【連載】難しい患者さんの日常ケア

拘縮患者さんの清拭・陰部洗浄のコツと注意点

解説 村上未来

東京都立神経病院 看護科 主任


【目次】


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体位変換とポジショニング


拘縮のある患者さんへの清潔ケアのキホン

 清潔の援助は、拘縮の有無にかかわらず日常的なケアであり、実施頻度の高いケアです。片麻痺では健側からのアプローチが可能ですが、拘縮では身体の動きが制限されるため、援助が難しくなります。そのため、拘縮のある患者さんへの清拭ケアは、片麻痺の場合よりも難しく、苦手とするナースが多いようです。

清潔の援助は全身状態を観察できるチャンス

 拘縮の程度は患者さんによって異なります。一人ひとりの身体の状態に合わせたケアを行うためにも、丁寧に観察して、どこにより強く拘縮が現れているかなどの状態や程度を正しく把握することが重要です。拘縮している部位を一時的に伸展や屈曲させる場合、脱臼や骨折のリスクもあるため、どのくらいまで伸展・屈曲できるのか、頻回に声かけをしながら、表情を見て注意深くケアを行うことが重要なポイントです。

 また、大切なのは拘縮を悪化させないことです。そのためにも日々の観察は欠かせません。拘縮によってスキントラブルが起こりやすくなるため、清潔ケア時は、拘縮のある関節の内側の皮膚を観察します。

 さらに褥瘡は拘縮によって好発部位が変化します。たとえば、下半身がねじれていると、骨突出による圧迫箇所が仙骨部以外にも生じている可能性があります。清拭時に体全体を観察し、除圧が必要な箇所を発見するようにします。清潔の援助は全身状態を観察できるよいチャンスだと考え、丁寧な観察と次のケアにつなげることが大切です。

拘縮のある患者さんへの清拭

 拘縮とは、関節の周りの柔らかい部分(皮膚・筋肉・腱・靭帯など)の収縮によって関節が一定方向に運動を制限され、関節の動く範囲が非常に狭くなった状態を指します。拘縮は後天的に起こることがほとんどで、長期臥床による廃用症候群、脳血管障害や神経性の疾患、骨折、熱傷、疼痛などが原因で、疾患や年齢を問わず、どの患者さんでも生じると考えられています。

拘縮の生じやすい部位

 拘縮は、関節部位を手足の指を除いて、体幹、頸部、股、足、手、肩、前腕、肘、膝の順に起こりやすいとされています。特に上肢と、下肢の股関節の屈曲拘縮は、寝衣の着脱や清拭、陰部洗浄などの清潔援助を難しくさせています。

清潔援助のコツ

 清潔援助では、拘縮部位に負担をかけないよう2人で介助を行います。1人が身体を支え、1人がケアを行えばスムーズで、患者さんの苦痛の軽減にもつながります。

 ケアの際に注意しなければならないのは、脱臼や骨折です。屈曲した関節を一時的に伸展することにより、脱臼や骨折が起こりやすくなります。予防のためにも、必ず患者さんの表情や痛みを確認しながら、慎重に行います。その際、痛みが生じることなく伸びるところまでが、伸展できる範囲の目安となります。拘縮している関節を伸展したり、手のひらを開く時には、一方の手で関節をしっかりと包み込むように支えながら、もう一方の手で伸ばすこともポイントです。

清潔援助に必要な物品

 清潔援助に必要な物品に関して、おむつや洗浄剤などは性能の高いものが増えています。特におむつは吸水性が高く、陰部洗浄では重宝する物品です。物品はケアを行う前に準備し、効率よく実施するために作業手順を考えて配置しましょう。

股関節拘縮の陰部洗浄

良肢位の保ち方

〔理 由〕

 唾身体がねじれている状態のままでは、ケアを行うスペースが狭く、十分な清潔ケアが行えません。良肢位を保持することで、関節可動域が広がり、スペースが確保されます。

〔対処法〕

 枕やクッションなどを利用し、身体のねじれを矯正して仰臥位を良肢位に保ちます。無理に下肢を開かせたり、足を持ち上げたりすると関節に負担がかかってしまい、骨折や脱臼が起こりやすくなるので要注意です。膝が屈曲拘縮している場合、仰臥位から側臥位にする際にベッド柵に膝などがぶつからないように気をつけます。

物品の使い方

〔理 由〕

 腰の辺りに便器を差し込んで洗浄する方法もありますが、拘縮の強い患者さんは痛みを訴えたり、身体が浮いて不安定な状態になるため、段差を少なくできるおむつのほうがよいでしょう。

〔対処法〕

 大きめの紙おむつを下に敷いて使用します。洗浄に要する程度の水分は十分に吸水でき、頸部の段差もないので患者さんに苦痛を与えずケアできます。

 洗浄剤にはさまざまな種類がありますが、泡立つタイプのボディソープは泡立てる手間を省くことができるので便利です。シャワーボトルに適温(38℃前後)の湯を入れて洗浄します。洗い流す際に皮膚に洗浄成分が残るとスキントラブルの原因となるので、洗浄剤の必要量を調整しましょう。

