【連載】なぜ? どうして? 22問でわかる 最新 感染対策

第4回【手指衛生編】正しい手指衛生とは?方法とタイミング

監修 藤田昌久

日本医科大学付属病院 医療安全管理部 感染制御室 看護師長 感染管理認定看護師

執筆 藤田昌久

日本医科大学付属病院 医療安全管理部 感染制御室 看護師長 感染管理認定看護師

Q 手指衛生の手順の内容で誤っているものはどれですか?(2つ選択)

(1) 石けんと流水による手洗いは最低15 秒をかけて、手のひら・手の甲・指先(爪の周囲)・指・指の間・手首・親指の付け根など、むらのないように洗う。
(2) 石けんによる手洗いは、手指の乾燥・手荒れと関連する可能性があるのでハンドケアを行う。
(3) アルコール擦式消毒剤はメーカーが指定する必要量を手に取り使用する。
(4) アルコール擦式消毒剤は手全体に塗り広げて使用する。
(5) アルコール擦式消毒剤は殺菌力が高いので、石けんと流水による手洗いは省略できる。

※A (4)(5)

根拠を理解し、正しい手指衛生の仕方をマスターしよう

石けんと流水による手洗いでほぼ除菌できる

石けんと流水による手洗い(擦り合わせ)を15秒間行うことで皮膚上の細菌数を約90%以上除菌できるとされています。しかし指先、指間、親指の付け根など洗い残しが起こりやすい部分があるので洗う部位にも留意することが必要です。よって、(1)は正しい説明です。
(2)も正しい説明で、非抗菌石けんによる手洗いは手の乾燥、皮膚炎との関連性が指摘されています。要因としては石けんの含有成分のほかに、温水の使用、皮膚の相対的湿度の低下(特に冬季)、適切なハンドケアがされていない、ペーパータオルの品質などがあります。

アルコール擦式消毒剤は使い方に注意

(3)の説明も正しく、アルコール擦式消毒剤は少ない量では液体の場合、手洗いより効果が劣ることがあり、1mLより3mLが適量とされ、およそ各メーカーの指示量が適当と考えられます。
アルコール擦式消毒剤使用の場合も石けんと流水による手洗い同様、手指全体に塗り広げるだけではなく、擦り込みを行わないと消毒できない部分が発生します。
よって、(4)の説明は誤りです。
当院において蛍光剤を使用した手指消毒剤の擦り込み残しを約300名の看護師及び看護学生に対して行った調査では、臨床経験年数の長さと擦り込み残しに関する相関性は認められませんでした。

見落としがちな部位を意識して、手指衛生を行う

また擦り込み残し率が高い部位は、「親指」が50~60%、次いで利き手の「人差し指先」が30~50%でした。
「Taylor LJ, SRN, SCM An evaluation of handwashing techniques, Nursing times, Jan 1978.」によると洗い残しが起こりやすい部位は、親指(56%)、指の背面(26%)手の甲(24%)、指間(16%)、手のひら(16%)ということのようです。

石けんと流水、アルコール擦式消毒剤の 使い分けを知っておこう

アルコール擦式消毒剤を用いた手指衛生がスタンダードに

「医療現場における手指衛生のためのCDC(Centers for DiseaseControl and Prevention)ガイドライン」でも勧告されているように、簡便に使用でき付着菌を減少させるアルコール擦式消毒剤を用いて衛生的手洗いを実践することが感染対策のスタンダードとなり、石けんと流水による手洗いは目に見える汚染がある場合に限定されつつあります。
しかし、まったく石けんと流水による手洗いをしなくてよいというわけではありません。なぜなら、アルコール擦式消毒剤を頻回に使用すると、添加剤や保湿剤の残存による汚れや皮脂・他の汚染によって、消毒効果が減弱していくからです。
そのため、目に見える汚染がなくても定期的に石けんと流水による手洗いをすることが必要です。よって(5)は誤った説明となります。


※引用・参考文献
1) Rotter M:Hand washing and hand disinfection [Chapter 87], Hospital epidemiology and infection control. 2nd ed, 1999.
2) Mackintosh CA, Hoffman PN:An extended model for transfer of micro-organisms via the hands:differences between organisms and the effect of alcohol disinfection, J Hyg(Lond), 92, p.345-355, 1984.
※手指衛生……手洗い、消毒薬を用いた手洗い、速乾性手指消毒薬(アルコール擦式消毒剤など)、手術時手指消毒のいずれかを指して使われる一般的な表現。本記事では、手術時手指消毒を除く。


次は、具体的な場面での正しい手指衛生の方法はどれなのかを確認する問題です。標準予防策の基本ともいえる手指衛生の問題にチャレンジしてみましょう。


Q 嘔吐、下痢の患者さんに対応した後の手指衛生の方法で最も適切な方法はどれですか?

(1) アルコール擦式消毒剤
(2) 流水と石けんによる手洗い後アルコール擦式消毒剤
(3) 流水と石けんによる手洗い

※A 2

流水と石けんによる手洗いを優先し、アルコール擦式消毒剤で補完を

手指衛生の基本を知っておこう

特に感染性胃腸炎を疑う場合には、原因はウイルス感染(ロタウイルス、ノロウイルス等)を想定することが多く、これらの病原体は消毒薬に対する抵抗性が比較的強いと考えられます。そのためアルコールによる手指消毒では十分な効果が期待できない場合がありますので、正しい手技で石けんと流水による物理的な洗浄を行うことが効果的です。

また、アルコール(80v/v%)によりある程度ウイルスを不活化できるという報告がありますが、まず石けんと流水による手洗いが優先されます。手洗い後にウイルス量をできる限り減少させるため、補完的にアルコール擦式消毒剤を使用することが最も適切な方法であるといえます。よって、(2)が正解です。

Q 患者さんの周囲の環境に触れた後も手指衛生は必要?

※A Yes

環境表面を無菌化するより手指衛生が効果的

手指衛生が必要となるケースを知っておこう

「医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン」の中でも、手指に目に見える汚れがなくても手指衛生を行う場面として、「患者のすぐ近くの環境へ直接接触した後」と勧告されています。
いくつかの研究ではMRSAやVREを指標菌として、環境の汚染の程度と手指による間接的な伝播のリスクが高まることを示唆しています。しかし環境表面を無菌化することは一過性の対応に過ぎず、根本的な対策ではありません。
従って、患者さんの周囲、特に直近の環境(高頻度接触箇所)への接触後は手指衛生を行うことが最も実効的な感染対策となります。

高頻度接触箇所の主な例

(『ナース専科マガジン』2011年1月号より転載)


※引用・参考文献
1) Hayden MK et al.:Risk of hand or glove contamination after contact with patients colonized with vancomycin-resistant enterococcus or the colonized patients' environment. Infect Control Hosp Epidemiol, Feb 29(2), p.149-154, 2008.
2)Hayden M:The Risk of Hand and Glove Contamination after Contact with a VRE (+) Patient Environment. ICAAC,Chicago, IL, 2001.


ページトップへ