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【連載】急変対応マニュアル

[せん妄]急変につながる高齢者のリスク

解説 前田孝子

東京都健康長寿医療センター 医療安全室 専任リスクマネージャー 看護師長

高齢者の急変は、気付いたときには重篤化していた! ということが多いもの。高齢者の心身の機能低下の仕組みを知り、急変リスクへの理解を深めておきましょう。


せん妄の要因は?

せん妄とは、意識や注意、認知、知覚の変化が一過性かつ急速に出現する状態のことで、突然意識が混濁した状態になります。

特徴的な症状は、興奮、幻覚、つじつまの合わない言動、不眠などのさまざまな精神症状が前面に現れます。

せん妄を引き起こす要因には3つあります。

1 準備因子

せん妄を引き起こす脳の脆弱性を示す因子。脳血管障害、頭部外傷、認知症や加齢などです。

2 誘発因子

せん妄を引き起こす引き金となる因子。入院による環境変化、心理的ストレス、睡眠妨害、脱水や呼吸不全などの身体症状、感覚遮断・過剰、拘禁状況などがあります。

3 直接因子

単一でも意識障害を来し得る因子。睡眠薬、抗不安薬などの薬剤、アルコールからの離脱、脳血管障害急性期などです。

せん妄の出現には、これらの要因が複雑に重なり合っていると考えられています。そのため高齢者の入院は、そのこと自体にせん妄出現の要因が複数存在しているのです。

例えば、疾患により入院して手術をすることは、環境の激変により生活リズムが乱れ、見知らぬ多くの人に囲まれ、治療を施された上に痛みやさまざまな制限を強いられるなど、患者さん本人がこの事態をしっかりと把握できているとは限りません。

不安感や焦燥感などに駆られ、不眠をきっかけに精神状態が悪くなるなど、高齢者にとって入院することは、せん妄を出現させるだけのたくさんのストレスが重なり合う状況にあると考えます。

発見のポイント

せん妄は急激に発症するとされていますが、せん妄を起こす前の混乱状態や混乱に至りやすい変化、つまり「サイン」を出しているケースが多くみられます。

なんとなく「いつもと違う」「何かおかしい」と感じたことが、せん妄への発症へと続いたケースがあり、そのような思いが感じられたときは、発症を未然に防ぐために原因や要因を探り、すばやい対処が必要となります。

 また、せん妄と認知症は類似しているため、判断に迷うケースがよくみられますが、その違いは大きく3つ挙げられます。せん妄は「急激に発症」「日内でも症状が変動」「可逆性である」。一方の認知症は「年単位で徐々に発症」「症状の変動はない」「不可逆性である」。せん妄と認知症の違いをよく理解しておきましょう。

ココで発見!

  1. 目つきが変わったり、話をしていても上の空
  2. 何度も同じことを聞いてきたり、訴えたりする
  3. あまり話さない人だったのに、多弁になった
  4. 夜間眠れず、昼間にうとうとしている
  5. 夕方頃になると、言っていることがちぐはぐになる
  6. 落ち着きがなくなり、それまで気にしていなかったチューブ類をしきりと気にするようになった

(『ナース専科マガジン』2012年6月号より転載)

次回は「急変につながる高齢者のリスク[薬剤の影響]」について解説します。

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