大便中に含まれる水分量は省略できる程度であるはずです。
尿量は1500mlであろう、と予測すると、〔輸液量=尿量(1500ml)+不感蒸泄(900ml)-代謝水(200ml)=2200ml〕という計算になります。
ポイントは、尿量が予測であることです。
逆に、輸液量が多ければ尿量も多くなりますので、追いかけ合いとなって、どんどん輸液量が増え、それに伴って尿量も増える、という状況も考えられますので、注意が必要です。
輸液を多く入れているから尿量が多いのか、尿量が多いから輸液を多く入れなくてはならないのか、わからなくなってしまうことがあります。 理論的にはこのように計算するのですが、尿量を予測しなければなりませんので、正確に計算しても・・・ということになり、計算するのがいやになる、というのが輸液量を正確に決定しにくい理由です。

絶食で輸液を行う場合

輸液の投与量決定方法

実際問題としての輸液投与量決定には、さまざまな方法があります。
一般的な方法は、体重あたり30~40mL/kg/日で計算する、というものです。
体重当たりということでは、図3に示す方法も使われています。

投与輸液量の計算

輸液イメージイラスト

【例】 
体重8kg  : 8kg×100mL/kg=800mL
体重15kg :10kg×100mL/kg+ 5kg×50mL/kg=1250mL
体重25kg :10kg×100mL/kg+10kg×50mL/kg+ 5kg×20mL/kg=1600mL
体重40kg :10kg×100mL/kg+10kg×50mL/kg+20kg×20mL/kg=1900mL
体重56kg :10kg×100mL/kg+10kg×50mL/kg+36kg×20mL/kg=2260mL
(体重56kgを10kg+10kg+36kgに分けて計算する)
ここでは、40mL/kg/日と計算する方法で話を進めます

成人における輸液投与量の決定

この計算方法で大きな問題は起きないはずです。心不全のある方では注意が必要ですが。また、この計算をする場合の体重は、一般的には、現体重を用います。
体重40kgの場合は40kg×40mL/kgと計算して1600mL、体重50kgの方では2000mL、60kgの方では2400mL、と計算されます。 こう計算すれば、どれだけの水分を投与すればいいのか、すっきり計算できます。
そんな、いいかげんな計算でいいのですか、という質問が出るかもしれませんが、腎機能に問題がなければ、多少、水分量が多すぎたり少なすぎたりしても、体は自然に調節してくれます。
40mL/kgで計算しておけば、体が自然に水分のバランスをとれる範囲内の輸液量となりますので、心配はいりません。
もちろん、発熱していて汗をかいている、重症の下痢、多量の嘔吐、などの場合には輸液量はこれらを考慮して増加させなければなりません。
経鼻胃チューブが入っていて500mLの排液があれば500mL追加する必要がありますし、腹水、胆道ドレナージ、腸液の排泄など、喪失する体液がある場合にはそれを考慮して投与量を決定します。

さて、体重50kgの患者に輸液をするとしましょう。
これまで述べました計算方法では、一日の必要輸液量は〔40mL/kg×50kg=2000mL〕となり、簡単な暗算で十分です。
24時間かけて持続投与する、ということにしますと、輸液速度は〔2000mL÷24時間=83.3mL/時〕と計算されますので、83.3mL/時で投与することになります。
細かい調節は、ポンプを使って投与すればできますが、自然落下では不可能ですから80mL/時で投与する、ということにします。
輸液が余りそうになれば、少し投与速度を上げればいいことで、この程度の差は、誤差範囲ですし、体が自然に調節してくれます。
体重が60kgの患者の場合はどうしますか?
この場合の一日必要輸液量は〔40mL/kg×60kg=2400mL〕となります。
ですから、単純に計算すれば〔2400mL÷24時間=100mL/時〕の速度で投与することになります

予定投与量と輸液バックの量の関係

しかし、実際の臨床では、予定投与量と輸液バッグの量との関係が気になりませんか?
例えば、ソリタT3号を投与する場合を考えましょう。
ソリタT3号は1本が500mLですから、50kgの患者には4本投与すれば2000mLとなり、全部投与すればいいのです。
それでは、60kgの患者の場合には、5本投与すれば2500mLとなり、100mL余ることになります。
厳密に輸液投与量を設定しなければならない場合は別として、この場合には100mLを投与しても、体は自然に調節してくれます。このように考えればいいのです。
逆に、体重が40kgの場合には〔40mL/kg×40kg=1600mL〕となります。ソリタT3号を投与するとして、3本なら1500mL、4本なら2000mLです。 どうしましょうか?このような場合には3本、1500mLを選んで投与し、全身状態を観察し、尿量を観察し、これらに問題があれば輸液量を増やす、という調整をします。
最初に述べましたが、輸液投与量は体重あたり30~40mL/kg/日と幅があるので、それほど厳密に決定する必要はないし、こういう計算でやっていける、ということを我々に許してくれているのです。
しかし、根本的なことは理解しておく必要があります。 
看護師がこんなことを理解しておく必要があるのか?ということですが、尿量をチェックし、浮腫はないか、患者の呼吸状態に異常はないか、などを実際に診るのは看護師です。
輸液量の過不足によっていろんな状態の変化が起きる、バイタルサインにも変化が起きる、ということを知っておけば、医師が処方した輸液量や投与速度に問題があることに最初に気づくのは看護師である、ということになるでしょう。
本当にできる看護師、ということではないでしょうか。
TPNの場合には、もう少し細かく考えたいものです

