【連載】難しい患者さんの日常ケア

認知症でコミュニケーション不良の患者さんにどう対応する?

解説 高木明子

東京慈恵会医科大学付属病院 精神看護専門看護師(リエゾン精神看護)


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困っているのは患者さん。不安を軽減する働きかけを

 …とはいえ、治療に影響するなどの理由で、目の前のことに対応しなければならない場合もあるでしょう。そんなときの対応のヒントを挙げてみます。

不安や動揺があり話や指示に集中できない

 1対1で、患者さんの目を見て、ゆっくりと穏やかな口調・表情・態度で接するようにします。声は低めに保ち、極力大声は出しません。歯切れの良い話し方もポイントです。自分が信頼できる存在であることを態度で示し、安心感をもってもらうことが大切です。余計な医療機器は病室から取り除くなど、治療・療養環境を生活環境に近付ける工夫も有効です。

患者さんがやってくれない、拒絶がある

 一度であきらめずに時間を置いて、あるいは違う場所で、何度か試してみましょう。「時間」「場所」「人」を変えて何度か行うことで、患者さんの気持ちが変化することは少なくありません。

 ただし、人や場所が変わることで困惑・混乱する患者さんもいるので、その人の普段の様子から判断することが大切になります。逆に、入院直後の人に対しては、人や環境を変えずに慣れてもらうような援助を行います。

理解力が低下している

 一度に多くの話をしないことが大前提になります。1回に伝える内容・指示は1つだけにし、簡単な言葉で伝えます。理解していないのに、「はい」「わかりました」と取り繕う人もいるので、本当に理解しているかどうか、その後の様子を観察・確認することが重要になります。

食事を済ませたのに「食べていない」と言う

 事実誤認がある場合は、過ちを指摘しないことが重要です。事実に直面させると不安を大きくしてしまうので、患者さんの言葉を一旦受け入れ、その場を納めます。安心できるような、感情への働きかけをすることのほうが効果的です。

他職種との連携による対応

●治療に幅を持たせる

 点滴チューブの抜去など、患者さんの安全を脅かしたり、治療効果を減退させる行動が予測できるときには、あらかじめ治療方法に幅を持たせるよう医師と相談します。安静度や与薬方法などについて、ベストの方法・基準ばかりでなく、最大限の許容範囲を定め、治療方針として共有します。

 看護師は治療の遂行や患者さんの安全を考え、「しなければいけない」という意識が強い傾向があります。こうした考えは、ときに患者さんばかりか看護師にとってもつらく、お互いを苦しめてしまいます。選択に幅ができることで、看護師自身にも精神的な余裕が生まれるはずです。

●看護師が調整・仲介役になる

 医療環境下ではさまざまな職種が患者さんにかかわる場面が多々あります。見知らぬ人との接触は、患者さんの不安を増大させる要素の一つ。看護師は、そんな患者さんの気持ちを理解し、代わりにほかの職種との調整・仲介役を担うようにします。その上で不安を受け止めることが、患者さんの安心につながります。

言葉以外でもコミュニケーションは可能

 いくら話しかけても用件や指示が伝わらないときは、言葉以外で伝える工夫をしてみましょう。患者さんに記憶障害があっても、理解してくれることは少なくありません。

● 紙に文字や絵を書いて見せる
● 何をしてほしいかジェスチャーで示す
● 写真や実物を見せる
● 「よい」(笑顔)「悪い」(泣き顔)など表情でも伝える
● 手で相手の手や膝に触れて注意を引きつける
● 背中などをゆっくりとさすって気持ちを落ち着かせる


(ナース専科マガジン2014年4月号より転載)

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