【連載】褥瘡ケア 創の見方と適切なドレッシング材

ドレッシング材の特徴・選び方・使い方のポイント5

解説 樋口ミキ

日本看護協会看護研修学校 認定看護師教育課程 皮膚・排泄ケア学科 主任教員 皮膚・排泄ケア認定看護師

この回では、臨床現場では、どのようにドレッシング材を選んでいけばよいのかを解説します。何をみて、ドレッシング材を選択していくのかを知っておきましょう。


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さまざまな要素を考慮して選択する

 褥瘡予防・管理ガイドラインでも一定の選択基準は挙げられていますが、「この創にはこのドレッシング材」と言い切れるわけではなく、創や患者さんの状態、病院の特性などさまざまな要素や視点から考えなければなりません。簡単ではありませんが、創のアセスメントと患者さんの状態が分かっていれば、ポイントに沿って選択していくことができます。そのポイントを以下に紹介していきましょう(基本的にポイントは、ガイドラインに準拠しています)。

POINT1 滲出液の量に着目

 まず初めの選択ポイントを「滲出液の量」とします(下表)。滲出液の量を基準に考えて、創傷部位や創周囲の皮膚が浸軟しないように余分な滲出液を吸収し、適度な湿潤環境を整えるドレッシング材を選択するようにします。

 表にあるように、ドレッシング材はそれぞれ滲出液の吸収力に違いがあります。また、同じような吸収力でも、水分含有量が多いハイドロジェルはむしろ乾燥している創に適していますし、ハイドロコロイドは滲出液が少ない創に適しています。このように滲出液の量で絞ったら、ドレッシング材の特性を考えて、より創や皮膚の状態に合ったものを選んでいきます。

 滲出液が多い創ではポリウレタンフォームのような厚さのあるフォーム材やハイドロファイバーが必要となってきます。ただし、1日1回以上の交換になるなど、ドレッシング材では対応しきれないほどの滲出液の量の場合は、軟膏による処置や陰圧閉鎖療法などほかのケアを考える必要があるでしょう。

滲出液の量とドレッシング材

[memo 軟膏による処置]

 ドレッシング材を使用する意義やメリットは、滲出液をコントロールし、湿潤環境を保持し、創治癒を促進することです。毎日の交換では滲出液がコントロールできていないといえます。また、コストを考えると経済性もよくありません。そのため、一つの考え方として、毎日の交換になってしまうほど滲出液が多い場合は、ドレッシング材を使用せず、1日1回の創洗浄と軟膏処置に変更するという選択肢があります。

 そもそも滲出液が多い創は、その創傷自体がまだ炎症・感染のコントロールがついていない可能性があるため、抗菌作用と滲出液吸収作用のある軟膏(ポビドンヨード・シュガー:ユーパスタコーワ軟膏など、カデキソマー・ヨウ素:カデックス◇軟膏など)を使用するほうが安全な場合があります。

 なお、軟膏をガーゼに付けて使う場合は、ガーゼが滲出液を吸収しすぎて創を乾燥させ固着してしまうことがあるため、少ないガーゼに軟膏を多めにつける、非固着性のシリコンガーゼ(例:アダプティック(R))や非固着性のパッド(例:メロリン◇)を使うなど工夫が必要です。

POINT2 創の状態から考える

 滲出液量である程度ドレッシング材を選択できたら、今度は創の状態によって考えていきましょう。以下にポイントを解説します。

 発赤や水疱 → ポリウレタンフィルム
 
水疱が破れたら → ハイドロコロイド

 発赤や水疱が破れていない時期など、滲出液がまったくない場合は、吸収力がなく透明で観察が容易なポリウレタンフィルムが適しています。ただし、剥離刺激により悪化させる可能性があるため注意します。水疱が破れたときは、ハイドロコロイドに変更します。

 *びらん・潰瘍 → ハイドロコロイド、ポリウレタンフォームド

 浅い褥瘡であるびらん・潰瘍の場合は、ハイドロコロイドやポリウレタンフォームの使用を考えます。

memo 外用薬なら何を使う?

