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【連載】褥瘡ケア 創の見方と適切なドレッシング材

【急性期の褥瘡】経過観察とケア

解説 渡辺光子

日本医科大学千葉北総病院 看護師長 皮膚・排泄ケア認定看護師

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急性期と慢性期の褥瘡では、創を見るための視点がことなります。まずは、急性期の褥瘡から、アセスメントのポイントを解説していきます。


【目次】


急性期の褥瘡の経過とケア

褥瘡が発生した直後から、1~3週間を急性期といいます。創の色は薄いピンクや赤い、黒い創が混在していることが多く、炎症で痛みを伴うことが多いのも特徴です。主に発赤から始まり、浅い、または深い褥瘡として慢性化していく経緯をたどります。

慢性化せずに治癒させるために、最も不可欠な治療は原因の追求とその除去です。まずは原因となっている圧迫を除去する必要があります。

そして、ドレッシング材で創を保護するなど、適切な治療を行います。しかし、適切なドレッシング材を使用したとしても、ずれが起こるような体位(ファーラー位など)の調整では、テンション(張力)がかかってしまい、さらに悪化する可能性があるため注意します。

急性期は局所病態が不安定で、大きさや輪郭、深さが分かりにくい時期です。真皮までの浅い褥瘡にみえることが多いのですが、血流の阻害による障害がどのくらいの深さに達しているかがわからず、一見浅い褥瘡にみえたとしても、あとで深い褥瘡(皮下組織までの損傷)であると判明することがあります。

【創の見方のポイント】

  1. 発赤の見極め
  2. 炎症の観察
  3. 「DTI疑い」を念頭におく
  4. 局所病態が不安定なので、毎日の観察が必要

次からはポイントで挙げたものを一つずつ具体的に解説していきます。

発赤の見極め

褥瘡の発生の初期は、発赤という皮膚の変化がみられることがほとんどです。この段階で褥瘡をみつけることが大切です。

発赤のすべてが褥瘡とは限らず、その発赤が、真皮深層の微小血管の拡張である「一時的な発赤」、つまり「反応性充血」なのか、持続する発赤であり、真皮の赤血球が血管外漏出した「d1褥瘡(日本褥瘡学会のDESIGN-R分類による深さの評価:NPUAP分類のI度にあたる)」として扱うのかを見極める必要があります。

発赤の見極め説明図

褥瘡かどうかを鑑別しよう

褥瘡の鑑別方法としては、「指押し法」と「ガラス板圧診法」があります(下図)。ただし臨床現場では、仮に反応性充血であったとしても、圧迫後に赤みが消えない、つまり白色に変化しない患者さんもいます。そこで、発赤を発見したときは、その部分を除圧し、次の体位変換時に、再度観察するようにしています。除圧していてもまだ発赤があるならば、褥瘡の可能性が高くなります。また褥瘡であればすぐには消失しないため、翌日にも発赤が残っていれば、確実に褥瘡と判断できます。

発赤の中でも、二重発赤(発赤の中にある濃い発赤)や骨突出部から離れた位置の発赤は皮膚欠損にいたる可能性が高いという研究があり、注意が必要です。

なお、数時間に及ぶ長時間の手術を受けた患者さんの場合、圧迫部位に紅斑が出現することがあります。術直後ではなく、数時間後に出現することもあるので、術後数日間は全身の観察が大切です。

褥瘡の鑑別方法

見逃しやすい頭部の褥瘡

褥瘡を見逃しやすい部位に、頭部があります。特に日本人は髪の毛が黒いので、注意深く観察しないと見逃すことが多いようです。

例えば意識消失で緊急搬送されてきた患者さんは、発見されるまでに数時間、あるいは何日か、倒れた状態のままでいることがあります。その場合、全身は注意深く観察するのですが、頭部の観察が不充分で、その後洗髪して初めて、頭部の褥瘡を発見したという報告があります。

また、長時間にわたる手術を行った患者さんの頭部に褥瘡ができたことがありました。頭部をリング状の枕で固定していたために、術後に頭部をしっかり観察しましたが、異常はありませんでした。ところが数日後に脱毛を生じて、褥瘡があったことがわかりました。しかし、そのときにはすでに治癒していました。

