【連載】看護師のための経腸栄養講座

第9回 在宅経腸栄養法

監修 日本コヴィディエン株式会社

シングルユース医療機器の製造及び販売、並びにこれらに関連する一切の事業

【目次】


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経腸栄養(経管栄養)とは|種類・手順・看護のポイント


はじめに

 在宅経腸栄養法(Home Enteral Nutrition,HEN)の大前提として、まず対象の患者さんが腸が安全に使用できることが必要です。食事が十分摂取できないことにより、入院期間がいたずらに遷延する症例や、在宅においても栄養摂取が不十分で低栄養状態となる危険性のある症例などがHENの適応となります。

 経腸栄養法は静脈栄養法に比べ、管理が簡便かつ安全であり、重篤な合併症も少ないのが特徴です。静脈栄養でのbacterial translocationや免疫能の低下も回避でき、経腸栄養法の選択が推奨されます。在宅の場合も腸管が安全に使用できれば、HPNではなくHENを選択すべきです。

1、HENの適応

 HENの適応としては、[1]摂食・嚥下障害:脳血管障害、神経筋疾患などによる嚥下障害症例、[2]炎症性腸疾患(クローン病)、短腸症候群症例、[3]食事が十分摂取できない消化器手術後症例(食道癌・胃癌などの術後)、[4]食事が十分摂取できない進行・再発癌患者などです。

 このうち、もっとも症例数が多いのは、脳血管障害による嚥下障害症例です1)。その多くは寝たきりの高齢者で、経鼻的に胃にチューブを挿入するか、胃瘻を造設して、在宅経腸栄養を行っています。脳血管障害に比較して頻度としては低いですが、炎症性大腸疾患、とくにクローン病は、重要なHEN適応症です1)。経腸栄養剤を飲むこともありますが、患者さん自身で経鼻的にチューブを挿入し、夜間に栄養剤を注入することが勧められています。

 癌患者に対しての在宅経腸栄養は、食事が十分摂取できない消化器がん手術後患者や進行・再発癌患者に対して行われます。現在でも消化器外科領域の手術後栄養管理として、多くの症例で完全静脈栄養法(TPN)が施行されていますが、最近、より生理的な栄養法である経腸栄養が見直され、術後栄養法としても再認識されてきました。

 腹部手術時に経腸栄養カテーテルを留置し、食事量が少ない症例にはHENを行うことにより、QOLを保つことができます2)。一方、癌が進行した状態で、食事摂取が不十分で低栄養状態になる危険性のある患者に対して、経鼻栄養チューブやPEGによる胃瘻から、在宅で経腸栄養を行うこともあります。

 HEN導入に際しては、患者および介護者の準備、かかりつけの在宅主治医、訪問看護ステーションとの連携、在宅用の器具の調達など、幅の広い準備が必要です。

2、摂食・嚥下障害に対するHEN

 HENで最も頻度が高い対象です。脳血管障害、認知症、神経筋疾患などで嚥下が困難となった症例には、在宅において経腸栄養剤やミキサー食などにより経管栄養を行います。

 腸管のアクセスルートとしては、経鼻チューブ、胃瘻、空腸瘻などがあります。現在、簡便なPEGが広く行われるようになり、胃瘻管理の症例が飛躍的に増えています3)。胃瘻からの通常の液状経腸栄養剤で誤嚥や逆流がおこる症例には、寒天による栄養剤の固形化や半固形化栄養剤が用いられ、胃食道逆流を予防する方法がとられます。また栄養チューブの工夫としてはチューブ先端を幽門後に留置する経胃瘻的空腸瘻からの栄養法なども行われ、在宅においての安定したHENを可能にしています4)。

 PEGが不可能な例に関しては、手術的な胃瘻、空腸瘻の造設がおこなわれますが、大石により開発されたPTEGも行われています5)。PTEGはとくに胃切除がされた症例に在宅経腸栄養が必要な場合に有効です。PTEGにもPEGと同様にチューブタイプ以外にボタンタイプもあり、在宅には欠かせないツールとなっています。

 空腸に栄養剤が注入される経胃瘻的空腸瘻や手術的に造設された空腸瘻、胃切除後のPTEGなどには原則的には少量持続の栄養剤の投与が基本であり、注入ポンプの使用が推奨されます。空腸に栄養剤がいっぺんに入ると下痢をおこすからです。栄養剤投与が長期にわたり、腸管が栄養剤投与になれてきた場合には間歇的投与も可能な症例もあるが、胃瘻に比べてゆっくりと投与する必要があります。

3、 クローン病に対するHEN

 脳血管障害に比較して、頻度は低いですが、炎症性大腸疾患、特にクローン病はもう一つの重要なHENの適応症です。経腸栄養剤を飲むこともありますが、患者自身で経鼻的に栄養チューブを挿入し、夜間に栄養剤を注入することが勧められています1)
 このチューブの自己挿管(self-intubation)を在宅で行うには手技を十分習得する必要があります。

