【災害看護】院内で地震に遭ったら…災害時の院内ケア

解説 高以良仁

国立病院機構災害医療センター 看護師災害対策チーム

解説 福元大介

国立病院機構東京医療センター

解説 齋藤意子

国立病院機構災害医療センター 看護師災害対策チーム

解説 三浦京子

国立病院機構災害医療センター 看護師 災害対策チーム

安全確保

災害時の安全確保は、「安全に関する3つのS」(3 Safety)の順に従って行います。

安全に関する3つのS

  1. Self――――自分自身の安全 看護師自身が負傷しては、患者さんの安全を守ることができません。緊急地震速報を受けてから地震が来るまでの5秒程度の時間でできるのは、自分の身を守ること。まずはテーブルや机、カウンターの下に潜る、しっかりと固定された動かないものにつかまる、しゃがんで頭部を保護するなどの行動をとります。
  2. Scene―――現場の安全 現場の安全の確保は、建物のほかに病棟内の設備を点検したうえで、その場所で継続した看護の提供が可能かを判断します。窓や天井、壁の破損がないかどうか、ライフライン、医療ガス(酸素)、水漏れがないかどうか、また火災の有無を確認します。出火している場合には、すぐに大声で周囲に知らせたうえで消化器や消火栓を用いて初期消火にあたります。引火性薬品などが近くにある場合には、安全な場所に移します。
  3. Survivor――生存者(患者さん)の安全 患者さんの安否確認では、看護師が各病室を回って患者さんの在室と安全を確認します。検査やリハビリなどで不在の患者さんについては、師長やリーダーなどの担当者に報告し、追って安否を確認します。多数の負傷者がいた場合には、その重症度・緊急度によって、その場ですぐに応急手当が必要となりますが、そこでの処置は止血や気道確保など、最小限のことを行います。頭を打ったなどで意識レベルが低下する可能性のある患者さんについては、その受傷経緯がわかるようにメモや記録を残しておきます。

人工呼吸器など医療機器を装着している患者さんへの対応

人工呼吸器を装着している患者さんは、酸素の供給が止まると生命に危機が及びます。病院では基本的に自家発電などによる非常電源が作動するので、すぐに人工呼吸器が止まってしまうということはありません。

しかし、地震の被害によって医療機器が破損したり、回路が外れてしまうこともあります。そのため、人工呼吸器を装着した患者さんのところにいち早く駆けつけて、機器が正常に作動し、酸素が患者さんに供給されているかどうかを確認します。このとき、人工呼吸器が使用できない場合を考えて、常時アンビューバッグを準備しておきましょう。シリンジポンプなどで薬剤を持続注入している患者さんも、注入が途絶えると命にかかわる場合があるので、医療者がすぐにその作動を確認する必要があります。

続いては「避難時」「停電・断水時」「人材不足」「ストレス」への具体的な対応について解説します。

避難時の対応

地震の場合、建物に大きな被害がなければ建物内にいたほうが安全なことも多いですが、病棟の外に避難が決定した場合には、看護師が避難誘導を行うことになります。避難に際しては、避難経路の確保をしたうえで、患者さんの状態によって移動方法や介助の必要度を考慮して、自力歩行が可能な患者さんから避難を開始します。 避難の際の確認事項としては、

  1. 医療ガスなどに異常がないか
  2. 避難経路の天井や壁の破損、物品が倒れていないか
  3. エレベーターは使えないので、階段で避難するための人手が確保できるか
  4. 担架や車イスの数は十分か、足りなければ代用品はあるか

さらに、カテーテルやチューブなどが絡まると、突起物に引っ掛かって抜けてしまったり、転倒・転落の危険性があります。そのため、移動時には、ラインはできるだけ中断します。

停電時の対応

電気の供給がストップすると、病院全体が暗くなり、さまざまな医療機器、電子カルテやオーダリングシステムといった情報管理に支障をきたします。さらに、滅菌消毒設備、空調設備、エレベーターなども停止するため、治療・看護、情報伝達、移動とさまざまな機能が障害されます。 多くの病院が自家発電や無停電装置を備えているとはいえ、供給電力が限られますので、次のことに注意します。

  1. 不必要な電源はすべて落とす
  2. 吸引は足踏み式など、非電力の器材に切り替える
  3. 手動に切り替えられない機器にのみ、優先的に電気を使用する
  4. 自家発電装置または無停電装置は、専用コンセントに差し込まないと通電しないため、注意する
  5. 自家発電コンセントは、停電時に1分弱、電気の供給が止まるので注意する

また、停電時に備え、日頃から下記の点を実施しておくようにします。

  1. 人工呼吸器などは自家発電や無停電コンセントにつないでおく
  2. 非電力機器の操作を訓練しておく
  3. 充電式のものは充電しておく

断水時の対応

病院は常時大量の水を使用していますが、災害による水道管や貯水槽の破損あるいは停電などによって断水が生じます。多くの病院では、非常用タンクや受水槽の水がしばらくは使えますが、それらは限られているため、使用にあたっては優先順位を考えます。 さらに水の使用に際しては、次の点に注意します。

  1. 治療や看護にかかわるものを優先する(傷の洗浄、透析、検査、滅菌業務、手洗い)
  2. 清拭などのためよりも飲料水としての使用が優先される
  3. 排泄に水は使わず、便座にビニール袋を敷き、排泄後にビニール袋の口を縛って廃棄する
  4. 排泄後は手洗い、または速乾性手指消毒薬を使用する(ウエットティッシュは消毒効果が弱い)

人員不足時の対応

災害時には、限られた人員で初動体制を整備することになり、人員不足に陥ります。人や物が制限された状況下では、その中で何が優先されるべきかを考えながら、処置や看護ケアを提供していくことが大切になります。基本的には次の順で考えます。

  1. 患者さんの安全確保
  2. 生命維持のための基本的ニーズの充足
  3. 清潔や安楽・安心

ストレスへの対応

被災地においては、負傷者はもちろん入院患者さんや看護師にもストレスが生じます。特に入院中や勤務中に被災した場合、家族の安否や自宅の倒壊等の確認をしたくても電話がつながらない、連絡の手段がないなど不安が募ります。

さらに余震などが続くと安心して眠れないため、ストレスを生じます。看護師はこのような状況下でも、負傷者や入院患者さんの声に耳を傾け、ストレスの軽減につながる看護ケアを行う必要があります。

災害発生後は、病院に負傷者が搬送されてくることが予想され、多くの病院で増床体制がとられます。ロビーなど1カ所に患者さんを集める事態が発生すると、特にプライバシーのない状態での生活は心身に影響を与え、食欲不振、不眠、循環動態の変調などをきたし、体調が悪化することになりかねません。また、食事・水分はきちんと摂取できているか、脱水の徴候はないかなど、基本的な観察が平常時以上に求められます。

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