【連載】急変対応マニュアル

血液分布異常性ショックの病態とその対応

解説 木下 佳子

NTT東日本関東病院副看護部長 急性・重症患者看護専門看護師

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急変時の対応


 急変症状の中でも「ショック」にはさまざまな原因があり、その見極めを覚えておくことは重要です。ここでは見極めのポイントとそのとき看護師は何をすべきかを解説します。


血液分布異常性ショックとは

 血管の特定箇所が何らかの異常により拡張した結果、相対的に循環血液量が減少し、起こるショックです。循環血液量は正常に保たれているのが特徴です。

 原因によって
(a)感染性ショック
(b)アナフィラキシーショック
(c)神経原性ショック
 の3つに分けられます。

 ここでは臨床で遭遇することのより多い(a)感染性ショックと(b)アナフィラキシーショックについて説明します。

(a)感染性ショック

 さまざまな感染症が原因となって起こるもので、病原微生物や細菌、その菌体成分である毒素(エンドトキシン)などに対する過剰な生体反応でもたらされます。また、近年新たな概念として浸透してきたSIRS(全身性炎症反応症候群)の中で感染を原因として起こるものをsepsisと呼んでいます。


 このsepsisショックの場合、動脈や細動脈が拡張することにより、末梢動脈抵抗が減少し、心拍出量が増加します。そのため、最初は末梢の手足は温かく、「warm shock(ウォームショック)」とも呼ばれます。しかし、次第に心拍出量は減少し、血圧は低下します。

感染性ショックの仕組み説明図
図1 感染性ショックの仕組み

感染性ショックへの対応

 まずは最初の6時間以内にいかに循環動態を正常に戻すかが大切です。そのため感染性ショックが疑われたら、すぐに医師に連絡し、ICUなどの重症患者治療が行われる場所に搬送します。ただし、移送は非常に危険な場合もあるので、まずは呼吸と循環を確保し、モニタリングを行いながら移送します。

具体的な初期対応としては、

1.中心静脈圧8~12mmHg
2.平均動脈圧65mmHg以上
3.尿量0.5mL/kg/時以上
4.中心静脈酸素飽和度70% 以上、SvO265%以上

 を目標に、輸液投与、輸血、ドブタミン投与などを行います。

 未満のときは、ヘマクリット値を確認、30%未満なら輸血、30%を超えていたらドブタミンを投与します。

 循環動態が安定したら、抗生物質を投与しますが、その前に感染巣を特定するための培養サンプルを取ることを忘れないようにします。ただし、サンプルを取るために抗生物質の投与が遅れてしまわないよう手早く行うことが必要です。

 また、生体への侵襲によって高血糖になっているので、インスリンの持続静脈内投与(血糖値150mg/dL以下に)を行うこともあります。血糖コントロールにより、死亡率が低下するという調査結果も報告されています。ただし、低血糖への注意が必要なので、1~2時間ごとにモニターします。

(b)アナフィラキシーショック

 すでに特定の抗原に対し感作されている人が、その抗原に再び曝露することで起こる急性のアレルギー反応による、生命を脅かすショックのことです。血管が急速に拡張するために、循環血液量が低下し、さらに咽頭浮腫や気管攣縮による気道の閉塞が起こります。病院での感作抗原としては、抗生物質や造影剤があります。

 掻痒感、胸部不快感、嗄声、くしゃみ、咳、悪心、嘔気などの初期症状に続き、呼吸困難、喘息様発作、胸内苦悶感、意識障害、蕁麻疹、全身発赤、冷汗、過呼吸、血圧低下、咽頭浮腫などの症状が現れます。特に気を付けなければいけないのは、咽頭浮腫や気管攣縮によって起こる気管の閉塞と血圧低下です。

アナフィラキシーショックへの対応

 まずは予防することが大切なので、抗生物質や造影剤を使用する前には十分な問診を行い、アレルギーの既往がないことを確認します。また、投与開始から終了まで、初期症状が出ていないか患者さんを注意深く観察し、患者さんには「異常を感じたらすぐに伝えてください」と依頼しておきます。

 そして異常があれば、直ちに原因物質である薬剤の投与をやめ、バイタルサインのチェックと症状の観察を行います。重症度によっては、気道の確保、輸液投与、酸素投与、抗ヒスタミン薬(ポララミン(R)など)やエピネフリンの投与(ボスミン(R)皮下注射または筋肉注射)、ステロイド投与を行うので、これらの準備をします。


(『ナース専科マガジン』2012年6月号より転載)

その他のショックについてはこちら
* ショックの定義、症状、診断基準と見極め

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