頭部は硬い頭蓋骨で覆われて重みがあるため、褥瘡ができやすい部位だといえます。ただし、血流も豊富であるため、足などに比べて治癒も早いといえます。特に脳外科の手術のある病棟では、頭部も注意して観察しましょう。

炎症の観察

急性期の創の特徴としては、まず炎症反応が強いということです。創およびその周囲の皮膚は脆弱になっており、少しの外力で容易に皮膚剥離や出血などが生じる可能性があります。急性期の褥瘡は、痛みを伴いやすいため、患者さんの痛みにも配慮します。

さらに、全身状態が不安定であったり、発生原因が複数混在していることがあり、炎症の経過も、発赤や紫斑、水疱、びらん、浮腫、浅い潰瘍など、多様に推移すると考えられます。

炎症の観察

毎日の観察が大切

炎症の強いこの時期は、皮膚にダメージを与えないようにドレッシング材や外用薬を使い、毎日、創を注意深く観察することが大切です。急性期の炎症は、感染によるものではなく、圧迫やずれなどの物理的刺激によるものがほとんどですが、長期間管理をしている創に、炎症が起きた場合は、感染を疑い、感染の徴候を確認します。

水疱ができているとき

水疱は創を保護するため、基本的に破りません。しかし、膿性など感染しているリスクが高い水疱、緊満していて圧迫につながるような水疱は穿刺することがあります。

感染の有無を見極める

創が感染を起こしている場合、以下のような特徴があります。

  1. 熱が出ている
  2. 滲出液がある
  3. 悪臭がある
  4. 排膿がある(皮膚の表面がぶよぶよしている)

このような場合は、局所ケアだけでは対処できないことも多く、抗生物質の投与やデブリードマンなど、ただちに感染に対する治療が必要になります。医師に報告しましょう。

「DTI疑い」を念頭におく

限局性の紫色や茶色の変色した皮膚で、表面から判断するとNPUAPの分類でI度やII度といった軽度の褥瘡でも、実際には深部の皮下組織がすでに壊死に至っており時間とともに深い褥瘡となる創があります。こうした創の初期段階をNPUAPでは、「DTI疑い」と分類しています。

DTIとは?

DTIとはDeep Tissue Injuryの略で、直訳すると深部組織の損傷という意味です。DTIであるかどうかをみるには、視診のほかに触診では近接する皮膚組織と比較し、硬結や泥のような浮遊感・皮膚温の変化を観察する方法もありますが、実際にDTIかどうかを見極めるのは難しいでしょう。したがって、発赤の段階でDTIの可能性があるという「DTI疑い」を念頭におき、しっかり観察していくことが大切です。

外観的にDTI疑いがDTIであるとわかるのは、発赤を発見してから数週間後です。壊死組織が顕在化してきて、創の輪郭がはっきりしてくるので、肉眼的にもDTI、つまりその時点ではIII度以上の褥瘡ということになります。

エコーにより確定

最近ではエコーによる画像検査を行うことで、早期にDTIかどうかが確定できるようになりました。エコー検査は非侵襲的な検査なので、ある程度訓練した看護師なら検査が可能で、アセスメントの手段の一つとして検査を行っているところもあります。

DTI疑い

栄養状態がよくてもみられるDTI

最近では栄養状態の良い人でもDTIになる可能性があることがわかってきました。栄養状態がよいと、真皮や皮下脂肪が豊富にあり、圧迫を受けると深部にダメージを受けます。つまり血管の閉塞や損傷が生じやすいからと考えられています。例えば、長時間の手術で、同じ部位に圧迫を受けると、DTIを起こす可能性があります。

ダメージは深部が受けやすい

皮膚へのダメージは、普通、表皮から受け、深部に達していくと考えられがちですが、実は圧迫やずれによる皮膚へのダメージは、骨に一番近い深部に受けやすいのです。人間の組織の中で一番硬いのは骨です。しかも、圧力やずれに対して真皮は比較的強いのに対して、皮下組織や筋肉は弱いといえます。従って、表層ではなく、最も硬い骨の周りの皮下組織の深部から先に壊死が起こることが考えられます。こうしたことも、エコー検査が行われるようになって、分かってきました。

(ナース専科「マガジン」2010年6月号より転載)

※次回からは、慢性期の褥瘡の見方について解説します。

イラスト/東 いずみ

褥瘡のまとめ記事
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