【連載】ナースのための認知症ケア

第2回 認知症という言葉

監修 三宅貴夫

社団法人 認知症の人と家族の会 顧問 京都保健会盛林診療所 所長

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認知症という言葉

認知症が作られた経過

2004年の4月、当時の「高齢者痴呆介護研究研修センター」の3ヵ所センター長が厚生労働大臣に「痴呆」は好ましくない用語して変更を求める要望を出しました。その2月後省内に「検討会」が発足し、4回の検討会を開催し、広く国民の意見も聞き、同じ年の12月には「認知症」が「痴呆」に代わる好ましい用語と答申し、直ちに厚生労働省は行政用語としての「痴呆」を「認知症」に変える旨の通知を出しました。

あまりに早く用語が決まり、出来すぎた経過との印象を受けます。 これに賛同して、まず朝日新聞などいくつかのマスコミも直ちに用語の変更することにし、日本痴呆ケア学会、日本老年精神医学会、日本痴呆学会も昨年、「認知症」の用語に変更することを決めました。

短い期間で「痴呆」という言葉は「認知症」取って代わられ、既に死語になったようです。 用語の問題として、精神薄弱が知的障害に、精神分裂病が統合失調症に代わりましたが、これらは関係する団体自らが時間をかけて検討し用語の変更を決め、その後行政用語が変えられました。これはいわば下から上への動きですが、認知症の場合は上から下への動きと言えます。

「認知症」に変わった背景

私が認知症に関わった1980年頃には、医学用語として「痴呆」が普通に使われていました。しかし「痴呆」と言われる多くのお年寄りをみていて、この言葉があまりに不適切であり、どうしても馴染めませんでした。私たちが呼びかけて発足した「呆け老人をかかえる家族の会」も会の名称を決めるときも「痴呆」を使いませんでした。「ぼけ」の方がまだ温かみが感じられたからです。

その後、私は「ぼけ」にこだわってきましたが、「痴呆」への関心がたかまり広まるなかで「痴呆」という言葉がなんのためらいもなく、専門職もマスコミと一般の人たちも使われてきたと思います。「ぼけ」はだんだん使いにくくなってきました。しかしこの度の「認知症」という言葉のが、あまりに急速に同じくためらいもなく広がっている状況に私は戸惑いと覚えていましたが、この流れに逆らえません。

私が個人的に開設しているウェブサイト「ぼけなんでもサイト」もついに昨年10月に「認知症なんでもサイト」に変えました。ところで「痴呆」が不適切な用語と受け取られているのは日本だけではありません。同じ漢字文化圏である台湾の認知症に関わる全国団体「台湾失智症協会」は、10年ほど前から「失智症」と呼んでいます。

認知症は新しい造語

認知症は、新しく作られた日本語です。しかもカタカナ表現が流行っているなか漢字で表現した新語です。認知にかかわる病気という程度の意味でしょうが、それまでの痴呆と全く同じ意味です。

しかし認知の意味をあまり知らないのためか、認知症=痴呆=痴呆症から、認知=痴呆と読み間違いが時々見受けられます。「認知症症状」というところを「認知症状」と表現している例があるのです。