【連載】看護師のための画像診断

第4回 核医学検査

監修 伊藤哲

医療法人大雄会 放射線科専門医

核医学検査とは

核医学検査は、画像診断法の中でも、特異な地位を有しています。今回は核医学検査についてお話します。

前回造影剤についての解説をしました。造影剤は、その分布を経時的に評価することで血流に関する情報と、機能についての情報も得ることができます。

これらの情報は、CTやMRI、単純X線画像がもともと持っている形態的な情報に付加される情報でした。では、この造影剤をもっと工夫して、ある特定の細胞や働きのところにくっついたり、取り込まれるようにしたらどうでしょうか。

例えば、糖を消費しているところを知りたいのなら、糖に発信器を取り付けて体の中に入れる。そしてその発信器からくる信号を体の外で受信して、その場所を探り当てたらどうだろうか。これが核医学検査の基本的な発想です。

核医学検査以外の画像診断法では、体の外からx線であったり、超音波やラジオ波といったものを体に当てて検査をしていますが、核医学検査では発信機として放射線を出す薬を体内に投与して、そこから出てくる信号を調べます。 薬剤の分布は血流にも依存していますが、薬剤を工夫することによってある特定の臓器の働き具合によって、その臓器に集まる薬剤の集まり具合が変わる、というようなものもできます。

そしてその結果、主として臓器の働き具合に関連した情報が得られるということが核医学検査の非常に大きな特徴となっています。例えば内分泌臓器であれば、機能が亢進していればたくさん集まる、腫瘍や炎症などによって正常細胞が減ったり、働きが低下していれば、薬剤の分布も減少する、といった変化が想像できます。

皆さんが比較的よく目にすることがあると思われる骨シンチと呼ばれる検査では、骨を形成している部分に薬剤が集まり、骨の成長や炎症、修復、腫瘍などによってその集まり方が変化することが知られています。

以下の図は、骨シンチ:Tc99m-HMDPという薬剤を投与し、2時間後に撮像しています。仙骨と右仙腸関節付近に異常集積が疑われます。

骨シンチ:Tc99m-HMDPという薬剤を投与し、2時間後に撮像したもの

細胞の機能評価

細胞の機能を評価することで、病気を早く発見できたり、治療効果が早期から予想できたりするメリットもあると考えられています。細胞は、突然死んでしまうわけでもないでしょうし、形も訳もなく突然変わってしまうこともないと思われます。なかには外見は問題ないけれども、働き具合だけおかしい、ということだってあるはずです。

細胞に何か異常がおこるとしたら、まず、細胞の中の何かの働き具合が正常の状態とは異なって、そして最終的にはその細胞が死んでしまったり、ほかの細胞に悪影響を及ぼしたりするようになる。外見も変わってしまう、ということになると考えるのが自然ではないでしょうか。とすれば、働き具合、細胞の代謝の状態を見るということは、外見にまだ異常が現れる前の早い段階で、病気をとらえることができる可能性があるということだ、と理解されるのではないでしょうか。

近年急速に普及したFDG-PET 検査では、細胞のエネルギー源である糖の代謝の状態を調べることで、がんの治療などの後には、抗がん剤や放射線治療の効果を、腫瘤の大きさが変化する前の早い段階で予想することができると考えられれていますし、また、腫瘤がまだあるけれども死んでいるのか、生きているのかわからない、というような状態を判別することもできると考えられています。

図2、3はいずれも悪性リンパ腫の患者様のFDG-PET画像で、aは治療前、b は治療開始後第一日目の画像です。図2の例では、頚部、鎖骨窩、えきか、大動脈周囲からそ径部にかけて無数の異常集積が認められますが、化学療法を開始した翌日の検査では、異常集積は認められなくなっています。

一方、図3の症例では大動脈周囲に見られる異常集積には、治療開始後も大きな変化は見られません。この変化の違いは、治療に対する反応の差によるものと思われ、治療効果にも差があるものと予想されます。

悪性リンパ腫の患者様のFDG-PET画像、a:治療前、b:治療開始後第一日目の画像

悪性リンパ腫の患者様のFDG-PET画像、a:治療前、b:治療開始後第一日目の画像②

画像診断の”異常”

ところで、皆さんは、画像診断の”異常”ってなんだろう?って思ったことはありませんか?形が変、色が白かったり、黒かったり。ではどのくらい形が変だったら異常なのでしょう。どのくらい周りよりも黒かったり、あるいは白かったりしたら異常なのでしょうか?

