【連載】看護師のための経腸栄養講座

第13回 胃瘻の管理と合併症

監修 日本コヴィディエン株式会社

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【目次】


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経腸栄養(経管栄養)とは|種類・手順・看護のポイント


1、胃瘻の管理

1)胃瘻造設後の管理

 術後の胃瘻の管理は以下のように行います。

1.当日は体外ストッパーを皮膚から約5~10mmの位置に固定し、皮膚を直接圧迫しないようにし、厚めのガーゼを間に挟む。翌日はガーゼを取り除き、消毒もしくは洗浄し、ガーゼを入れる。
2.術後1週間までは、[1]毎日の瘻孔を観察し、[2]瘻孔周囲の消毒、洗浄(1日1回、1週間)、[3]カテーテルの回転、皮膚とチューブストッパーに多少ゆるみをもたせる、などの管理を行なう。
3.術後1週間以降のガーゼ保護は不要で、浸出液や液漏れがないことを確認する。周囲皮膚を清潔に保ち、石鹸と微温湯でスキンケアを行なう。
4.シャワーは1週間後を、入浴は2,3週間後を目安に開始する。

 術後の抗生剤の投与に関しては、Pull,Push法の場合は術直前および術後3日ほどの抗生剤投与をします。Introducer法およびその変法(セルジンガー、ダイレクト法)は、術前単回投与でよいとされます。

 術後の栄養剤の投与方法は以下のように行います。

1.原則的にPEG当日は絶飲食とし、必要な内服薬のみ胃瘻から投与する。
2.PEG後1-3日目位から始め、少ない量から徐々に多くしていく。
3.術前に経鼻胃管から十分な経腸栄養が施行されていた症例では、術後1日目より通常濃度の経腸栄養剤を維持量の1/3程度から開始する。
4.術前2-4週間の長期に消化管が使われていない場合は、栄養剤の注入に注意を要する。糖液や希釈した栄養剤で開始する、ポンプでの少量持続投与の速度をゆっくり上げていくなどの工夫が必要である。
5.維持期の栄養剤のカロリーは25~30kcal/kgとし、定期的に、体重、アルブミンなどの栄養評価を行い、維持期の必要エネルギー量、水分量を調節するようにする。

2)胃瘻カテーテルの管理

 胃瘻カテーテルの管理に関しては以下のように行います。

1.胃瘻カテーテルの外部バンパー(ストッパー)には1-2cmの多少のゆとりをもたせ、バンパーやバルーンが胃瘻周囲の胃壁を圧迫しないようにする
2.1日1回程度、カテーテルを回転させ、適度なゆるみがあることを確かめる
3.カテーテルは皮膚に対して直角であるようにし、瘻孔に負担にならないようにするのが原則である
4.瘻孔周囲のスキンケアは、ぬるま湯を湿らせたガーゼや布で汚れをふき取り、水で洗浄する。消毒する必要はない
5.バルーン型の場合、中の水は自然に減少していくため、1-2週に1回は水の量を確認し交換する。入れる水は蒸留水とし、生理的食塩水や水道水では詰まることがあるので、注意を要する
6.チューブ型の場合は、清潔を保持する目的で、栄養剤注入後、微温湯でフラッシュしたり、クリーニングブラシで洗浄する

 チューブ型の清潔を保つ目的で、在宅を中心に酢水がひろく使用されています。酢酸の抗菌効果を利用して清潔を保持する方法です。

 酢酸水の作り方は食用酢:水を1:9として作製します。栄養剤投与後、水道水でフラッシュの後、酢酸水をカテーテルに注入し、クランプして、酢酸水をカテーテル内に満たしたままにしておきます。次回の栄養剤注入までこの状態にしておくようにします。胃瘻からの少量の浸出液がある場合は、胃瘻カテーテルの根元にティッシュで作ったこよりを結んでおくという「ティッシュこより」が在宅を中心に使用されています。

