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【連載】看護師のための輸液講座

第8回 側注とは?安全な側注方法は?

監修 日本コヴィディエン株式会社

シングルユース医療機器の製造及び販売、並びにこれらに関連する一切の事業

執筆 井上善文

医療法人川崎病院 外科 統括部長

安全な側注方法は?

輸液管理において、日常、あまり深く考えずに実施されているのが中心静脈ラインでの側注です。一応、CVCラインに三方活栓を組み込んでワンショット静注をすると感染しやすい、ということは頭では理解できているはずなのです。しかし、実際の現場では・・・大丈夫、私の手技で感染させることなんてありえない、と思っている方が大部分なのです。だって、細菌は目に見えませんから。
そこで、安全な側注方法ってあるの?という疑問が出てきます。あるのなら、それをやりたい・・・ですよね。 本題に入って結論を述べる前に、側注は、できるだけ行わないようにするほうがいい、側注を行うことは感染の機会を増やす、ということを、まず、理解していただきたいと思います。もちろん、平成18 年度 厚生労働科学研究費補助金事業で作成された「医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き」(武澤 純:名古屋大学大学院医学系研究科救急・集中治療医学、ほか)では、表1のように記載されています。

ガイドライン

しかし、本当に申し訳ないのですが、この『手引き』のカテーテル管理部門を担当させていただいたのは私なのですが、正直言いますと、「カテーテル関連血流感染対策ガイドライン第2版」の『輸液ラインを多目的に使用することは避ける』『三方活栓は手術室やICU以外では、輸液ラインに組み込まない方がよい』という表現の方が好きなんです。
とにかく、CVCラインから側注(特に三方活栓を用いて:図1)を行うことは、感染の危険を高める、ということを、まずは理解してください。

三方活栓を用いた側注
図1:三方活栓を用いた側注、特にワンショット静注は、感染を起こす危険性が高いと認識することが重要。

この側注方法については、状態が安定していてTPNだけを行っている場合と、重症症例でダブルあるいはトリプルルーメンカテーテルが入っている場合に分けて考えるべきでしょう。

TPNだけを行っている場合

状態が安定している症例でCVCを用いてTPNを行っている場合、側注する必要があるのは、脂肪乳剤を投与する場合や、他の電解質輸液を投与する場合です。もちろん、急に状態が悪くなってさまざまな薬剤や輸液を投与する場合もあるでしょうが。
私の施設では、通常、CVCラインには三方活栓は組み込んでいません。しかし、CVCラインには側注用Y字管があらかじめ組み込まれています(図2)

三方活栓と側注用Y字管について
図2

輸液ラインにあらかじめ側注用Y字管を組み込んでおき、これを介して側注用輸液ラインを接続したり、ワンショット静注を行う方が感染の危険性は低い。
従って、側注を行う場合には、側注用Y字管から、I-systemを用いて行います。側注用Y字管のゴム部分を消毒用エタノールで消毒し、I-setを用いて側注ラインを接続します。但し、短時間で投与する場合(抗生物質の朝と夕のスポットでの投与など)には、輸液ラインの先端に翼状針を接続し、ゴム栓に刺入しています。24時間持続の場合にはI-setで接続します。単味の電解質輸液を側注で投与する場合には、フィルター付輸液ラインは用いません。フィルターが組み込まれていない輸液ラインは、通常100円前後ですので、毎日交換すべきだと思います。外科病棟での側注は、ほとんどが単味の電解質輸液か、抗生物質等です。I-systemを使っていない場合や、いわゆるクローズドシステムを用いていない場合も、できたら三方活栓は使わず、側注用Y字管で対処したいものです。ワンショット静注も、側注用Y字管で行うことができますし、スポット点滴も、側注用の輸液ラインの先端に翼状針をつけて行うことが可能です(図3)。

スポット点滴手順
図3

スポット点滴の場合は、輸液ラインの先端に翼状針を接続し、
側注用Y字管に刺入して行う。固定に注意!

針刺しのリスクの低減

側注用Y字管から注射針を用いてワンショット静注をやると、針刺しというリスクが伴うではないか、と叱られそうです。この問題は、あちこちに記載させていただいていますが、リキャップという問題の前に、なぜ現在のような1インチ以上の長い針を使っているのですか?という疑問で対応させていただきたいと思います。世の中には1.3cmの短い針があるのです(図4)。

針の種類
図4

意外と知られていないのが、短い針の存在。当科では、側注する場合などには1.3cmの長さの針を用いている。現在使われている長い針について、なぜ、こんな長い針を使っているのだろうか、と考えてみてください。
一度使ってみてください。針刺しのリスクが急に下がります。
短い針に慣れると、長い針を使うことがこわくなりますから(図5)。

長い針と短い針の写真
図5

長い針(通常用いられている針)での側注は、短い針での側注に比べると針刺しのリスクが高い。側注は短い針で行う方がはるかに安全である。
TPNではなく、化学療法を行っている場合も同じように考えてみてください。

集中治療の場での側注方法

集中治療が必要な場合には三方活栓も用います(図6)。

集中治療の場での側注方法
図6

重症症例では三方活栓を用いないと管理できない、と言うが、これでは、感染させようとしている、としか思えない。このような輸液ラインの管理では、すぐに感染する、という認識をもつことも重要である。
この場合、当科ではすべての接続部をI-systemとしています。三方活栓のすべての脚にはI-plugを装着し、完全なclosedの状態を保つようにしています。従いまして、カテコラミンなどを側注する場合もI-plugにI-setを用いて接続するようにしています。三連式のI-plugも用いています(図7)。

