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【連載】看護に役立つ生理学

第32回 PTとAPTTの違いは?止血機構を知ろう

執筆 梵天ゆとり(ぼんてん・ゆとり)

医師、日本医学放射線学会会員

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生体の維持に不可欠な「止血」の機構は、血小板や凝固因子が相互に作用しながら協調することで実現されています。
そのシステムの全貌はきわめて複雑ですが、臨床検査や薬剤に関係する事柄を中心に、止血機構についての知識を整理しなおしてみましょう。

止血の第1段階 血小板の粘着と凝集

まずは、止血のおおまかな枠組みを復習しましょう。
手短に言えば、止血の第1段階は「血小板の粘着・凝集」、第2段階は「凝固因子によるフィブリン形成」とまとめることができます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

血管内皮が損傷して出血の危機が訪れると、最初に起こるのは血小板の損傷部位への粘着です。ここで早速、「なぜ血小板は損傷部位を『見つける』ことができるのか」という疑問が生じます。それを考える前に、「なぜ普段は血小板が血管の内壁に粘着することがないのか」を考えてみましょう。

血小板と血管内皮はいずれも、その表面にマイナスの電気を帯びており、ほかに引き合う原因がなければ電気的に反発し合います。これが血小板同士、あるいは血小板と血管内皮細胞との結合を妨げています。そのほかにも、血管内皮細胞が血小板の働きを抑制する物質を産生するなどして、不必要な粘着を防いでいます。

しかし、ひとたび血管内皮が損傷して、内皮下層にある結合組織(主としてコラーゲン)が露出すると、その部分には粘着の邪魔をするものが無くなります。それだけではなく、血漿中にはコラーゲンと血小板との結合を橋渡しする物質(ヴォン・ヴィレブランド因子、以下vW因子)が存在しており、この因子によって粘着が促されます。

粘着の次に起こるのは、損傷部位で血小板同士がさらに集まって結合する「凝集」です。これは先ほどのvW因子を初めとした物質が血小板同士の接着剤として働くことによって起こりますが、それならば損傷部位以外の場所でも凝集が起こりそうなものです。

ここで重要なことは、粘着した血小板は単にそこにとどまるだけでなく、種々の変化を起こして形態まで変え、高い凝集能力を持った状態へと「活性化」される、ということです。それゆえ、活性化された血小板のいる損傷部位にほかの血小板がどんどん結合し、血栓を形成します。

血管内皮の損傷部分を拡大した図

図1 血管内皮の損傷部分を拡大した図

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