3)胃瘻カテーテルの交換

 カテーテルの交換時期に関しては以下のようになります。

1.バンパー型は4~6ヶ月で交換(交換後4ヶ月以上で保険適応)
2.バルン型は1~2ヶ月で交換(交換後24時間以上で保険適応)
3.長期留置はカテーテルの汚染、変形、破損などの原因となる可能性がある

 交換方法とその確認方法を以下に示します。

1.バルン型はバンパー型に比較して交換が容易である
2.バルン型は、バルーンを虚脱させて抜去し、新しいカテーテルを挿入する
3.バンパー型は通常は用手的(無理抜き法)でカテーテルを抜去し、オブチュレータ(伸展器)でバンパーを伸展させて胃内に挿入する
4.内視鏡を用いて、交換を行った方が安全である場合は、[1]初回の交換の場合、[2]胃瘻カテーテルが斜めに刺入され瘻孔が長い場合、[3]極端な肥満で瘻孔が長い場合、[4]全身状態が悪く瘻孔が脆弱化していると考えられる場合など
5.カテーテル交換時に最も注意すべきは、瘻孔損傷に伴うカテーテルの腹腔内誤挿入である。気がつかず栄養剤を注入すると、腹膜炎、敗血症に至り、死亡する可能性もある
6.確認法は、病院であれば、造影剤によるレントゲンでの確認が可能である

 在宅でのカテーテル交換時の確認法を述べます。在宅では、胃液の逆流や注入した栄養剤の逆流などで確認しますが、胃液の逆流が見られないこともあり、確実な方法とはいえません。

 在宅でも可能な確認法として、青い色素を注入しておいて、交換後に色素の流出を確認する、鈴木の提案する「スカイブルー法」、ポータブルの細径気管支ファイバーを交換後胃瘻カテーテルから挿入し、先端が胃内にあることを確認する、「気管支ファイバー確認法」などがあります。

2、合併症とその対応

1)創感染

 施行後1-2週間以内に認められます。抗生剤の短期間投与と局所の創洗浄で制御できる軽症のものが多いです。カテーテル留置周囲の広い範囲に炎症が及んだ場合は、腹壁の蜂窩織炎を伴います。その場合はCT検査で、腹壁、腹腔内の膿瘍をチェックし、切開・排膿、ドレナージを試みます。

 Pull / Push法でPEG施行した場合は、カテーテルが口腔内を通過するため、MRSAなどの感染を有する症例では、創感染のリスクが高くなります。創感染のリスクを軽減させるためには、[1]PEG前の口腔内洗浄や清拭を確実に行う、[2]オーバーチューブの付いた感染防止タイプのPull法PEGキットを用いる、[3]Introducer法、またはその変法(セルジンガー、ダイレクト法)で行う、[4]術後ストッパーをきつくして腹壁を圧迫すると、局所に虚血を生じ、感染が起こりやすくなるので、ストッパーに余裕を持たせる、などがあります。

2)カテーテルの事故(自己)抜去

 瘻孔が完成する3-4週間以前に、カテーテルの事故(自己)抜去、自然抜去が起こった場合には、腹膜炎などの重篤な合併症がおこる可能性があります。胃壁腹壁固定を行うことで、抜去時の腹膜炎発生のリスクを軽減できます。そのため、Pull/Push法でも胃壁腹壁固定を行うケースが増えています。

 瘻孔完成後の事故(自己)抜去時には、瘻孔が塞がらないように、直ちに「瘻孔確保」を行います。新しいカテーテルを用意しておくか、抜けたカテーテルや尿道カテーテル、吸痰用カテーテルなどを仮に挿入しておき、医療機関に連絡することを勧めます。

3)栄養剤の漏れ

 瘻孔が拡大して、カテーテルのわきから栄養剤が漏れる合併症です。対処方法は、[1]栄養剤の半固形化、[2]カテーテルをいったん抜去し、瘻孔の縮小を待って、再挿入する、などがあります。カテーテルの太さのサイズアップや、瘻孔をストッパーで締め付ける、などは、かえって瘻孔を大きくし、逆効果となることがあります。