三連式のI-plug
図7

多種類の輸液・薬剤を投与する必要がある場合、当科ではこのような三連式のI-plugを用いている。
もちろん、接続部の消毒は消毒用アルコールを用いて厳重に行うように心がけています。酒精綿で拭うだけでは不十分で、消毒する、という意識が重要だと思っています。
最近数多く発売となっているクローズドシステムもきちんと使えば、いい感染対策になります

三連式のI-plug②

重要なことは、クローズドシステムを使えば感染しない、という考え方を捨てることです。輸液ラインを新しく接続する場合には、特にメス側を厳重に消毒する必要がある、という意識をもって管理する必要があります。とにかく、クローズドシステムを使えば安心して側注できる、と考えてしまうことが問題です。クローズドシステムを過信しないようにしてください。
また、ワンショット静注を行う必要がある場合や、さまざまな輸液・薬剤を投与する場合は、末梢静脈ラインをうまく利用することが重要です。CVCラインを感染させずに管理するために、末梢静脈ラインを使う、これが一つのコツです。

脂肪乳剤の側注方法

脂肪乳剤の投与方法ですが、当科ではほとんどの場合、CVCラインから側注しています(図9)。

側注用Y字管から脂肪乳剤を投与している写真
図9

TPNラインはフィルター付き輸液ラインで、側注用Y字管から脂肪乳剤を投与している。
側注用Y字管のゴム栓を消毒用エタノールで消毒し、輸液ラインの先端に翼状針を接続して投与します。この場合、TPN輸液と平行して投与しますが、脂肪乳剤の投与が終了すれば20mLの生理食塩水でフラッシュしています。また、脂肪乳剤は、生体の代謝速度を考慮すればできるだけゆっくりと投与することが肝要で、20%脂肪乳剤の場合には25mL/時よりゆっくりと投与するようにしています。100mLの場合には、約4時間で投与できますので、投与後も輸液ラインを接続したままにはせず、投与が終了すれば輸液ラインは廃棄することにしています。

側注として輸血を行ってもいいのか?

輸血をCVCラインから側注として行うか?という問題ですが、原則として行いません。ほとんどの場合、末梢静脈ラインを新たに作成して投与します。しかし、どうしても末梢静脈ラインが作成できない症例の場合、やむをえずCVCラインから投与することはあります。ただし、TPNが行われている場合には絶対に、平行して投与してはいけません(図10)。

TPNと輸血について
図10

TPNラインに側注の形で輸血をしてしまった。TPNラインに血液が逆流し、大変なことになっている。この方法での輸血はやるべきではない。輸血は、やっぱり、末梢ルートからやるべきである。
その理由は、TPN輸液の浸透圧が高いので、平行して濃厚赤血球などを投与すると、赤血球が溶血してしまうからです。この場合には、あらかじめ生理食塩水でカテーテル内をフラッシュしてTPN輸液がない状態としてから投与する必要があります。もちろん、CVCラインに三方活栓は用いず、側注用Y字管に翼状針を刺入して投与します。また、輸血が終われば側注用Y字管から生理食塩水で血液をフラッシュしておくことも重要です。
これとは逆に、CVCラインから採血するという施設もあるようですが、特別な場合を除き、CVCラインからの採血は行うべきではありません。CVCラインからの採血は禁止としておくべきです。但し、輸血や採血も行うことを目的として開発されたカテーテルもあります。Hickmanダブルルーメンカテーテルです。2つの腔のうち、一方は輸液投与に用い、他の腔は輸血および採血に用います。もちろん清潔操作が重要であることはいうまでもありません。特に、血液疾患などに対する強力な化学療法施行時や骨髄移植時に用いるために開発されたカテーテルです。このカテーテルおよび管理方法については、私が論文(井上善文、ほか:悪性腫瘍化学療法施行時の輸液管理法竏辿ickman's dual lumen catheterおよびI-systemの有用性について竏秩B日本癌治療学会雑誌 26巻7号1380-1388、1991)にしていますので参考にしてください。但し、集中治療を行う症例に対する適応はないと考えています。

どうしても三方活栓を用いて側注したい場合は

さて、CVCラインに三方活栓を組み込んでいる施設で、側注を行う場合ですが、できるだけ側注用輸液ラインは交換しない方がいいといえます。側注する輸液の汚染や側注ラインの汚染よりも、三方活栓との接続部での汚染の危険性の方が高いと考えられるからです。
また、あらかじめ側注することがわかっていて、三方活栓を輸液ラインに組み込む時は、CVCラインの輸液ラインに輸液を満たさない状態で輸液ラインを接続してしまうという方法を採用すべきです。輸液ラインや三方活栓をパッケージから出して、できるだけすばやく、接続部に絶対に触れないように接続してしまうことが重要です。この状態であれば、輸液ラインの内腔は清潔状態ですし、接続操作を行わなければ、微生物は輸液ライン内に混入できないからです。ここが結構重要です。輸液を満たした状態で側注ラインを接続することに問題があると考えています。
この場合でもワンショット静注は三方活栓からはやらない方がいいと思います。側注用Y字管を組み込んでおいたら、安全に側注ができます。

とにかく、側注はできるだけ行わない方がよい

いずれにせよ、側注という操作は、輸液ライン内へ微生物が混入する機会を作ってしまうことになる、そう考えながら厳重な無菌管理を心がけることが重要です。心がけるだけで、汚染の機会はずいぶん減ると思いますので。
一番重要なことは、側注はできるだけ行わないようにすることですが。

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