60点ならば合格、それよりも下ならば不合格。そんなふうに数字で表すことができれば簡単なのに、体の中のことではなかなかそうもいきません。しかし、核医学検査の一部の検査では、投与する放射線の量や、検査までの時間などを用いて、薬剤の集まり具合や、臓器の血流量などを数値として表わすことができるものもあります。

画像診断は経験的な主観的評価によって行われている部分が多いのですが、数値化するということで、客観的に評価するということができるようになります。このことは、より明確に説得力のある”異常”を定義することができ、さらに、例えば血液検査などで見られるように、ある一定の値を設けて正常と異常な状態とを、ある一定の確率で判別することが出来るようになる可能性を示唆しています。

現状では、数値だけを用いて判別できるわけではなく、ある程度の参考あるいは目安と考えるのが適当かとは思いますが、データを蓄積して、装置も進歩することで、機械的に”人間の目による評価が必要でない検査結果”というような一次的な振り分けをすることができるようになるかもしれません。

核医学検査の欠点

このように、機能を評価でき、ある程度結果を数値化できる核医学検査ですが、いくつかの欠点があります。まず、細かな形はわからない、ということが挙げられます。

外からx線などを当てて画像を得る方法と異なって、体の中から出てくる放射線を受け止めて分布を画像化する検査法では、その放射線の発生源の正確な位置の特定は困難で、その結果、病変として描出される部分の辺縁は不鮮明で、病変の細かな形や広がり具合は評価できません。周囲の細胞や臓器との関係に関する正確な情報も得られません。

評価したい臓器が特定の臓器であれば、その位置は大体わかっているわけですが、その臓器の中での位置関係や病変の境界部分などは、なかなか正確にはわかりませんし、さらに、FDG-PETのように全身を検査対象とする場合には、集積があるのはわかるのだけれども、それがどの臓器への集積なのか分かりにくいということも起こります。

そこで、最近ではCTやMRIの画像と重ね合わせることで、分布位置がより正確にわかるような工夫がされるようになって来ています。詳細な位置関係が必要とされたり、体全体が検査対象となるような場合には、非常に有効な手段です。

以下の図は図1と同一の症例です。骨シンチの画像をCTと重ね合わせることで、異常集積の部位がより正確かつ容易にわかるようになっています。

図1と同一の症例で骨シンチの画像をCTと重ね合わせたもの

続いて以下の図はFDG-PET画像です。左上がCT画像、右上がFDG-PET 画像です。両者を重ね合わせることによって、左えきかの小さなリンパ節に一致した異常集積があることが容易にわかります。また、集積の程度を数値化してカラー表示することで、集積の程度が容易に見てとれるようにもなっています。

FDG-PET画像左上がCT画像、右上がFDG-PET 画像、

放射性薬剤の寿命

次の欠点は、放射性薬剤の寿命が短い、ということが挙げられます。これは、検査に用いる薬剤から出る放射線の量が経時的にどんどん減ってゆく、ということに起因しています。この、放射線を出す能力がだんだんと弱くなって行く速さは、使われる物質に固有のもので、どうしても避けられないことです。

このことは一方で患者さまの被ばく量を軽減できるメリットでもあるわけですが、ぐずぐずしていると、体の中からの信号がもはや出てこない、ということにもなりかねません。とはいっても、いたずらに早く検査を行えば良いというわけでもありません。薬品が血流にのって体内を移動し、目的とする細胞や機能を反映した分布となるまで、待つ必要があります。

ということから、やはり核医学検査でも、造影剤を用いた検査と同じように、検査ごとに”検査を行う適切な時間帯”というものが決まっているわけです。薬としての寿命が短いということは、作り置きができないということなので、結果として検査薬は高価となり、検査も高額です。

また、検査の突然のキャンセルは、病院にとって非常に大きな損出となります。これらのことから、放射線技師や放射線科の医師が時間の遅れなどに対してぶつぶつ文句を言いやすいところではないかと思います(第3の欠点と言えるかもしれません)が、看護師の皆さんには高額な検査の利点を十分に生かせるように、ご理解とご協力をお願いしたいと思います。

そしてもう一つの欠点として、医療従事者側の放射線被ばくを挙げておきたいと思います。放射性薬剤の投与時や、投与後の患者さまの介助などに際しての被ばくを軽減するために、防護用の遮蔽物や、施設によっては担当の方を交代制にするなど、いろいろ工夫されていることと思います。

ある程度の被ばくは避けることができないものと思われますが、すこしでも軽減できるように、放射線技師や医師の指示に従っていただけるよう、これも皆さんにご理解とご協力をお願いしなければなりません。

今回のまとめ

今回は核医学について記させていただきました。核医学検査は他の画像診断方法と異なる特徴があり、核医学ならではの情報が得られますが、またそのために特有の注意点があります。原理を理解することで、なぜそのような注意事項があるのかも理解できます。核医学検査は非常に高額な検査方法です。検査の利点を生かし十分な情報が得られるように、ご理解とご協力をお願いしたいと思います。

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