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【連載】看護師のための画像診断

第11回 超音波検査とわずかにIVR ~発展途上国での画像診断

監修 伊藤哲

医療法人大雄会 放射線科専門医

Mri10

今回は超音波検査について記させていただこうと思います。そしてそれとともに、発展途上国ではどのような画像診断が行われているのか、少し書かせていただこうと思っています。

超音波検査装置のメリット

超音波検査装置は、非常に身近で、ありとあらゆると言ってよいくらい、様々な診療科で利用されていると思われます。実際我々の病院でも、いったい何台の装置が稼働しているのか、あまりに多すぎてよくわかりません。何故これほどまでに汎用されているのでしょうか。

まず第一には、音波を使用する超音波検査は、放射線被ばくの心配がない、ということが挙げられるでしょう。音波は、利用の仕方によっては結石を破壊することもできるので、まったく影響がない とも言い切れないのですが、診断用の利用では、”全く” と言ってもよいのではないかと思います。このため産婦人科領域においても広く利用されていることは、いまさら説明するまでもないことだとおもいます。

第二には、装置が比較的簡便で、移動、あるいは持ち運びができる、という特徴が挙げられると思います。病棟のベッドサイドにも持っていくことができます。検査室にも移動させることができます。このことは、画像情報が欲しいその場で得られる、ということで、超音波診断の存在価値を高めている大きな要因であると考えます。

第三のポイントとして、検査をしながら患者様に容易にアクセスすることができることが挙げられるのではないでしょうか。放射線被ばくがないことで、術者も容易に患者様に触れながら検査をすることができますし、小児の検査時にも、保護者についていてもらうこともできます。また、装置の移動が容易であることと相まって、超音波はIVR (Interventional Radiology: 画像診断的介入治療などと訳されてもいますが、一般的にはこれらの訳は好まれず、IVRと呼ばれることが多いと思います) に際しても、大きな役割を果たしています。

有意義なIVR

例えば穿刺時に、その経路と対象を見ながら実施できることで、安全性も、結果も向上することは容易に想像がつきます。IVRは血管系とそれ以外の非血管系とに大別することができますが、超音波検査は主に非血管系のIVRで活躍しています。

ここで少しIVRについても書きたい話の流れなのですが、私はIVRを行わなくなってから久しく、残念ながらIVRには詳しくありません。しかし、放射線科医はこのIVRを行うことで、その存在価値を高めたと言えると思いますし、多くの放射線科医が、IVRを行うことを、その業務として期待されているのではないかと思います。

IVRは、膿瘍の排出など一部の手技を除いては、根治的であることはあまり多くないと思われますが、患者様の予後や有病状態での生活の改善に果たす役割は大きいと思います。大きく開創されることはありませんし、カテーテルと呼ばれる細い管や針を用いての手技であることから、患者様の肉体的な負荷はあまり大きいとは思われませんが、用いる薬剤による副作用への準備や、術後の出血や発熱など、術前から術後に注意すべきことはやはり数多くあります。どうか気を抜かず、看護していただきたいと思います。

超音波検査の仕組み

さて、x線画像がx線の通り抜けにくさ、MRIが水素原子の様子を見ていたのに対し、超音波検査は何を見ているのでしょうか。音波はいろいろな物質の中を伝わっていきますが、物の種類や状態によって、”音の伝わりやすさ”が変化します。伝わりやすさの程度を音響インピーダンスと言いますが、音波はこのインピーダンスが変化する境界で、反射する性質があります。

といっても全部が反射されてしまうわけではなく、どのくらい反射されるかは、境界を作る物質のインピーダンスの違いによって決まります。インピーダンスに大きな違いがあるときはほとんど反射され、あまり違いがないところではあまり反射されず、境界を通り抜けてさらに深部に伝わっていきます。

超音波検査では、この反射されて帰ってくる音波をもとに画像をつくっています。体内には、脂肪と筋肉、筋肉と水、あるいは空気と筋肉など様々な境界面があると想像されますが、それぞれの境界面まで音波が行って帰ってくるまでの時間差とその程度によって画像を作っている、と考えるとわかりやすいのではないでしょうか。

図1は腹部超音波画像です。矢印の部分にはっきりとした白い境界線が認められます。これは胆嚢壁で、その前(上側)は肝臓、後ろ(下側)は胆嚢内部です。肝臓の中(実質)の模様と、胆嚢の中(液体)の模様とにも大きな違いがあることがお分かりいただけると思います。

腹部超音波画像

超音波検査装置のデメリットとは?

超音波検査にも、もちろん短所があるのですが、そのひとつに、検査の原理に由来する限界や欠点があります。それは、空気があるとその境界面から後ろは見えない、ということです。これは骨の後方についても同様で、いずれも他の体を構成する軟部組織とのインピーダンスが大きく異なるため、その表面で音波がほとんど反射されてしまうことに起因しています。このため、肺の検査はできませんし、骨に囲まれた部分の検査も非常に困難です。

そしてもう一つの欠点は、得られる情報の質や多寡は、実施する人の技量に大きく依存しているということが挙げられると思います。CTやMRIは、出来上がった画像は出来上がった画像として、見る人によって情報が異なるということはありませんが(見落とす、見落とさないとは別)、超音波検査は、出来上がった画像よりも、検査をしながら異常に気がつく能力が必要で、そのために実施者によって得られる情報が大きく異なってきます。

異常に気がついて、その部分を詳細に調べたものと、気がつかずに通り一遍の検査が行われたものとでは、その結果が大きく異なってくることは、容易に理解されると思います。つまり、超音波検査では、検査をしながら得られる情報も重要で、そのため、CTのように、”放射線技師が実施した検査を、後に医師が読影する”、という作業工程で、誰かが行った超音波検査の画像を、後で別人が見ようと思っても、実施者を凌駕するような情報を見つけることは非常に困難であるということです。