【連載】なぜ? どうして? 22問でわかる 最新 感染対策

第9回【環境管理編】環境整備のとき、消毒薬使用は必須?

監修 藤田昌久

日本医科大学付属病院 医療安全管理部 感染制御室 看護師長 感染管理認定看護師

執筆 藤田昌久

日本医科大学付属病院 医療安全管理部 感染制御室 看護師長 感染管理認定看護師

多剤耐性菌や感染性胃腸炎などに罹患している患者さんとそうでない患者さんの病室の環境整備を行う際、どのような区別をしていますか? 消毒薬を使い分けたりする必要があるのかどうか迷ったことはありませんか?
今回は、そんな病室の環境整備を行う際の消毒薬の使い分けについて解説していきます。


Q 環境整備のときに、消毒薬も取り入れたほうがよいですか?

※A YES

薬剤耐性菌対策では消毒薬の使用も推奨されます

※高度な汚染がないかぎりは基本的に必要はない

不十分な清掃による塵埃の飛散や汚染の定着がなければ、床や壁などの環境が感染伝播に関係することはごくまれであるといえます。そのため、血液・体液などの感染性物質の飛散・付着による高度の汚染が認められない限り消毒薬を使用する必要は基本的にはありません。つまり、環境に付着した汚れは直ちに除去し、定期的な清掃を行うことが基本といえます。
日常的に感染予防対策として消毒薬を使用することは、薬剤の希釈・調整等業務上の煩雑さや、消毒薬の実施者への曝露など実務上の問題が生じる恐れがありますので推奨されません。

※薬剤耐性菌伝播防止やアウトブレイク時には、高頻度接触面に使用する

しかし、薬剤耐性菌伝播防止やアウトブレイク時には、環境を介した伝播防止にも注意が必要です。通常の清掃により埃を十分に除去することが基本ですが、ドアノブ、ベッド柵など手が触れる環境表面は低レベル消毒薬やアルコールなどで日常的に(1日数回)清拭することが推奨されます。

環境整備における注意点

環境整備における注意点

※続いては、多剤耐性菌や感染性胃腸炎などの疑いがある場合の環境整備について考えます。

Q 多剤耐性菌の検出患者さんや感染性胃腸炎の疑いがある患者さんに対する環境整備時には消毒は必須ですか?

※A NO

必須ではありませんが、手指が頻回に接触する環境表面や微生物の汚染を受けやすい箇所には使用することもあります

※感染対策上消毒薬を用いた環境整備が必要なこともある

基本的には洗剤を使用した湿式清掃により汚染を除去することは可能です。しかし汚染物質が不明な場合や多剤耐性菌、一部の消毒薬に耐性を認める微生物による汚染の可能性がある場合には感染対策上消毒薬を用いた環境整備が必要になることもあります。
例えば、多剤耐性菌、ノロウイルスやクロストリジウムディフィシルなどによる感染事例が発生している場合は、感染経路遮断の目的から消毒薬を用いた環境整備が実施されることがあります。
また手指が頻回に接触するベッド周辺の器具や物品、環境表面(オーバーベッドテーブル、ベッド柵、床頭台、カート、ドアノブなど)は適切に清掃されていなければ感染伝播のリスクが高まります。従って医療従事者や患者さんの手指が頻回に接触する環境表面は低水準消毒薬あるいはアルコールを用いて1日数回清掃することがあります。
ノロウイルスやクロストリジウムディフィシルには、消毒用アルコールや0.1~0.5%(1000~5000ppm)の次亜塩素酸ナトリウムを用いることがあります。ただし、高濃度の次亜塩素酸ナトリウムは金属腐蝕性や漂白作用などの問題を伴うため、広範囲に使用することはできるだけ避ける必要があるでしょう。

※環境整備とともに重要なのは手指衛生を順守すること

しかし、これらの環境整備は感染対策を補完するものに過ぎません。定期的に環境消毒を行っても環境を無菌化することはできず、汚染した手指で触れれば短時間のうちに再び汚染されてしまうからです。従って基本的で最も重要な対応は、患者さん周辺の環境に手を触れた場合には手指衛生を順守するということです。

(『ナース専科マガジン』2011年1月号より転載)

※次回は、環境整備の実施回数の多さが感染対策上有効なのかどうかを解説します。

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