【連載】看護師のための画像診断

第9回 MRI の特徴とMRI で得られる特殊な情報

監修 伊藤哲

医療法人大雄会 放射線科専門医

MRIの利点

前回に引きつづいて、今回もMRIについてのお話です。MRIにはいくつか、非常に大きな利点があり、それらのいくつかが、臨床的な使用に際して大きな意味を持ってると思われます。この利点を理解することで、どの様な時にMRIが選択されるのか推測いただけるのではないかと思います。

まず第1に、骨の影響が少ないために、頭など、骨に囲まれた情報が見やすい、ということが挙げられます。図1aは、頭部のCTですが、側頭葉の先端付近(赤矢印)や、小脳の付近(黄色矢印)では、骨で囲まれた狭い部屋の中に脳実質があるために、内部の情報がわかりにくくなっていますが、b のMRIのT2強調画像では、同様の部分の脳実質も、灰白質と白質のコントラストも明瞭で、脳の表面の形状もはっきりと見えることがわかります。

a:頭部のCT、b:MRIのT2強調画像

MRIでは骨に囲まれた部分だけでなく、骨の中の変化も見ることができます。図2は肩関節を中心としたT2強調画像ですが、上腕骨頭の内部に明瞭な高信号の部分が認められます(赤矢印)。これは外部からの衝撃で生じた骨挫傷ですが、単純写真やCTでは明らかな骨折を指摘できません。

肩関節を中心としたT2強調画像

第2の特徴は、筋肉や実質臓器内などのコントラストがCTに比べて良いことが挙げられます。図3aは成人女性骨盤の単純CT像です。CTでは子宮や卵巣と腸管との濃度(白さ)は類似し、内部構造はおろか、その位置もしばしば正確にはわかりません。

一方b のT2強調MRIでは、子宮内部の構造が明瞭に描出され、その位置の把握も容易なうえに、内膜や筋層の評価も可能です。MRではさらに任意の断面の画像を撮像することができるので、矢状断のT2強調像を撮像することで(図3c)、内部の評価はより一層容易かつ正確になります。この任意断面を得られることも、従来はCTに比べMRIの大きな利点でした。

a:成人女性骨盤の単純CT像、b:T2強調MRI、c:、矢状断のT2強調像

近年マルチスライスCTの急速な進歩と普及によって、CTでも任意の断面を容易に作成できるようになったため、今日ではMRIのCTに対する大きな利点とは言えなくなっているものの、”任意の断面が得られる”ことは、画像診断をする場合に非常に大きなメリットであるといえます。

血流の情報を得る

3番目の特徴として、造影剤を使用せずに血流の情報が得られることが挙げられます。CTで血管を描出するためには造影剤の使用がほぼ必須ですが、造影剤は非常に安全な薬剤であるとは言え、やはり副作用がありますし、患者さまの状態によっては、使用が制限される場合もあります。

MRアンギオ(MRA)と呼ばれるこの方法では、もちろんMR用造影剤を用いる方法もありますが、造影剤を用いる必要がありません。また血流の方向や速さに合わせて適切な撮像法を選択することで、見たい血管を選択的に画像化することも可能です。

頭部のMRAは現在よく普及しているものと思われ、皆さんも目にしたことがあると思います。図4a は頭部のMRAです。b はこの画像を作成するもとになる画像で、このような画像を多量に撮って積み重ね、a のような画像を再構成しています。脳の動脈と静脈、同じ血流でありながら、MRAでは動脈のみが画像化されていますが、元の画像を見ても動脈だけが非常に高い信号を呈していることがわかります(赤矢印)。また、背景には淡く脳の実質も描出されていますが、T1強調像あるいはT2強調像で見られる画像とは異なっていることもわかります。

a:頭部のMRA、b:画像を多量に撮って積み重ねたもの

MRIでは”血流”というはっきりとした方向性をもった大きくて早い流れだけではなく、例えば血管から染み出した物質が細胞間に広がってゆくような、非常にゆっくりとした、方向性も定かでないような、拡散と呼ばれるような水分子の動きをとらえることも可能です。

拡散強調像と呼ばれるこの撮像方法は、従来は撮像できる装置は限られ、撮像にも長い時間が必要でしたが、近年では装置の進歩とともに撮像時間も著しく短縮されて急速に普及し、急性期の脳梗塞の診断になくてはならない画像診断法となってきています。