 チューブのオリーブの部分に十分のキシロカインゼリーを塗布し、鼻孔から挿入させます。その先端が咽頭下部まで到達したら、水を飲み込ませながら徐々にチューブを押し進めます。約45cm~50cmで先端は胃内に達しているので、鼻孔付近でチューブを絆創膏で固定します。

 この自己挿管は慣れてくるとキシロカインゼリーなしでもできるようになります。また、最近はクローン病患者にPEGで胃瘻を造設し、在宅で短時間に大量の経腸栄養剤を注入する方法も考案されています。

4、消化器癌術後患者のHEN(術中空腸瘻造設による在宅・入院を通したシームレスな栄養管理法)

 消化器癌の手術において、術後の経口摂取量が減少したり、低栄養状態が起こってくると判断された症例には、術中に経腸栄養のアクセスルートとして、空腸瘻を造設します。それによって、術直後の経腸栄養による管理に始まり、引き続き、在宅での経腸栄養による栄養補助が可能となります2)

 消化器癌手術患者の中で、高齢者症例、術前から合併症のある症例、癌の遺残が避けられない症例、再発が必至の症例などには、経腸栄養カテーテルを術中に留置することで、入院から在宅へのシームレスな栄養管理が可能となります3)。われわれは、胃癌、食道癌、すい臓癌手術症例には、術中に空腸瘻を造設しています(図1)。

空腸瘻を造設説明図

 空腸瘻はNCJ(needle catheter jejunostomy)キットを用いて作成していいます(図2)。

消化器癌手術時の空腸瘻造設の例

 胃癌症例では、胃全摘、亜全摘などが、食道癌患者には開胸開腹下で、食道切除、胃管再建が行われるのが一般的です。このような手術が行われた場合、正常な胃がなくなってしまい、食物の貯留が困難になり、多かれ少なかれ経口からの食事摂取量は低下します。

 術後の食事摂取量が少ないために、栄養の摂取ができず、術後の入院期間が遷延することはしばしば経験されます。近年、高齢化社会に伴い、高齢者の胃癌、食道癌の手術が増加しています。高齢者の胃全摘例や食道切除症例では、極端に経口摂取量が減り、食事だけでは十分な栄養が得られない症例も多くみられます。

 いったん退院しても、毎日近くの医院や診療所で点滴を受けていることもしばしばです。このような症例に対して、HENはよい適応となります(図3)。

消化器術後患者の在宅経腸栄養療法

 胃癌や食道癌の手術時に経腸栄養チューブを空腸に留置しておくことにより、 術後の経腸栄養管理を可能にし、その後に食事摂取量が少ない場合にはすぐさまHENに移行する事により、退院が可能となります4)。このような症例は、癌の再発、再燃がなければ、時間経過とともに、徐々に食事摂取量が増加していくので、経腸栄養補助を減らしていく事が可能となります。

 術後患者で在宅経腸栄養補助の必要がない場合は、退院前に経腸栄養カテーテルを抜去しています。一方、在宅経腸栄養に移行する患者は、胃全摘の場合は1/5程度であり、食道癌手術後ではそれより多いという結果でした4)。

 手術後、食事摂取量が少なく、HENの必要性あると考えられる症例は、なるべく早く、HENの練習を開始します。患者、家族および介護者は、HENの趣旨と内容を理解するために、病棟看護婦および在宅看護部から説明を受けます。
 
 [1]経腸栄養剤の調整法、保存法、[2]栄養チューブとコンテナーバッグ、ポンプなどの接続方法、[3]栄養剤の投与方法、注入速度の調節法、[4]ポンプの操作法、充電法、接続の仕方など、[5]経腸栄養施行時の合併症とその症状、対処法、[6]入浴、シャワーの入り方、などが指導されます。とくに、患者や家族の戸惑いをなくすためにも、入院時に使用した器具やポンプと同じものを在宅でも使用できるようにします。経腸栄養剤のスタンドやポンプはレンタルを使用を勧めています。

 退院後は、経口摂取の補助としてHENが施行されます。日中は活動して、夜間にポンプを用いて40-100ml/時間で栄養剤を注入し、1日400-1200kcalを経腸栄養で補っています。定期的な外来通院時に食事摂取量、体重変化などを観察し、投与量を調節します。癌再発がない患者であれば、多くの場合退院後徐々に経口摂取が増加し、HENの必要がなくなります。著者らの胃癌術後の統計では、その在宅栄養補助の期間は、退院後6か月以内が40%、1年以内が75%である。しかし、3年以上の症例も10%弱認められました4)

