【連載】看護師のための輸液講座

第13回 totally implantable central venous access port:ポートについて

監修 日本コヴィディエン株式会社

シングルユース医療機器の製造及び販売、並びにこれらに関連する一切の事業

執筆 井上善文

医療法人川崎病院 外科 統括部長

在宅静脈栄養や化学療法施行のために、ポートが非常によく用いられるようになってきています。それに伴って、さまざまな合併症の発生件数が増えています。特に化学療法を施行するためのポートにおいて合併症が多いようです。要するに、ポートのことを深く理解することなく、便利だから、という理由で見よう見まねで使っている方が多いから、こういう問題が行っているのです。そこで、今回は、ポートについて、基本的な事柄から解説することにします。


【目次】


ポートとは?

まず、ポート、ポート、と軽いタッチでこの用語を使っておられるようですが、正式な用語を知ってからこのポートという略語を使っておられるのでしょうか?英語ではタイトルに示しているように、totally implantable central venous access portで、完全埋め込み式中心静脈ポートという日本語が適しているように思います。かつては、totally implantable subcutaneous infusion portという英語が使われていたようです。日本語では、すべてを省略して『ポート』と呼ばれるようになってきました。これもかつては、『リザーバー』と呼ばれていたのです。
ここで考えておかなくてはならないのは、この器具は、カテーテルとポートから構成されているということです。

ポートの構成

それなのにポートだけが名称として用いられていますので、使い分けが難しいことに注意が必要です。いつも気になっているのですが、カテーテルは『入れる、挿入する』のですが、ポート部分は『埋め込む』のです。不要になったり合併症が起こったりした場合は、カテーテルを『抜く、抜去する』のですが、ポートは『取り出す、摘出する』のです。こういうしょうもないことで、日本語にうるさい私はいつも悩むのです。 断面を図2に示しますが、すべて英語を日本語に訳すと、変な訳になってしまうように思います。とりあえず、カテーテルとポートから構成されていて、シリコーンゴムで作られた針を刺す部分はセプタムと呼ぶようにした方がいいと思います。内腔はinterior chamber と呼ばれますが、ま、内室と訳しましょうか?カテーテルとポートとセプタムくらいは知っておいたほうがいいと思います。

ポートの断面

問題はセプタムです。シリコーンゴムで作られているのですが、ここを針で刺して先端を内室まで到達させて、輸液や薬剤を投与するのです。針で刺す時、シリコーンゴムが削られます。繰り返し針を刺すことによってシリコーンゴムが少しずつ削られて、最終的には穴があいてしまいます。これがこのポートの寿命、ということになります。ですから、シリコーンゴムを削る量ができるだけ少ない針を使う必要があります。それがHuber針(図3)と呼ばれる針で、ゴムを削る量が少ないような構造になっています。特殊な針ですので値段は普通の針よりもはるかに高いのですが、できるだけ長期間留置したいのがこのポートですから、高価でもHuber針を使わなくてはならないのです。

Huber針

ポートの適応

ポートは便利な器具です。必要な時に針を刺して輸液や薬剤を投与することができますし、へパリンロックをしておけば1ヶ月程度は何もしなくても閉塞しません。使っていない時には、入浴することもできますし、ポートが入っていることをほとんど気にせずに生活することができます。本当、便利です。
しかし、この便利であるということが実は、大きな問題を起こす危険はらんでいることを考えておいて欲しいのです。

ポートの適応は、長期間、輸液や薬剤を投与する症例のすべて、ということになります。高カロリー輸液、化学療法、抗生物質などを長期間投与する場合が適応になります。病態が安定していない場合や、患者や家族・介護者に管理能力がない場合は、適応外とするべきであると言われています。また、本邦では在宅医療、即、ポート、と短絡的に考えられていますが、実は、24時間持続投与が必要な場合は、体外式長期留置用カテーテルである、Broviac catheter(図4)やHickman catheterの方が適応となる場合があることも知っておいて欲しいと思います。

Broviac catheter

ポートの合併症

ポートは便利である、それだけの理由で選択すべきではない、さまざまな重篤な合併症が発生するリスクがある、ということを強調しておきます。また、合併症に関する知識を十分に持っていれば、予防することができます。重要なことは、こういう合併症があるのだ、ということを知っておくことです。さらに、何のためにポートを使うのか、それを明確にしておくことも重要です。