拡散強調像

この撮像法を用いれば、T1やT2強調像といった撮像法ではまだ描出することができないような、超急性期と呼ばれるような病巣も捉える事が可能ですが、これは発症後ごく初期の脳梗塞巣では、局所の水分子の非常にゆっくりとした流れとは言えないような動きが、脳梗塞の初期に起こる細胞浮腫によって制限されることを捉えているものと考えられています。

図5aはT2強調像です。大脳の白質に高信号として多数の梗塞巣が描出されています。しかしながらいずれも類似した白さで、新旧の判別は困難です。b は拡散強調像で同様の部位を撮像したものですが、T2で認めた高信号の病変の一部のみが、高信号領域として認識され、これらが新しい梗塞巣であることを示しています。この症例は超急性期の梗塞ではありませんが、拡散強調像が新旧の判別にも有用であることを示しています。

a:T2強調像、b:拡散強調像で同様の部位を撮像したもの

4番目の特徴として、しばしば画像診断の大きな鍵となる脂肪や血液などが、特異的な信号を呈することが挙げられると思います。何故そうなるかを説明すると、あまりに長くなりますので割愛させていただきますが、興味のある方は、ぜひ調べてみてください。

さて、図6 a は女性の骨盤のT1強調像です。左右いずれの症例も、高信号の腫瘤性病変が認められます(赤矢印)。b はa と同じ断面のMR画像ですが、a とはずいぶんと白黒のパターンが異なっています。左の症例では病変の信号が低下し、黒くなっています。そのほか皮下の脂肪の信号も低下し、黒くなっていることもわかります。この撮像方法は脂肪信号を選択的に低下させる方法をT1強調像と組み合わせたもので、a とb を比較して、信号が低下した部分は脂肪であると言えます。

右側の症例の病変は、bでも信号は低下せず、依然として非常に高信号を呈していることから、この部分は脂肪成分ではないことがわかります。ちなみにCTではc のように描出されます。左の症例はCT上も脂肪性の腫瘤として認識され、成熟のう胞性奇形腫と診断されています。右の症例はCTでは一見腫瘍のようですが、MRでの信号から、内溶液が血液を含むのう胞性病変と考えられ、内膜症性のう胞と診断されています。

a:女性の骨盤のT1強調像、b:a と同じ断面のMR画像、c:

拡散強調像

5番目の特徴として、3、4の特徴からも明らかですが、撮像方法の多様性が挙げられるのではないかと思います。 MRIでは、T1強調像、T2強調像といったものだけでなく、いくつかの情報を併せ持ったような撮像を行うことが可能です。図6b の解説にもあるように、これらの画像は、T1強調像と、脂肪信号を低下させる撮像法を組み合わせた撮像方法でえられたものです。

これ以外にも、いくつかの意味が混ぜ合わさって、新しい意味を持つような撮像法が日常的にも広く用いられています。MRにおける造影剤の使用も、CTと同様に固有の情報を得ることができますが、造影剤を用いる以外にも、撮像方法を変化させることで、MRならではの、特別な意味を持つ画像を得ることができるのです。

これら以外にもMRの特徴はたくさんあり、それらを応用した検査は枚挙にいとまがありません。脳機能画像や、トラクトグラフィと呼ばれる神経線維の走行を画像化する方法、脳内の物質の量と分布を調べることができるスペクトロスコピィなど、聞いたことや見たことがある方もいらっしゃるのではないかと思います。これらは、現在の臨床医学における検査法として用いられるだけでなく、人間の脳の機能解析などの最先端の研究にも、MR画像は応用されています。

これらの最先端の技術は、今のところ広く普及しているとは言えないかもしれませんが、拡散強調像がそうであったように、これらの技術も近い将来には広く普及し、日常的な利用がされるようになっているかもしれません。

まとめ

さて、MRIはこのように、いくつかの撮像法と断面とを組み合わせることで、それぞれの特徴を生かして、診断上非常に有用な情報を得ることが期待できますが、MR撮像法について十分な理解がないと、有用な検査とはなりえません。また、実際には検査時間には限りがありますので、MR撮像法ばかりではなく、対象となる疾患についても知識がないと、不必要な撮像ばかりが、いたずらに繰り返されることになりかねません。

特徴が多いということは、反面、MR信号および信号変化の意味は複雑であることも意味しています。読影においても、MR信号の変化はいくつかの要因が関与していることもしばしば経験されますので、用いた撮像法や得られた信号変化について十分に検討する必要があります。第一回の項で説明したように、得られた信号は正しい情報のみを示しているとはいいきれません。

この点において、MRIはCTに比べさらに高度な専門知識が必要とされる検査法といってもよいかもしれません。 次回もさらにMRIについての解説をさせていただく予定です。

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