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【連載】看護師のための輸液講座

第22回 CRBSI予防対策は当然のこととして実施されていなければならない!

監修 日本コヴィディエン株式会社

シングルユース医療機器の製造及び販売、並びにこれらに関連する一切の事業

執筆 井上善文

医療法人川崎病院 外科 統括部長

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CRBSIとは、Catheter-related bloodstream infectionの略語で、血管内留置カテーテル関連血流感染症と日本語では表現されています。かつてはCRS:catheter related sepsis、カテーテル敗血症という簡単な用語が使われていたのですが、かなり複雑になりました。さらに、中心静脈カテーテル(central venous catheter:CVC)に関係した感染症という意味で、central line associated bloodstream infection:CLA-BSIという用語も使われるようになっています。

しかし、CLA-BSIの定義では中心静脈カテーテルが挿入されている症例で発生した血流感染をかなり広い範囲で拾い上げることになります。私としては、本来の中心静脈カテーテルそのものに感染して発生した感染症という意味でCRBSIという用語を使っていたいのです。しかし、日本はアメリカの流れに流されやすいので、私の主張は徐々にマイナーな立場になっていくような気もします。

ただし、CLABSIを『中心ライン関連血流感染』という日本語にするのは反対です。やはり『中心静脈ライン関連血流感染』という日本語訳にしないとおかしいでしょう。『中心ライン』って何?ということになるはずですから。正しい日本語を使うべきでしょう。

さて、このCRBSIですが、日本ではもっと重要な感染症として扱う必要があると思います。そして、栄養管理の専門家でもある私としては、輸液の中身も考慮して考えていただきたいと思っています。

CRBSIとは

血管内にカテーテルが留置されている症例で、発熱、白血球増多、核の左方移動、CRP上昇などの感染兆候があり、カテーテル抜去により解熱し、感染兆候も消褪するもの、というのがもともとの定義です。しかし、感染症に関する考え方の進歩?により、この定義もかなり不明瞭になってきていると言わざるをえないでしょう。どんどんややこしくしてしまっていて、逆に、理解しにくい状況になってきてはいないでしょうか。

実は単純に考えて、カテーテルを抜去したらよくなるものがCRBSIであるが、ただし、その感染が引き金となって全身感染症となってしまう場合もある、ということなのだと思っています。その診断基準の中に、抜去したカテーテルの先端培養結果を考慮する、ということで十分だと思います。実際、現場ではこのような考え方で診断されているはずです。NHSN(National Healthcare Safety Network:全米医療安全ネットワーク)の基準などがサーベイランスに用いられていますが・・・。

血管内にカテーテルが留置されている症例で発熱し、白血球増多、CRP陽性などの感染兆候が出現した場合、肺炎、尿路感染症、創部感染など、いろいろな部位の感染症を考えますが、『最終的にCRBSIが強く疑われた。カテーテルを抜去したら解熱して感染兆候も消褪した、カテーテル先端培養は陽性であった。』これが典型的なCRBSIです(図1)。

(図1) 典型的なCRBSIの経過。

発熱がなかったTPN症例において急に38℃の発熱をきたした。翌日には38.7℃まで発熱し、白血球増多、CRP高値という所見も得られた。他に感染源が見当たらず、spike feverであったのでCRBSIを疑ってCVCを抜去した。抜去後は発熱はみられなくなり、感染兆候も消褪した。CVC先端培養では黄色ブドウ球菌が検出された。

また、CVC留置症例で突然、悪寒を伴うなどの発熱が出現し、他に感染源が考えられなかったのでCVCを抜去したら解熱した、これも典型的なCRBSIです。もちろん、CVC抜去時には先端を細菌培養に提出して原因菌を確定する必要があります。こういう場合は、診断に苦慮することはありません。

しかし、CVCを抜去したが解熱しない、感染兆候も消褪しない、という場合が問題です。CVC先端培養が陽性であったら、CRBSIと診断していいのでしょうか。血液培養で陽性であれば、カテーテル先端培養も陽性となる可能性がありますので、CRBSIと断定することはできません(おそらく、この場合、CLABSIとなるはずです)。こういう場合、他に感染源が存在することが明らかとなればその感染源に対する治療を行いますが、そうでない場合は全身感染症としての治療が行われます。そして、それが有効であれば感染症を治すことができた、ということになります。

この場合、カテーテルがそのまま使用されていれば、ほとんどの場合、感染症は治癒しません。逆にいうと、カテーテルを抜去して感染兆候が消褪しないものは、仮にもともとの原因がCVC感染であったとしても、既に全身感染症になっているのだから、感染症としての治療をすればいい、ということになります。この状態をどう定義するか、非常にむずかしい問題です。

CRBSIの二次感染症として心内膜炎、化膿性脊椎炎、敗血症性肺塞栓、全身性真菌症などをどう定義するかです。私は、これらをcatheter-associated bloodstream infection:CABSIと定義すべきではないかと提案しているのです。

ですから、端的に言うと、カテーテルを抜去して感染兆候が消褪するものをCRBSIと診断し、カテーテル先端培養が陽性のものを細菌学的CRBSI、先端培養が陰性あるいは検査が行われなかったものを臨床的CRBSIと定義すれば明確になります。カテーテル留置期間中に発熱および感染兆候が出現した症例において、カテーテルを抜去してもカテーテル先端培養は陽性であるのに解熱せず、他に明らかな感染源が断定できず、全身性の感染症としての治療が必要な場合、CABSIと診断する、という考え方をすればいいのではないかと思います。

Localized catheter-related infection:LCRI(局所的カテーテル感染)

カテーテル局所の感染で、全身症状を伴わない。
Colonized catheter(細菌定着カテーテル)
発熱等の臨床症状はないが、抜去したカテーテル先端の定量的培養で103個以上の微生物が検出される
Exit-site infection(刺入部感染)
カテーテル刺入部から2cm以内に発赤、圧痛、硬結、膿汁排泄を認める。
Pocket infection(皮下ポケット感染)
完全皮下埋め込み式カテーテルのリザーバーを埋め込んだ皮下ポケット部分の皮膚の発赤や皮膚壊死または、膿汁の貯留を認める。
unnel infection(皮下トンネル感染)
カテーテル刺入部から2cm以上はなれた部位に発赤、圧痛、硬結を認める。

Systemic catheter-related infection:SCRI(カテーテル敗血症)

発熱、その他全身性感染症状を伴う。
Catheter-related bloodstream infection:CRBSI(カテーテル関連血流感染症)
他に明らかな感染源がなく、カテーテル先端培養で103個以上の微生物が検出され、かつ、末梢静脈血培養で検出された微生物と一致する。臨床的にはカテーテル抜去により感染徴候が消退する。
Clinical cathter-related sepsis:CCRS(臨床的カテーテル敗血症)
カテーテル抜去により感染徴候が消退するが、カテーテル先端培養では陰性、または未提出。血液培養の結果とは合致しなくても、臨床的症状の消退をみれは、この範疇に入れる。
* Catheter-associated bloodstream infection:CABSI
カテーテル留置期間中に発熱および感染兆候が出現した症例において、カテーテルを抜去してもカテーテル先端培養は陽性であるのに解熱せず、他に明らかな感染源が断定できず、全身性の感染症としての治療が必要な場合