【連載】看護師のための輸液講座

第16回 末梢静脈栄養法PPNと末梢静脈輸液

監修 日本コヴィディエン株式会社

シングルユース医療機器の製造及び販売、並びにこれらに関連する一切の事業

執筆 井上善文

医療法人川崎病院 外科 統括部長

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末梢静脈へのカテーテル(カニューラ、留置針)挿入は、ナースが行う施設が増えてきました。となると、末梢静脈輸液のほとんどの管理はナースが行う、ということです。末梢静脈への輸液(栄養)でもカテーテル敗血症になるし、針刺し(事故)の問題もあるし、穿刺時の神経損傷の問題もあるし、本当、安易に「点滴しましょう」なんて言えない時代になっているのかもしれません。
実は、アメリカにはIVナースという制度を持っている施設が増えていて、院内のすべての末梢静脈留置針も挿入しているとのことです。以前説明した、PICC(末梢挿入式中心静脈カテーテル)の挿入もナースがやっている施設があります。実際、エコーガイド下上腕PICC法をアメリカに見学に行った時、手技を教えてくれたのはシンシナチのChrist病院のIVナースだったのです。Christ病院にはIVセンターがあり23人のナースが所属して、24時間体制で末梢静脈留置針も挿入していました。
今回の内容は、その穿刺手技だけの解説ではありません。輸液内容も考えましょう、という内容です。

末梢静脈へのカテーテル挿入

自分が患者になって、採血だけではなくて末梢静脈に留置針を挿入された経験から言うと、スムースに挿入できなくて、皮下などで「探る」という操作をされると、無茶苦茶痛い!これは間違いありません。できたら、一発でスムースに挿入して欲しいものです。本当、皮下で針を動かされると、かなり痛いのです。これは、はっきり言うと、やられた人でないとわかりません。

一発で入れていただくと、「チクッ」ですみますが、なかなか入らないと、「痛い、まだ入らんのか、下手なんと違うか、痛い、本当に痛いぞ、ええ加減にして、早く入れて、ダメなら誰かうまい人に代わって・・・」などと思いながらがまんすることになります。 「私が下手なんじゃないですよ。あなたの血管が細い、出てない、見えない、触れない、からです。私のせいではありません、あなたのせいです」とナースは思っているのかもしれませんが。あ、失礼。
ほとんどのナースは、「痛い?ごめんなさいね」とやさしく思ってくれているはずですよね。さらに、2回も失敗すると患者さんも怒り出す。右手でダメなら左手で、と思っても、もうイヤと拒否する患者さんもいる。「私が苦労しているのは誰のため?あなたのためでしょう?それなのにイヤ?どうしよう。こんな静脈が見えにくい患者さんに末梢点滴の指示を出す井上先生が悪いのよね。自分で入れりゃあいいのに。」と、最後は主治医のせいにしてしまう?

挿入部位は、最近は、神経損傷を避ける部位にしなさい、ということが言われるようになってきています。私自身は末梢静脈留置針の挿入で神経損傷が問題になった経験はありませんが、針を刺された場所がいつまでも痛い、なんということでも訴訟になり、病院が負けるようになってきていますので注意すべきことであることは間違いありません。
どこに留置したら神経損傷が避けられるのかは、成書を参考にしてください。私が言えるのは、よく見える血管に一発で挿入することが一番大事です、ということくらいでしょうか。確かに、皮下を針で「探る」という操作はよくないのではないかと思います。 私は、第一選択は上肢、前腕、手首と肘にかからない橈側皮静脈である、と習ってきました。この部位で挿入しにくい場合は、前腕の手首あたりの橈側皮静脈を選択することが多いですね。やむを得ず足に静脈留置針を挿入することがありますが、できたら避けたい部位です。

大事なことは、挿入しやすい血管を見つける努力かもしれません。もちろん、努力しても挿入しやすい血管が見つからない方もおられますけど。

自分への針刺しも重要な問題です(第15回の針についての記事を見ていただきましたか?最初の図では本当に自分の指を針で刺して写真を撮影しました。これこそプロです?)。
これに関しては、最近は「針刺し防止機構」が備わっている留置針が使えるようになっていますので、使い方を熟知して慣れれば、針刺しが起こる確率は非常に低くなっています。「猿が使っても針刺しが起こりません」なんていう高度な?「針刺し防止機構」が備わっている留置針もあるようです(この話をするとナース達は非常に喜ぶそうです。私も講演でこのネタをよく使います。もちろん私は皮肉っているのです。『あなた達のレベルは猿と同等?』という失礼な話なのですけど。申し訳ありません)。
留置針の固定方法などは、私が説明するまでもありません。看護雑誌の特集などを見てください。

末梢静脈輸液と末梢静脈栄養

こんな話は、あまり聞いたことがないかと思いますが、輸液内容によって管理が異なる、ということを説明したいのです。
末梢静脈栄養は、peripheral parenteral nutrition、PPNと呼ばれることが多いので、覚えておいてください。末梢静脈輸液はどう呼ばれるか?知りません。単に「点滴」?でしょうか。両者の違いは何かというと、アミノ酸輸液が入るかどうか、だと思います。脂肪が入るかどうかも輸液と栄養の違いになるかと思いますが、栄養について理解できてない医師が、カロリーが多いからと言って、アミノ酸輸液も投与していないのに、糖電解質液と脂肪乳剤を投与していることがありますが、これは、全く栄養管理にはなっていませんので、やはり、アミノ酸が入るかどうかの違いと言えるでしょう。
電解質輸液は本当に多種類が発売されていて、細かい分類については既に解説しましたので、その項を見てください。ポイントは、本当におおまかですが、糖濃度が高くなるにつれて浸透圧が高くなって血管刺激性が強くなり、血管痛も出るし、静脈炎も起こりやすくなる、と理解してください。5%糖電解質液よりも、10%糖電解質液の方が、これらよりも12.5%糖電解質液の方が血管刺激性が強いのです。 本当は、滴定酸度という指標が一番重要なのですが、これは、少々むずかしい内容なので、とりあえず糖濃度、すなわち、浸透圧が重要だと理解していただけば結構です。

*滴定酸度とは、溶液をpH 7.4に中和するために必要なNaOHの量として表されます。滴定酸度が高いということは血管障害性が強くなっていることを意味しています。
本来はPPNの輸液組成については、いろいろと知っておくべきことがあるのですが、現在、日本には非常にレベルの高い末梢静脈栄養用輸液がありますので、それを理解しておけばいいと思います。
PPN用輸液の基本はアミノ酸加糖電解質輸液で、これに脂肪乳剤をうまく組み合わせるのがPPNです。PPN輸液は、大塚製薬工場のビーフリード、味の素製薬のパレセーフ、テルモのアミグランドがよく使われています。
どれが一番すぐれているのか?については、私の立場としてはノーコメントです。ま、各施設で使われているものについて理解しておけばいいことです。これらにはビタミンB1が入っているし、基本的にはアミノ酸、糖、電解質の組成は同じです。
なぜビタミンB1が入っているか?PPNでもビタミンB1を入れないと欠乏症が発生する可能性がある、という単なるリスクマネジメントです。ま、私に言わせると、「医者をばかにした輸液」です。
ビタミンB1だけ入れとけばいいのか?そんなはずはありません。本気で1週間以上PPNを実施するのなら、総合ビタミン剤を毎日補給しなければならないはずですから。