 褥瘡予防・管理ガイドラインではドレッシング材のほかに浅い褥瘡の外用薬(推奨度C1)を示しています。

外用薬種類

 *感染が疑われるとき → ハイドロファイバー(R)(アクアセル(R)Ag)

 ハイドロファイバー(R)の中でも銀イオンを含有した製品「アクアセル(R)Ag」は、銀イオンの抗菌効果により感染を引き起こす可能性の高い創傷に対して、治癒の促進が期待できます。

 *壊死組織があるとき → ハイドロジェル

 壊死組織の除去には、メスやハサミを使った外科的デブリードマン、主に外科的デブリードマンを行った後に残存している壊死組織を除去するのに実施されることが多い、酵素製剤による化学的デブリードマンがあります。

 ほかに、壊死組織に水分を供給し浸軟させ、自己融解を促す方法があり、ドレッシング材では、多くの水分を含んだハイドロジェルが自己融解に効果があります。外用薬ではスルファジアジン銀クリーム(ゲーベン(R)クリーム)が抗菌効果も合わせもつためよく使われています。

 なお、デブリードマン後の創には、止血効果のあるアルギン酸塩のドレッシング材を使用することもあります。

[memo 壊死組織を除去するための方法]

 壊死組織を除去する方法として、褥瘡予防・管理ガイドラインでは、外科的切除、外用薬の使用を第一選択とするが、渦流浴、気泡浴、交代浴など水治療法や電気刺激法を行うことを検討してもよいとしています。ほかにも近年、蛆うじ虫(ハエの幼虫)を利用してデブリードマンを行うマゴット療法もありますが、実施している施設は少ないようです。

 壊死組織が存在していて、滲出液が多い場合はデキストラノマー(デブリサン(R))、カデキソマー・ヨウ素(カデックス(R))などの吸水性ポリマービーズの使用がガイドラインで推奨されています。

 深さ・ポケットがあるとき → アルギン酸塩、ハイドロファイバー(R)、ポリウレタンフォーム(ハイドロサイト◇キャビティ)

 ポケットや深さがある創に対しては、平面ではなく、創内に充填できるドレッシング材が適しています。その特性から、ゲル状になるアルギン酸塩やハイドロファイバー(R)、空洞内に充填できる形状であるポリウレタンフォーム(ハイドロサイト◇キャビティ)などのドレッシング材が考えられます。中でもハイドロサイト◇キャビティは、筋・骨に至る深い創に適応しています。

POINT3 アレルギーの有無など禁忌項目を確認

 ドレッシング材の選択にはドレッシング材の添付文書の禁忌項目や注意事項を確認しましょう。

 特に最近ではアレルギーをもつ患者さんが増えています。例えば、カニ・エビなどの甲殻類の食物アレルギーがある場合、甲殻類の成分で構成されている「キチン」のドレッシング材を使用することはできません。同様に、金属アレルギーで特に銀に反応する場合は、抗菌作用のある銀イオンを含むドレッシング材の使用は禁忌となるので注意が必要です。

POINT4 患者さんのQOLを考える

 患者さんのQOLを考えた選択も忘れてはならないことです。処置時やドレッシング材の交換時に伴う刺激、スキントラブル、苦痛を少しでも軽減したいのであれば、創部接触面が刺激の少ないシリコンゲルのドレッシング材の使用を検討します。どんなドレッシング材でも皮膚障害を起こす場合、薬剤への切り替えを選択することも考えなくてはなりません。

 また局所的な面だけではなく、例えば緩和ケアなどターミナル期では、患者さんの意思やQOLを大事にしたドレッシング材の選択を優先します。

[memo ターミナル期の患者さん]

 体中が痛くて寝返りすらできない、触られたくないと訴えるターミナル期の患者さんの場合、軟膏使用による毎日のガーゼ交換や創の洗浄などのケアは苦痛でしかなく、患者さんのQOLを損ねることにつながります。吸収力のあるドレッシング材に変更し、交換回数を少なくするなど、患者さんの苦痛を取り除く視点を忘れてはいけません。

POINT5 経済性を考える

 ドレッシング材は保険償還上、最長3週間しか算定できません。決して安価なものではありませんので、早期から使用するのではなく、ドレッシング材が最大の効果を発揮する時期を考えて使用することも必要です。

 特にDPCを導入している病院では、入院時は一連の診療行為として包括されます。そのため、頻回にドレッシング材の交換が必要な場合は、コストがかさんでしまいます。そこで経済性からの選び方も必要です。

 例えばハイドロコロイドでは、3日ごとに交換しなければならない滲出液の量の場合、創の状態のアセスメントを確実に行うことを前提に、1週間貼っておくことのできる高吸収性のポリウレタンフォームを使用したほうが低コストになります。

(ナース専科「マガジン」2010年6月号より転載)

※次回は各ドレッシング材の特徴について紹介していきます。

イラスト/東 いずみ

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