【連載】アセスメント力を身につけよう

脱水のアセスメント

解説 山内 豊明

名古屋大学大学院医学系研究科 教授 医学博士/看護学博士/医師/看護師/保健師/米国・登録看護師、診療看護師

患者さんの異変を前に、「迷う」「わからない」「判断ができない」……。ここでは、そんな体験をした読者から寄せられた「アセスメントに迷いやすい症状」を5つピックアップしました。
症状ごとに、どのような患者情報を集めたらいいのか、判断するときのポイント、アセスメント手技などについて、ステップを追って解説していきます。


Q.脱水症状をアセスメントするポイントを教えてください。(山口県 呼吸器内科病棟)

A.尿量と飲量の差に着目し、バイタルサインと併せて症状の背景をつかみましょう

脱水は3種類。血栓などの重症合併症に注意しよう

人間の体の60%が水分であり、そのうち40%は細胞内にある「細胞内液」、残り20%は外から細胞を取り囲む「細胞外液」と呼ばれています。細胞内液と細胞外液の大きな違いは、その中に含まれている電解質の割合にあります。
細胞内液に多いのがカリウム、そして細胞外液に主として多くあるのが、ナトリウムとクロールです。

こうした水と電解質のバランスを調整するために機能しているのが、腎臓です。不要な老廃物を尿として排出する際に、体内の水分バランスが常に一定になるように、尿量を調整し、生命維持に必要な電解質の濃度を一定に保つ働きを担っているのです。

脱水が起こる原因はさまざまですが、その病態は「水(H2O)欠乏型脱水」「ナトリウム欠乏型脱水」、さらに両者が合わさった「混合型脱水」の3つに分けられます(表 1)。実際、臨床では、混合型脱水が多くみられます。

水欠乏型脱水は、水分摂取不足と水分排出過多に分けられます。
前者は、全身衰弱や食欲低下などによる水分摂取不足です。後者は、高温や発熱が原因による大量発汗などによるものと、尿崩症のように腎臓の機能に問題が生じたことによるものとがあります。

いずれにしろ、「水分欠乏」→「細胞外液中の水が減少して、ナトリウム濃度が上がると浸透圧が上昇」→「細胞内液中の水が細胞外液に移動して、内外のバランスを保とうとする」→「細胞内液の水が欠乏し、細胞が壊れる」という経路をたどります。

ナトリウム欠乏型脱水では、下痢などによる消化液の大量排出、重症熱傷、イレウス、胸水、腹水、嘔吐、下痢、消化管出血、消化液持続吸引、腎不全、アジソン病(副腎低形成)、利尿薬の長期大量服用などが原因と考えられます。
脱水が起こると、「ナトリウムの喪失」→「細胞外液中のナトリウムが減少して浸透圧が低下」→「細胞外液中の水が細胞内液に移動して、細胞内の水が増加」→「循環血流量が減少してしまう」という経路をたどります。

水欠乏型脱水では、体重の7%の体液が欠乏すると、循環血流が減少してショック状態を引き起こす可能性があります。
また、さらに重症になると、末梢不全により死に至る恐れがあります。

表1 脱水の種類と特徴

脱水の種類と特徴

脱水の程度とおおよその原因を問診などで確かめる

脱水の徴候をみつけたら、まず、水の出入りの確認をわかる範囲で行いましょう。患者さんには、尿の回数、下痢はしていないか、摂取した水分量、発汗量の増加などを聴いていきます。

脱水の原因をつかむことで、どのようなタイプの脱水なのか、また症状がどの程度なのかをアセスメントし、適切ケアにつなげていきます。脱水傾向がみられるのにもかかわらず、尿量の減少がみられる場合には、水分摂取量が減少していると考えられます。

特に高齢者は、体内に保持されている水分量が少な目であるため、少しでも水分摂取が減ったり排出量が増えたりすると、脱水の危険度が高くなってしまいます。
さらに、渇きに気付きにくかったり、自由に体を動かせない患者さんの場合、水分摂取を遠慮して我慢することもあります。
体内の水分量が不足すると、血が濃くなって血管が詰まりやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞を起こすリスクも高まります。ですから、高齢者の脱水には特に注意が必要です。

吐き気や腹痛などがあれば、消化器系疾患が水分排出過多と電解質のアンバランスに影響している可能性もあります。
また、糖尿病や降圧剤の服用なども確認し、脱水を引き起こす背景要因を探ります。

重症度と緊急度を全身の状態から判断する

脱水症状の様子と背景がつかめたら、全身状態をアセスメントし、重症度を確認します。
まず、発熱や血圧などのバイタルサインを確認します。特に、ナトリウム欠乏型脱水の場合、脱水症状が進むと、血圧低下や頻脈など、循環器系症状が発現します。

血圧が10mmHg以上低下したり、脈拍数が毎分20以上増加するようなら、体液の25%以上が欠乏している重篤な状態と考えられます。血液検査のデータから、ナトリウムやカリウム、クロールの値を確認しておきます。

重度の脱水を認めたら、直ちに医師に連絡し、輸液の準備をします。血液検査のデータは、重症度の判断に用いるとともに、輸液を行う際に補液の種類を検討する参考になります。

ツルゴール反応って?

脱水症状をアセスメントするのに、バイタルサインのほかに、ツルゴール反応も確認するとよいでしょう。

ツルゴール反応では、皮膚をつまんで元に戻るまでの時間を目安にして脱水の程度をみます。
脱水症状になっていると、皮膚をつまんでもハリがなく、皺が寄ったままなかなか元に戻らなくなります。

体重測定で喪失した水分量がわかる?

可能ならば、体重測定をすると、喪失した水分量が把握でき、輸液量の目安になります。
体重が1kg減ると、水分が1kg分減ったと考えられます。

例えば、体重50kgの人が、47.5kg以下に体重が落ちたとすると、2.5kg分の体液(5%)を喪失し、中等度の脱水に陥ったと考えられます。

(『ナース専科マガジン』2011年6月号より転載)

※「アセスメント力を身につけよう!」は今回で連載終了です。

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