現場の要望から理想的なドレッシング材の導入へ

取材 須川真規子

公立陶生病院 感染制御室・室長

取材 金子美晴

公立陶生病院 看護師主任

撮影高橋宣仁[HIGEKIKAKU]

須川真規子さんと金子美晴さんの写真

院内感染を防ぐための基本的な対策の一つに血管内留置カテーテルの安全管理があります。現場のスタッフの声を生かした理想的なドレッシング材の誕生に力を注いだ、公立陶生病院「感染制御室」の取り組みを紹介します。


「患者さんと、病院で働くすべての人を感染から守る」

公立陶生病院に院長直轄の部署、「感染制御部・感染制御室」が設置されたのは2010年のこと。専従で業務にあたる看護師の須川真規子さんは、患者さんはもちろん、病院で働くすべてのスタッフの安全と働きやすい環境を守るために活躍しています。

「感染制御室」発足のきっかけは、「当院で発生したアウトブレイク(VRE)と、新型インフルエンザの流行だった」と須川さん。当時は感染管理と看護局の仕事を兼務していましたが、「安全管理や感染制御の業務を横断的にまとめるためには、専従者の必要性を実感した」と言います。同時に、素早い原因究明と適切な対応には、統計解析などの疫学統計の専門知識も必要だと感じた須川さんは、2009年から仕事の傍ら、愛知医科大学大学院看護学研究科の感染症看護領域で学びました。そして、2011年に感染症看護専門看護師の資格を手にしたのです。

さらに今年の4月からは、ICT(感染制御チーム)メンバーだった金子美晴さんも「感染制御室」の専従になりました。2人は各部署の医師や看護師、薬剤師、検査技師など現場のスタッフたちに横断的に働きかけつつ、安全で安心して働ける環境づくりのために奮闘しています。

「できるだけ多くのデータから院内の感染リスクをいち早く見つけ出す」

「感染制御室」の仕事について、「できるだけ多くのデータを集め、感染リスクを早く見つけるのが私たちの仕事」と須川さんは言います。例えば、薬剤部から払い出された手指消毒薬の量から、 職員が小まめに消毒しきれていないリスクを発見し、手指消毒薬の携帯方法を検討したり、結核病棟を有する病院のため、全職員がN95マスクを安全に正しく装着するために、マスクのフィットテストを行うための機械の導入を実践しました。

そんな須川さんたちの最近の取り組みの一つが、ドレッシング材の工夫です。
血管内留置カテーテルの挿入部位には、CDC(米国疾病予防管理センター)の感染対策ガイドラインでも、浸出液がない場合、常時目視確認できる透明なドレッシング材を使用することが推奨されています。

「当院では以前から、成人の患者さんには、観察しやすい透明なフィルムでさらに切り込みの入ったタイプのドレッシング材が使われていた」と須川さん。

しかし、現場で使用している看護師への聞き取り調査を行う中で、それらのドレッシング材に「はがれやすい」「フィルムを固定するためにテープを幾つも貼らなくてはいけない」「テープをはがす、貼るなどの動作が多くて煩雑」など、いくつかの問題があることが聞こえてきました。

現場の要望から理想的なドレッシング材の導入

そこで須川さんたちは、小児科で使用していて、高透湿ではがれにくいと評価が高かったドレッシング材『カテリープラスR』を発売しているニチバンに、「患者さんが皮膚トラブルを生じない安全な素材で、1枚用意すれば簡単に手早く固定できるような、扱いやすい切れ込みが入ったドレッシング材を作ってほしい」と相談を持ちかけました。

一方で、同様のリスクについて独自に調査し、新たなドレッシング材を開発していたニチバン側とも意見が一致。両者の二人三脚によって「使いやすい改良型ドレッシング材」が開発され、各診療科での試用が始まったのです。

新商品の感想

「現場スタッフからはより良いケアを目指す積極的な声も」

試用の結果、医師や看護師からは、「固定用の補助テープが付属されているので、テープを何枚か切って準備しておく必要がなく、手間がかからず固定がスムーズ」「挿入部位がフィルム窓の中心に納まるように切り込みがうまく入っていて、手際よく処置できる」など、新しいドレッシング材への評判はとても良いようです。

「煩雑な動作や習得しづらい複雑な処置は、ケアレスミスやヒヤリハットにつながりやすい」と須川さんは言います。今回の取り組みが、感染予防の大きな一歩であるのは間違いないでしょう。

さらに今、現場からは、「挿入部位がより観察しやすくなるように、透明フィルム部分の縁をフラットにしたらどうか」「CVポートにも使えるように、少し大きなものも作ってほしい」など、より良いケアを目指すための積極的な声も上がってきています。

今回のドレッシング材開発から試用までの一連の迅速な動きは、院内で働く職員と、「感染制御室」、そしてメーカーとの強い信頼関係と協力があったからこそ、成功した取り組みといえるでしょう。

「『感染制御室』で、これから考えていくべき課題は、まだまだ山ほどあります」と、須川さんと金子さんは口をそろえて言います。地域の核となる同院の役割を胸に、「私たちがきちんと管理をしていかないと、地域全体に迷惑をかけてしまいますから」と熱く意気込みを話してくれました。
お問い合わせ先 ニチバン株式会社

【公立陶生病院】

公立陶生病院の写真

1936年開設。地域がん診療連携拠点病院、および地域周産期母子医療センター、愛知県災害拠点病院に指定されている。
愛知県瀬戸市西追分町160

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