 在宅でこのような空腸瘻の経腸栄養補助をおこなった患者の50%は、外来化学療法を施行していました。癌患者の化学療法は入院から外来治療へと移行してきており、その治療の基盤として、栄養状態の維持は必要不可欠なもので、HENは外来化学療法を安全に行うための、良い補助手段です。

 せっかく留置した経腸栄養カテーテルも一旦抜してしまうと、1日で瘻孔は閉鎖してしまいます。患者に将来に起こりえる低栄養状態に対して栄養補助が不可能となってしまいます。著者らは、一時的に使用しなくなった腸瘻の開存を維持するために、シリコンの細いボタンである「アナホジキ」を使用しています(図4)。

「アナホジキ」を使用したやり方

 在宅において経口摂取が減り、経腸栄養の補助が必要になった時点で、「アナホジキ」を抜き、経腸栄養カテーテルを空腸に再び留置する。このようにすれば、術後、在宅、再発を通じて、栄養状態の面からの患者のQOLの維持が可能となり、在宅療養が継続できるのです1)

 以上のように、消化器手術時に経腸栄養カテーテルを留置することにより、経腸栄養による術後栄養管理にはじまり、術後経口摂取不良の例では退院後は夜間のHENを施行することが可能となります。この方法は消化器術後のシームレスな栄養補助を可能とし、術後の早期退院、外来での栄養状態とQOLの維持に有効な方法と考えられます。

5、進行・再発癌患者に対するHEN

 消化器癌が再発し、徐々に悪化していくと、食欲不振、経口摂取量の低下、低栄養状態となります。栄養状態が低下すると化学療法や放射線療法に対しても、容易に副作用がおこるため、治療の継続のためにも、栄養状態の維持は必要です。

 サプリメント的に栄養剤の経口的な摂取ができればよいですが、多くの場合、摂取ができないか、できたとしても、ごく少量に限られます。在宅経腸栄養を行うに際し、上記のような手術時に留置された空腸瘻が存在しない場合は、新たに腸管のアクセスルートを確保する必要があります。

 主な経管栄養ルートは、[1]経鼻胃管、[2]胃瘻(作成方法:PEG、外科手術による)5)、[3]空腸瘻(作成方法:外科手術、PEG-Jなど)6)、[4]食道瘻(作成方法:PTEG)7)などです。上部消化管の手術が行われ、胃に切除が加えられている場合は、PEGが不可能のことも多く、そのような場合にはPTEGはよい適応となります。また、外科的な空腸瘻の作成は、局所麻酔でも可能なので、比較的容易に行えます。

6、HENに必要な器具およびその取り扱い

 HENを効果的に行うためには、器具やその取扱いに関する知識が必要です。経腸栄養を施行するためには、栄養剤の他に、カテーテル(経鼻、経胃腸瘻カテーテル)、栄養剤をいれるコンテナー、ボトルやバッグ、それに付属するライン、経腸栄養用のポンプが必要です。経腸栄養用カテーテル、バッグ、コンテナーなどは医療保険上、栄養管セットで算定され、経腸栄養用注入ポンプは注入ポンプ加算で算定されます。

1) 経腸栄養剤

 経腸栄養剤はアミノ酸を窒素源とする成分栄養剤(エレンタール)、ジペプチド、トリペプチドを窒素源とする消化態栄養剤(ツインライン)、蛋白質を窒素源とする半消化態栄養剤および天然濃厚流動食に分類される。成分栄養剤、消化態栄養剤は医薬品、半消化態は医薬品と食品があります。在宅で経腸栄養剤を使用する場合、医薬品の経腸栄養剤は医師の処方が必要ですが、保険請求ができ、患者負担は少なくなります。一方、食品の栄養剤は、医師の処方は要りませんが、保険請求ができず、自己負担となります。

 在宅成分栄養経管栄養法指導料は、在宅経腸栄養に関する指導管理を行った場合に2500点算定することができます。また、栄養管セット又は注入ポンプを使用した場合は、所定点数にそれぞれ2,000点又は1,000点を加算することができます。しかし、この加算の対象となる経腸栄養剤は、成分栄養剤・消化態栄養剤のみで、現在では、エレンタール、エレンタールP、およびツインラインだけです。それ以外の経腸栄養剤を使用している場合は、在宅寝たきり患者処置指導管理料(1000点)で算定します。

 医学上の適応と医療保険適用のずれがあり、半消化態栄養剤にも保険適応を拡大すべきであるという動きがでてきています。
また、今後HEN症例の増加とともに、経腸栄養剤の宅配などのシステムも充実すべきです。

2) 注入ポンプ

 経腸栄養用のポンプは国産、輸入を含め、数種類販売されています。胃瘻では重力滴下で行われますが、空腸瘻では代用胃として注入ポンプを用い、少量持続投与が原則です。ボーラスでは容易に下痢をおこします。しかし、経腸栄養に空腸が慣れてくれば、間歇的な投与も可能となります。

