【連載】ナースのための認知症ケア

第6回 認知症の原因とは?認知症の1次要因を学ぶ

監修 三宅貴夫

社団法人 認知症の人と家族の会 顧問 京都保健会盛林診療所 所長


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アルツハイマー病

 アルツハイマー病は、今から100年前にドイツのアルツハイマー医師が初めて報告したことから名前がついています。当時から1970代後半まではアルツハイマー病は若年期の稀な病気として考えられていましたが、その後の研究で当時「老年痴呆」という病名で呼ばれていた高齢期に多い病気と同じものであることがわかってきました。

 アルツハイマー病は稀な病気ではないのです。現在、高齢期認知症の原因のおおよそ60%を占めるとみられています。アルツハイマー病による認知症を「アルツハイマー型認知症」といいます。

 アルツハイマー病は、いつとはなしに発病し、ゆっくり進行する認知症です。初期は単なるもの忘れですが、そのもの忘れが徐々に進み、さらに判断力も低下し、自立した生活ができにくくなります。進行すると記憶障害などの精神的な症状だけでなく、歩行障害や嚥下困難など神経的な症状も現れ、重度になるとねたきり様になり栄養を補給しないと衰弱して亡くなってしまいます。

 病気の本態はまだ完全には理解されていませんが、脳の神経細胞の機能低下や死滅によるもの考えられています。そうした変化の原因物質としてベータ・アミロイド蛋白やタウ蛋白が有力視されています。しかしなぜこの物質が脳に蓄積するかについてはよくわかっていません。

 病気に遺伝は関係するがごく一部で、複数の環境要因も加わった複合的な原因でアルツハイマー病が起こると理解されています。治療として、現在わが国では唯一「アリセプト」が認められていますが、これはアルツハイマー病の進行を抑えるものではなく、アルツハイマー病で脳内に起こるアセチルコリンという神経伝達物質の減少を補う作用があります。効果は限られており一時的です。

脳血管障害

 脳血管障害とは、脳動脈の障害による病気で「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」の3つの病気を総称するものです。このうち高齢者では、血管が詰まる脳梗塞が多いです。

 脳血管障害による認知症を「脳血管性認知症」、あるいは単に「血管性認知症」といいます。認知症の約30%を占めるとみられています。 脳血管障害の多くは突然起こる病気で、通常右あるいは左の片方の運動麻痺が現れることが多く、最初から認知症を認めることは稀です。再発を繰り返しているうちに認知症が現れてくることが多いです。

 最初から認知症だけと発病の仕方は少なく、また脳の細い動脈が次々場所を変えて詰まる「多発性脳梗塞」では、発病時期もはっきりせず最初から麻痺ということでなく軽いふらつき程度で、その後認知症が徐々にみられるようになる場合もあります。

 脳血管障害は、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、心房細動などが危険因子となって起こるもので、こうした因子を管理し治療することで脳血管性認知症を防ぐことも、認知症になって後でも進行を防ぐことは不可能ではありません。

その他の認知症を引き起こす脳の障害

 上記二つの原因のほかに数多くの認知症を起こす脳の病気や怪我があります。このなかには、高齢者が頭と強く打って、その1週から1月後に認知症が現れる「硬膜下血腫」という怪我があります。これは早期に見つけると脳外科で治る認知症です。

 あるいは心筋梗塞で一時的に心臓が停止し頭への血液が止まったために起こる「低酸素脳症」で認知症が起こることもありますが、この場合は良くなることもなければ悪くなることもありません。またBSE(いわゆる狂牛病)の牛肉を食べて人に起こるクロイツ・ヤコブ・フェルト病では認知症が急速に進んでしいます。

 このように認知症の1次要因にはアルツハイマー病と脳血管障害が多いのですが、その原因によって治る認知症、治らないが良くなる認知症、悪くなってしまう認知症などがあり、認知症の早期発見、早期治療が大切であり、原因によって介護も違ってきます。

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