観察の仕方

〔理 由〕

 皮膚が2面で接している部分は汗や分泌物が付着して浸軟しやすく、発赤やびらん、表皮剥離などのスキントラブルが起こりやすくなります。

〔対処法〕

 鼠径部など皮膚と皮膚(の2面)が接している部分は尿や便で汚染されやすく、皮膚が浸軟すると真菌が発生しやすくなるため、感染防御の点からも注意が必要です。皮膚を開くようにして観察します。

洗浄の仕方

〔理 由〕

 皮膚をゴシゴシこすると表皮剥離を起こしてしまうため、皮膚を刺激しないようにやさしく丁寧に洗浄することがポイントです。

〔対処法〕

 洗浄剤を適量手に取り、泡でやさしく皮膚を包むように洗います。拘縮が強くスペースが狭い場合はガーゼを指に巻いてその部分を洗います。洗浄を終えたら十分に水分を拭き取り、保湿剤を塗布して、乾燥を防ぎます。

おむつの当て方

〔理 由〕

 下肢の拘縮が強く長期間におよぶ場合は、尿道口や肛門の位置が変わり、尿や便がおむつの隙間から漏れてシーツを汚してしまうことがあります。

〔対処法〕

 使用後の尿や便を取るパッドの汚れの位置などを確認したうえで、新しいおむつとパッドを交換します。尿道口や肛門の位置に合わせて、尿が漏れないようにしっかりとパッドを当てます。痩せている場合、特に横漏れが起こりやすくなるため、おむつの端を鼠径部に沿わせて、隙間がないように当てます。

更衣の仕方

〔理 由〕

 片麻痺の場合の更衣は、着る時は麻痺側から、脱ぐ時は健側からとなっていますが、拘縮についても同様です。両肢に拘縮があり、どちら側から脱着すればよいか悩む場合は、より拘縮が強いほうはどちらかを確認してから行います。

〔対処法〕

 更衣は、拘縮の弱いほうが下になるように側臥位にして、拘縮の強いほうから手や腕を通し、衣服を反対側へと送り込みます。そのあと、向きを変えて拘縮の弱いほうが下になるように側臥位にして、拘縮の弱いほうの手と腕を通し、最後に両肩を通します。衣服の袖に手や腕を通す時に無理やり通そうとすると、骨折や皮膚を傷つける原因になるので注意します。

その他の難しい清潔の援助

上肢が屈曲している人の手の洗浄

 洗面器の中に大きめのビニール袋を入れ、そこに適温(40℃くらい)の湯を入れて、患者さんの手や腕を浸すようにして、部分浴で手や腕の洗浄を行います。関節に負担をかけずにしっかりとお湯につけることができます。

 温めると拘縮が少し緩んで、手が開きやすくなります。患者さんが痛みを訴えていないか表情を観察しながら指をゆっくり開き、手のひらや指の間を観察します。握り込む力が強いと、爪が手のひらに食い込んでいたり、指の間に垢などが溜まって汚れや真菌が発生していることがあります。

 また、手指の拘縮予防のために握り棒を使用している場合、擦れて褥瘡になってしまうことがあります。清潔ケアの際に皮膚の状態をよく観察し、褥瘡予防と感染予防に注意します。

頸部拘縮の人の洗髪

 闘病中の患者さんの清潔援助への要求の中で多いのが洗髪です。頸部拘縮がある場合は洗髪台に乗せることが難しいため、当院では患者さんに負担がかからないように、ベッド上に吸水性の高いシート(紙おむつ等)やパッドを敷いてケアを行っています。おむつはコストがかかりますが、頸部を無理に動かさずに洗髪できる利点があります。

 洗浄には適温の湯を入れたシャワーボトルを4本程度用意し、冷めないように保温バッグに入れておきます。気管切開でカニューレを装着している場合、カニューレホルダーの紐が頸部に当たっているとその部分に発赤などを起こしやすくなるので、清潔ケアの際に観察とケアを行います。

清潔の援助が難しい患者さんへの注意点やコツ

 清潔の援助を行う前に、患者さんがケアについて拒否の様子が見られないか確認します。またケアを行う際には、ケアを行うこと、どのように行うか、およその所要時間などを説明します。ケアを嫌がると拘縮が強くなったり、緊張して力が入ることもあるので、落ち着きを見せるまで時間をおきましょう。

 ケアの最中に屈曲する足を開いてスペースを確保したい場合は、「皮膚の状態を観察してきれいにしますので、もう少しだけ開きますね」と声かけします。拘縮した部位を伸展・屈曲させることは痛みを伴うことも多く、すばやくケアを行うことも重要なので、できる限り2人で行います。

 患者さんの清潔援助に対する印象が、「痛い」「つらい」「なかなか終わらない」などマイナスイメージが強いと、拒否反応につながります。信頼関係を築いてケアすることは、拘縮の患者さんにかぎらず、すべてのケアに通じることです。

清潔の援助が難しい患者さんへの注意点やコツ

浜村明徳 編集:すぐに使える拘縮のある人のケア、中央法規出版、p11, 2009.より引用


(ナース専科マガジン2014年4月号より転載)

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