輸液イメージイラスト

TPNの場合

体重50kgの場合:
水分投与量:40kcal/kg/日×50kg=2000kcal/日
  カロリー投与量:30kcal/kg/日×50kg=1500kcal/日
ピーエヌツイン2号を用いると、2000mL中のカロリー量は1520kcal。
しかし、2号を2本投与すると、2200mL、1680kcalとなって、少し過剰。これを長期間続けると、カロリー・水分過剰となるはず。
体重40kgの場合:
水分投与量:40kcal/kg/日×40kg=1600kcal/日
  カロリー投与量:30kcal/kg/日×40kg=1200kcal/日
ピーエヌツイン2号、1本では1100mL、840kcalなので少なすぎる。
しかし、2号を2本投与すると、2200mL、1680kcalとなって、かなり過剰。
1600mLを投与するとして計算すると、1600mL÷24時間=66.7mL/時≒70mL/時輸液量:70mL/時×24時間=1680mL/日、カロリー量:1680mL×0.76kcal/mL=1276kcal
(70mL/時で投与すると、1680mL、1276kcalとなって、適正投与量となる)

TPN基本液の場合には1号、2号、3号で水分量に対するカロリー量が違います。
体重50kgで、完全絶食の患者にTPNを施行する場合を考えましょう。
必要水分量は40mL/kgと考えると2000mLです。
投与カロリー量は、本当はいろんな計算方法があるのですが、今回は計算を単純にするために30kcal/kgとしましょう。 この患者の場合には〔30kcal/kg×50kg=1500kcal〕ということになります。 ピーエヌツインを用いるとしますと、1号は1mLが0.56kcalで、2号は1mLが0.76kcalで、3号は1mLが1kcalですので、2号を2000mL投与すればカロリー量としては、〔2000mL×0.76kcal/mL=1520kcal〕を投与することができますので、計算上は、ピーエヌツイン2号を2000mL投与すればいいことになります。
イラスト
しかし問題は、ピーエヌツイン2号は2バッグで2200mLであるという点です。 バッグ製剤は輸液の残量が正確にわからないという問題があります。 最近は、便利であるという理由で2200mLすべて投与する、という傾向にあります。 そうしますと、実際には水分投与量は44kcal/kgとなり、カロリー投与量は33.6kcal/kgとなります。
この程度の誤差であれば、多分、体の自然調節能力により大きな問題は生じないと思いますが、私が強調したいのは、輸液バッグの量を優先するべきではない、という点です。 投与量は、体重あたり何mL、何カロリーと計算してから決定すべきもので、輸液バッグの容量を中心として計算すべきではありません。 面倒でも、この場合には2200mLから200mLを残す努力をするべきです。 あらかじめ200mLを注射器で吸って捨ててもいいと思います。
特に高齢者や、心肺機能に問題がある症例では、この程度の余分な水分でも継続することにより心不全などの状態に陥らない保証はありません。 ほとんどの場合には、この患者に対しては2200mL投与しても、大きな問題は起こらないのですが。
特にone-day-bagの場合には、余計計算がしにくくなります。 余分な輸液をどうすべきか、考える必要があります。 例えば体重40kgの患者さんで同じ計算をしますと、必要水分量は1600mLで必要カロリー量は1200mLになります。 これをピーエヌツイン2号で投与しますと、1本では500mL足りないし、2本にすると600mLが余ります。 この場合に、バッグの容量を中心として計算すると、水分やカロリー量が過剰になって、体に大きな負担がかかることになる、これを知っておく必要があると思うのです。
こんな細かい計算は無駄、という意見もあるかもしれませんが、輸液量、カロリー量というのはこのように計算して決定するのだという知識はもっておいて欲しいと思います。 本当はもっと複雑なのですが、敢えて、非常に簡単な計算方法を説明しました。 もちろん、この計算方法を実際にやれば、ほとんど問題はありません。 この理論を理解した上で、医師が決定している輸液量、カロリー量をチェックして実際に投与することが、今後の仕事を面白くしてくれるように思います。

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