 注入ポンプを使うと、体位や体動による注入速度の影響が少なくて済みます。栄養剤の注入量が多い場合や、夜間就寝時に注入する場合、あるいは経腸栄養のためのジャケット、ショルダーバッグなどを使用する場合には、注入ポンプを使用する必要があります(図5)。

注入ポンプ

3)注入用バッグおよびシェーキングボトル

 注入用バッグは数種類が入手可能であり、それぞれ注入ラインが接続されています。容量も500-1200mlのものがあり、適切なものを使用します。この場合は、経腸栄養剤をあらかじめ調整しておいてからバッグにいれる手順となります。

 これに対して、シェーキングボトルは経腸栄養剤と適量の微温湯を入れ、シェイクすることにより調整し、そのまま注入ボトルとして使用できます。バッグやボトルは洗浄・乾燥時の代替や破損を考えて複数個用意します。

 一部の液状経腸栄養剤はそのパックが注入バッグになるように工夫されているRTH(ready to hang)製剤もあり、細菌汚染予防や介護の軽減の面で工夫されています。

4)経腸栄養ボトルのスタンド

 在宅で忘れてならないのは、経腸栄養ボトルとポンプがつけられるスタンドです。自宅で鴨居などにボトルを吊るす工夫もなされていますが、トイレや外出を考慮に入れる際には、ポータブルのスタンドを利用する方が便利です(図6)。また、ボトルとポンプのスタンドがショルダーバッグに格納できるものも市販されています(図5)。

経腸栄養ボトルのスタンド

5)在宅での器具の洗浄

 経腸栄養剤はよい細菌の培地でもあるので、器具の洗浄は確実に行わなくてはなりません。HENでは器具や経腸剤の清潔な取扱いを注意深く指導する必要があります。

 私どもが以前行ったボトル洗浄の研究では、流水での洗浄、熱湯での洗浄、中性洗剤のみでの洗浄では細菌が12時間で細菌が105/ml以上となりましたが、中性洗剤で洗浄後、次亜塩素酸ナトリウム溶液(ミルトンなど)につけるか、中性洗剤で洗浄し熱湯を通すと細菌増殖が抑えられ、新しいボトルとほぼ遜色がないことが判明した8)。また私どもの調査では、PEG施行患者のPEGのチューブの培養からMRSAや緑膿菌の細菌増殖が見られた例はすべて推奨された洗浄法を施行していない例でした。

 患者や家族の指導では、中性洗剤で洗浄の後、ミルトン液に浸した後に、自然乾燥することをすすめる必要があります。コンテナー、ボトルやルートの洗浄法は下記の手順に従います。
1、中性洗剤を用いて、水道水で付着した汚れを落とす
2、0.01%次亜塩素酸ナトリウム(ミルトン、ピューラックスなど)を入れた大きな容器に、ボトル、ルート内部を満たして、全体も約1時間浸す。
3、ボトル、ルートを引き上げて、次亜塩素酸ナトリウム溶液を落とし、水道水で洗い流す。
4、自然乾燥させる。

最後に

 HENの保険適応となる対象患者は、原因疾患の如何にかかわらず、HEN以外では栄養の維持が困難なものであるとされています。在宅医療の中でも在宅栄養法は重要な位置を占め、脳血管障害やクローン病以外にも多くの患者に適応が可能であると考えられます。経鼻、経胃腸瘻栄養チューブを如何にうまく利用し、在宅患者の栄養状態を改善し、QOL向上に役立てるかを常に模索してゆく必要があるでしょう。

文献

1)丸山道生:腸ろうからの栄養管理、臨床栄養 102: 273-280, 2003
2)丸山道生:空腸瘻、丸山道生編、経腸栄養バイブル、p134-137、日本医事新報社、東京、2007
3)丸山道生:在宅経腸栄養療法、丸山道生編、経腸栄養バイブル、p256-260、日本医事新報社、東京、2007
4)丸山道生:外来における栄養管理の現状-外科手術後患者の外来栄養管理-、静脈経腸栄養20: 13-19, 2005
5)丸山道生:内視鏡的胃瘻造設術(PEG)と栄養管理、臨床栄養102:393-400, 2003
6)丸山道生:腸管アクセス(経鼻胃管、PEJ, PTEGなど)および経腸栄養剤の汚染、臨床栄養102:529-536、2003
7)大石英人, 進藤廣成, 城谷典保ほか:食道瘻 経皮経食道胃管挿入術(PTEG)、外科64:434-438、2002
8) 朝倉佳代子、野村恵美子、丸山道生:経腸栄養ボトルおよび経腸栄養剤の細菌汚染に関しての検討、JJPEN 19: 157-159 1997

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