4)バンパー埋没症候群(buried bumper syndrome)

 胃瘻カテーテルのバンパーが胃粘膜内に食い込んで、埋没する合併症です。カテーテルが引っ張られていると、胃内のバンパーが胃粘膜を圧迫し、圧迫壊死・潰瘍形成がおこり、胃潰瘍の修復過程において、バンパーごと胃粘膜に覆われてしまいます。そして、胃瘻カテーテルが浮き上がって、固定されたようになり、栄養剤が入らなくなります。バンパー埋没症候群になってしまった場合は、抜去して、胃瘻を作り直す必要があります。

 予防法はカテーテルに余裕を持たせて、引っ張られないようにすることです。カテーテルを時々回転させるなどに注意を払う必要があります。

バンパー埋没症候群の症例
(図1)バンパー埋没症候群の症例 バンパー埋没症候群の内視鏡所見:矢印の所に埋もれたバンパーが僅かに見える

カテーテルの状態の写真
カテーテルは浮いたようになり固定して、動かない

バルーン埋没症候群説明図
バルーン埋没症候群

5)ボールバルブ症候群

 バルーンでチューブ型のカテーテルの先端野バルーンが胃の蠕動運動により幽門から十二指腸に排出され、十二指腸にはまりこんでしまう状態をいいます。十二指腸が閉塞して、幽門狭窄と同様の症状を呈することになります。症状は繰り返す胃液の嘔吐です。外部のストッパーのないカテーテルや外部ストッパーが緩んでずれた場合に起こります。

 治療は、バルーンの水を抜いて、胃内にバルーンを引き戻してから、再度バルーンを膨らませ、外部ストッパーの位置を調節して固定します。

ボールパルプ症候群の図
(図3)ボールバルブ症候群

6)胃潰瘍・出血

 術後長期における胃からの出血は、内部ストッパー(バンパー)の胃粘膜に対する慢性的機械的圧迫による胃潰瘍形成によるものが多くなります。診断と治療目的で、内視鏡を行い確認し、止血をします。その後は、胃粘膜に圧迫のかからないカテーテルに変更する必要があります。

7)嘔吐、胃食道逆流、誤嚥性肺炎

 胃瘻栄養の最も重要かつ重症な合併症は、胃食道逆流・嘔吐に起因する誤嚥性肺炎です。予防対策を以下に挙げます。

1.栄養剤の胃から十二指腸への排出を促進  体位は大切で、少なくとも30~45度以上に上半身を挙上する。栄養剤注入前に胃内容を吸引する。また、消化管運動機能を改善させる薬剤(クエン酸モサプリド、エリスロマイシンなど)の投与を試みる、などがある。

2.注入ポンプの使用
 いっぺんに大量の栄養剤を胃内に注入すると食道への逆流がおこるため、経腸栄養用の注入ポンプを用いて、栄養剤を少量持続で投与して逆流を防ぐことが可能である。
 
3.経腸栄養剤の工夫(半固形化栄養剤)  経腸栄養剤のゲル化や粘度を増強させることによって、胃食道逆流を防止する方法である。

4.経腸栄養チューブの先端の位置を幽門後におく(経胃瘻的空腸瘻)  幽門輪を越えて、十二指腸、空腸への栄養剤の注入は、食道にまで逆流を示すことはほとんどない。経腸栄養チューブ先端を十二指腸、空腸におくことで、逆流を防ぐ方法である。

参考文献

1)丸山道生編、経腸栄養バイブル、日本医事新報社、東京、2007
2)小川滋彦著、PEGパーフェクトガイド、Nursing Mook 33、学習研究社、東京、2006
3)西山順博著、胃瘻ケア・はじめの一歩、秀和システム、東京、2010

さらに詳しく知りたい人は、PEGドクターズネットワークのホームページより、PDNレクチャーを参考にしてください。

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