【連載】難しい患者さんの日常ケア

無理な口腔ケアは逆効果! 口が開かない患者さんの対処法

解説 向山仁

みなと赤十字病院 歯科口腔外科部長 歯科医師

解説 藤田紀子

みなと赤十字病院 小児救急看護認定看護師

解説 川本真規子

みなと赤十字病院 歯科衛生士

解説 大坪千智

みなと赤十字病院 看護係長

口腔ケアが難しい患者さんへの対応のキホン

口が開かない患者さんに対しては、まずマッサージなどで口の周囲の筋肉をやわらげてから、声かけをして開口を促します。こうして口の中を目視し、必ず原因を確かめてから対応します。K-ポイントを刺激すれば、たいがいの口は開くのですが、開口器などの使用も含め、強制的な開口は、どうしても必要な場合にとどめます。

また、歯がぐらぐらする「動揺歯」が生じているケースでは、その動きの程度を調べることで、歯周病疾患の進行度がわかり、抜歯適応かどうかの判断にもなります。動揺歯を見つけたら、誤嚥を防ぐためにも歯科医師に相談します。

K-point刺激

(K-point刺激)

人差し指から小指まで頬に当て、上顎奥歯辺りの耳下腺を指の腹でゆっくり押す、実践写真

人差し指から小指まで頬に当て、上顎奥歯辺りの耳下腺を指の腹でゆっくり押す

口腔ケアは無理に実施しないこと

口腔状態は、全身状態の変化や治療内容によっては、短期間で非常に悪い状態になってしまいます。状態がひどい場合は1回の口腔ケアでやりきろうとしてはいけません。ひどい汚染を一度のケアで無理に取ろうと思うと、患者さんに痛い思いをさせたり時間がかかったり、次回からの拒絶の原因になってしまいます。歯磨き後の口の中には、菌が多く残っているため、ケアの最中には必ず清拭・吸引してきれいにします。このとき吸引がついているICUブラシを使用すると効果的です。
 
大切なのは、汚染に気をとられて口腔ケアを無理に実施するのではなく、ケアにかかわるスタッフの間で情報共有し、ケアをリレーで引き継いでいくことです。

口が開かない患者さんにどう対処する?

大きく分けて、「口が開かない人」「口を開けたくない人」の2つがあります。

口が開かない人

①口周囲の筋が硬直している

〔原 因〕
神経障害の後遺症、認知症や脳梗塞による口腔周囲筋の機能低下や廃用などです。
〔対処法〕唾液腺マッサージで筋をほぐすとリラクゼーション効果で口が開きます。また、歯列弓の一番奥(臼後三角部)の内側を圧すと開口反射が起こることがあります(K-point刺激)。口の中に手を入れると、反射で患者さんから噛まれることがあり注意します。また、マッサージ、K-point刺激は、慣れるまで練習が必要です。

②粘膜がくっついている

〔原 因〕口腔内の乾燥により、粘膜がくっついて開かないことが原因です。
〔対処法〕保湿剤でこまめに口唇から口腔内を湿潤させます。決して無理に粘膜を引きはがしたり、こじ開けてはいけません。

口を開けたくない人

①口の中や周囲が痛い

〔原 因〕
口唇ヘルペスや、口腔内にカンジダ、MRSA感染やがん化学療法による口内炎がある場合、挿管によるびらん・潰瘍によっても強い痛みを生じ、開口困難に陥ります。
〔対処法〕
口角にワセリンなどを塗布し、口腔内を水や保湿剤で湿めらせたあと、毛の柔らかい小さいブラシで軽く磨きます。難しいときは、指で粘膜の汚れを取るか含嗽のみにし、清拭後に軟膏を塗布します。歯磨き剤は刺激が強いため避けます。

②噛みしめてしまう

〔原 因〕噛みしめの主な原因は、身体・精神的なストレスによる筋の緊張です。
〔対処法〕脳外科の術後約1週間は力が入りやすく、口が開かないことが多くなります。しかしこれは、時間がたつにつれて開きます。マッサージで筋をほぐすことが効果的です。指でゆっくり耳下腺部を刺激すると、唾液で口腔内が潤い、筋の緊張もほぐれます。

③ケア拒否の表れ

〔原 因〕過去にした痛い経験などが原因となり、本人の意思で口を開けたくない場合や、認知症など、原因はさまざまです。
〔対処法〕マッサージのほか、アングルワイダーを使用することもあります。アングルワイダーは、使用前に全体に軟膏を塗っておくと痛みが減ります。口が開かない人、開けたくない人への対応を実施しても開かない場合は、骨折や関節トラブルも要因となっていることもあるので、医師・歯科医師に相談することも大切です。



(ナース専科マガジン2014年4月号より転載)

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