【連載】アセスメント力を身につけよう

浮腫のアセスメント

解説 山内 豊明

名古屋大学大学院医学系研究科 教授 医学博士/看護学博士/医師/看護師/保健師/米国・登録看護師、診療看護師

患者さんの異変を前に、「迷う」「わからない」「判断ができない」……。
ここでは、そんな体験をした読者から寄せられた「アセスメントに迷いやすい症状」を5つピックアップしました。
症状ごとに、どのような患者情報を集めたらいいのか、判断するときのポイント、アセスメント手技などについて、ステップを追って解説していきます。


▼浮腫についてまとめて読むならコチラ
【浮腫とは?】浮腫のメカニズムと治療・ケア


Q.患者さんの下肢に浮腫がみられました。

 どのような点に着眼し、アセスメントを進めればよいでしょうか。(山口県 呼吸器内科病棟)

A.浮腫の原因は2つ。問診で原因を推測し、緊急度を判断しましょう。緊急性の高い疾患が隠れていることも

 浮腫(むくみ)は、皮下組織に水分がたまり、身体表面が膨らんでみえる状態です。また、全身、および質問にあるような下肢の浮腫は、心不全などの疾患が原因となっている場合があります(表1)。従って、原因を適切にアセスメントして、緊急性の判断につなげる必要があります。

 どうして浮腫が起こるのか、原因は大きく分けて2つあります。

 問診を行う際には、「7つの原則」(「第2回基本に戻ってSkill up 1―問診」で解説)に従いますが、原因ごとに問診の際に確認する内容が異なるので、それを理解して判断の着眼点にすることも大切です。

浮腫から考えられる疾患
表1 浮腫から考えられる疾患

静脈の循環不全と特に心不全の徴候がないかをみる

 一つは、循環不全にもつながるうっ血です。これは血管という道路で、栄養や酸素、熱などいろいろな物資を運ぶ血液というトラックが渋滞している状態です。

 つまり、うっ血は、押し出そうとする勢いがあっても、先が詰まっているからたまってしまうわけです。従って、血液の還流、つまり静脈系の心臓に戻ってくるところでの問題が考えられます。

 心臓から遠いどこかで血流が停滞している、あるいは心臓まで通じているものの右心不全が起きているなどのトラブルが、原因として推測できます。右心不全の場合は、右心にたまった血液を左心に送れなくなるので、全身から戻ってきた血液が右心に入れず、血液が右心房の手前であふれてしまいます。このようにあふれた血液中の水分が手足などの末梢に貯留して浮腫が起こります。

 まずは、呼吸困難やチアノーゼ、泡沫状の血痰など、心不全の徴候がみられないかをアセスメントしていきましょう。

低タンパクの原因となる栄養不足などが起きていないかを確認する

 浮腫の原因のもう一つは浸透圧です。循環不全ではないなら、食事がとれているか、お腹の具合はどうかなど、消化器系の問診をするとよいでしょう。

 栄養状態が悪かったり、下痢などで血管内のタンパク質が減ると、細胞外液のタンパク質含有量のほうが多くなります。すると、濃度差を均等にしようとする浸透圧のメカニズムが働きます。

 本来なら、タンパク質が移動するのですが、タンパク質は血管の膜を通ることができない。そこで、代わりに水が移動して濃さを調節する。つまり、水分が血管の外に逃げ出して、皮下にたまるというわけです。

 低タンパクに由来する浮腫の場合、栄養状態の改善や消化器系の治療などが必要です。また、下肢に浮腫が生じて不快ということであれば、間接的なケアとして足枕などの利用もよいでしょう。

One Point!

時間帯も原因を知る手がかり

 どのようなときに浮腫が出やすいかも合わせて聞いておきましょう。

 朝起きたときに特に感じるという場合は、腎性の浮腫の可能性があります。なぜなら、夜間は、尿が排泄されないため、朝方に浮腫が強くなりやすいからです。

 逆に夕方になると浮腫が出る、または強くなるという場合は、心性の浮腫の可能性を考えましょう。ずっと立位や座位をとっていると、下肢で血液がうっ滞しやすいからです。

基本に戻ってSkill up4 ― 静脈循環の触診のしかた

ホーマンズ徴候って?

 下肢の触診によって、末梢から心臓に静脈血が戻されているかを確認する手技です。ホーマンズ徴候は、末梢の静脈血が滞っていることを示すサインで、ふくらはぎを突っ張ったり押したりして筋緊張を高めたときに痛みが生じるものです。

どんな手順で?

 (1)患者さんに、仰臥位をとってもらい、片足のみ膝を立ててもらいます。
 (2)ふくらはぎをつまんで、指で押します(図1)。
 (3)圧痛が認められれば(ホーマンズ徴候陽性)となり、静脈で血液がうっ滞している可能性があります。

ふくらはぎの圧迫によるホーマンズ徴候の確認
図1 ふくらはぎの圧迫によるホーマンズ徴候の確認

One Point!

「ホーマンズ徴候+呼吸苦」は深部静脈血栓にも注意!

 末梢からの循環不全が続くと、脚の静脈に血栓(深部静脈血栓)が生じる場合があります。これがいわゆる「エコノミークラス症候群」と呼ばれるもので、手術後の安静時などにも起こる可能性があります。

 血栓が全身循環に回ると、肺の血管を閉塞させる肺梗塞や脳梗塞を起こすなど、貴重な状態を招くので注意が必要です。ホーマンズ徴候とともに呼吸困難や咳などの症状が急にみられたら、早急に医師への連絡が必要です。

(『ナース専科マガジン』2011年6月号より転載)

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※ 次回は、「脱水のアセスメント」について解説します。

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