なんといっても、最も重要な合併症です。ポートは感染しない、と考えておられる方もいると思いますが、それは間違いです。ポートも感染します。輸液や薬剤が汚染している場合、輸液ラインに三方活栓を組み込んで安易に側注を行う場合、輸液ラインの接続部の管理がいい加減にしか行われていない場合、さまざまな場合に感染します。もちろん、ポートを留置する手技自体、手術ですので、留置してすぐに感染してしまうこともあります。Huber針がうまく刺入できなかったり、皮下に輸液してしまったり、長期間針を留置して針の周囲に炎症が起こって感染する、などの危険性もあります。原則として、ポートは間歇的に用いるべきで、長期間針を留置して管理することは感染の危険性を高めることになります。もう一点、非常に重要なことなのですが、ポートから高カロリー輸液を投与すると、通常の電解質輸液より感染しやすいことも知っておいてください。もちろん、感染しやすくてもポートを用いた高カロリー輸液を行うメリットがあるから実施しているのであって、感染対策をきっちりと行うことによって感染率を極めて低いものにすることができます。 感染してしまったらポートは抜去・摘出しなければなりません。局所麻酔下に切開してポートを取りだす必要があります。こういう小手術をしなければならない、ということでポートの抜去・摘出が遅れて感染が重篤化してしまうこともありますので注意が必要です。ただ、抗生物質ロックでCRBSIを治療するということも行われております(文献:Mermel LA, Farr BM, Sherertz RJ, et al: Guidelines for the management of intravascular catheter-related infections. J Intraven Nurs)。しかしこの治療が奏効しない場合、感染を重篤化させることになりますので、きちんとした情報・知識をもって実施しなければならないことも知っておいて欲しいと思います。

カテーテルの自然断裂(spontaneous catheter fracture)

この日本語よりもピンチオフ(pinch-off)という用語の方が有名になっています。要するに、鎖骨下穿刺でポートのカテーテルを挿入した場合、鎖骨と第一肋骨の間でカテーテルが圧迫されて、切れてしまう、と言う意味です。鎖骨と第一肋骨の間でカテーテルが圧迫されている現象がピンチオフサインと呼ばれているのです。

ピンチオフサイン

このサインがあれば、そのうちにカテーテルが自然に切れてしまう可能性があります。この合併症を日本で最初に報告したのは私で、もう20年以上前のことです。予防対策としては、できるだけ外側で鎖骨下穿刺を行うことが言われておりますが、私は、原則として、ポートは鎖骨下穿刺では挿入しないことにしています。橈側皮静脈や外頚静脈を切開して挿入しています(腕からの挿入方法については、後日、ということにしてください)。

カテーテル閉塞

カテーテル内に血液が逆流して凝固して閉塞する、という場合もあります。これは、注意すれば防ぐことができます。輸液ラインの管理にも注意する必要があります。一番困っているカテーテル閉塞の原因は、脂肪乳剤の投与に関連したものです。脂肪乳剤と電解質、カテーテル内に逆血した血液などが複雑に関連してカテーテルが閉塞してしまうことがあります。

脂肪乳剤に関連したポートの閉塞

これを予防するために脂肪乳剤投与後には生理食塩水で積極的にポート内を洗浄する、ということを行うようにしていますが、この方法は完璧な対策とはなっていません。従って、この問題のために脂肪乳剤の投与が控え目になってしまうことがあります。原則として、少なくとも週2回は20%脂肪乳剤を100mLは投与する、ということにしておりますが、閉塞という問題には常に気をつけておく必要があります。

ポート留置部分の皮膚壊死

ある程度の期間が過ぎると、ポート留置部分の皮下組織が薄くなり、皮膚の直下にポートが存在する、ということになってきます。

長期留置

こういう状態では、特に、皮膚の管理に気をつける必要があります。できるだけ同じ部分に針を刺さない、針を刺す部分を移動させる、針を刺している期間を短くする、などの対策が必要です。皮膚および皮下ポケットに感染した場合(図8)は、ポートを摘出する必要があります。異物があれば感染を治癒させることはほとんど不可能ですから。

ポート留意部皮膚

カテーテル先端位置の移動とextravasation of fluids

ポート留置時にはカテーテル先端位置が適正であっても、なんらかの原因でカテーテル先端が移動することがあります。上大静脈ではなく、内頚静脈などに移動した場合、気づかずに高浸透圧、高刺激性の輸液や薬剤を投与していると、これらの輸液や薬剤が漏出する、extravasation of fluidsという現象が起きることがあります。頚部の腫脹などの症状が出現します。

extravasation of fluids

定期的に胸部レントゲン写真を撮影してカテーテル先端位置を確認しておく必要があります。

ポートを安全に使用するためのコツ

ポートは便利である、という理由で使う方が多いのです。もちろん、これもポートを使う一つの理由とすることが『ダメ』、というつもりはありません。ポートを熟知して、安全な、合併症を起こさない管理をすることによってポートの特性を十分に生かしていただきたい、これが私の言いたいことです。

(1) 持続投与が必要な症例にはBroviac catheterやHickman catheterの方が有利かもしれません。
(2) 針は必ずHuber針を使用してください。できたら針は毎日刺し換えてください。
(3) 輸液ラインは一体型を用い(図10)、三方活栓は組み込まない、インラインフィルターを使用する、ニードルレスシステムを過信しない、などの注意をしてください。
(4) 定期的に胸部レントゲン写真を撮影してカテーテル先端位置をチェックしてください。
(5) 感染が疑われたらカテーテルからの逆血培養などで早期に診断し、早期に対処してください。ポートの抜去・摘出が遅れると、感染が重篤化してしまう危険性があります。
(6) とにかく、絶対に感染させない、という慎重な管理をお願いします。
(7) 鎖骨下穿刺でカテーテルを挿入する場合にはピンチオフサインを見逃さないようにしてください。

ポート用一体型輸液ライン

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