【連載】ナースのための認知症ケア

第16回 周囲の人の協力を利用した認知症ケア

監修 三宅貴夫

社団法人 認知症の人と家族の会 顧問 京都保健会盛林診療所 所長


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周囲の人の理解と協力を得る

 在宅介護では、認知症の人の介護は家族の特定の人に強いられていることが多いです。高齢者夫婦世帯では当然のこと、世代の家族でもこうしたことが見受けられます。多くの介護者は周囲の人の理解も協力もなく、孤立して介護を続けていることが多いのです。
 
 こうしたなかで介護者自身が認知症について誤解し間違った介護をし、認知症の人を混乱に陥れたり、介護者自身も懸命にみているにもかかわらず困惑した日々が続くという好ましくない状況になります。

 また、たとえ介護者が認知症について理解ができていても先の見えない介護に疲労困憊してしまうでしょう。こうしたなかで介護者は将来への不安をいだいて心中を考え、認知症の人へ敵意いだき虐待することも起こるでしょう。実際こうした事件はわが国でも未だ後を絶たないのです。心身ともに疲れ果てて不適切な介護にならないようにするには、介護者に周囲の人が理解を示し、それぞれの立場での協力が欠かせないのです。
 
 まずは家族内での理解です。同居している家族が認知症の人の言動について正しい理解をし、くわえて介護の大変さも分かってもらうようにしましょう。このうえで家族にできる範囲で協力してもらいます。同居してない家族や親族にも理解と協力を求めることで日々介護を強いられている介護者の心身の負担を少しでも軽減することは在宅介護には欠かせないことです。

 このことは介護施設での介護職にも言えることで、認知症の人の理解と介護の困難さについて理解を共有し、同じ視点、同じ姿勢でチームとして介護にあたりたいものです。

地域のサービスを利用する

 認知症の人の在宅介護は、家族だけで続けられるものではありません。介護保険が始まってから地域で利用できる介護サービスは多くなりました。ホームヘルプ、訪問看護、デイサービス、ショートステイ、地域包括支援センターなどです。

 このほかにも介護の電話相談、もの忘れ外来、往診と訪問診療、家族の集いなどがあります。地域にある、こうしたサービスや支援を利用しながら在宅介護をすることが、認知症の人にとっても介護者にとっても望ましいことです。

 ホームヘルパーに介護の悩みを話すことができるでしょうし、デイサービスを利用した日は認知症の人は夜よく眠るかもしれません。ショートステイの間に介護者はリフレッシュできるでしょう。

 しかし、こうしたサービスや支援をよく知らない介護者がいます。必要な介護者に必要は情報を提供することはとても大切なことですが、簡単ではありません。情報は家族や親族が持っているかもしれません。最も身近な情報提供者になりえます。親しい近隣の人や友人や民生委員もその役割を持てるでしょう。

 介護や医療の専門職や行政担当者らはこうした情報提供する窓口を持ち、介護者に知ってもらう日々の努力が求められます。しかし、介護者のなかには地域にあるサービスや支援を知っていても、それを利用しようとしないことがあります。

 サービス利用の際の自己負担が重いのか、ホームヘルパーに家のなかを見られるのが嫌なのか、「子供じみたデイサービス」に行きたくない、あるいは「介護保険を利用するようなダメな人間ではない」との理由などから介護保険のサービスを利用しようとしない介護者がいると、ケアマネジャーは介入できません。こうした介護者のなかから介護殺人や介護心中の悲劇が生まれることが少なくないのです。

 介護や医療の専門職や行政担当者らは介護者がいつでも相談できる窓口をできるだけ広くしておき、介護者が利用しやすいような体制を整備しておくことが、地域にあるサービスや支援を介護者が利用するための第1歩なのです。

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