【連載】医療事故、あなたならどうする?

第2回 【医療事故】警察が来る前にしておきたいことは?

監修 水島幸子

社団法人大阪府看護協会および社団法人兵庫県看護協会顧問弁護士。


今回は警察に届け出てから、警察が病院に来るまでの間に何をしておけばよいのか、何をしてはいけないのかを解説します。


Q 警察に届けると、カルテや看護記録を押収される。その前にしておくことは?

A とにかくコピー、そして写真撮影。後で整理し検討できるように記録しておきます。

押収されるものはカルテや看護記録だけではない

刑事事件になると、看護師の皆さんにとっては想定外のことが次々に起こります。法律の常識は医療の常識とは異なる、ということをまず頭に入れておいてください。

さて、※医療事故が起きて警察に届出を行うと、刑事事件として何人もの警察官がすぐに(場合によっては数分で)病院にやってきます。そして、捜査に必要とされるすべての記録が押収されます。いつもは静かな病棟やナースステーションがあっという間に物々しい雰囲気に変わります※1)。

看護師の皆さんは、保管義務があるカルテ(検査結果やX線写真も含む)や看護記録だけが証拠として押収されると思っておられるようですが、たしかに、※カルテや看護記録は最も重要な証拠ですが、そのほか、通常でしたら破棄してしまうようなメモ類やチェックシート類、またマニュアル類なども含めて、関連するものはすべて押収されます。要は、警察が証拠になりうると判断したものはすべてです。

したがって、とにかく押収される可能性のある※資料はすべて確実にコピーをとることが大切です。人海戦術で、色がついている書類ならカラーコピー、コピーができない物品なら写真を撮ります。押収されてしまえば、それらの資料は手元に残らないからです。

警察から押収した資料のリスト(押収品目録)がもらえますが、押収されたもの自体は病院側には残らないわけですから、病院側としては、警察に提出したもの自体の写しを確実に残して、整理しておくことが大切です。

※1)病棟に刑事事件の捜査で警察が入る:普段、看護師が経験しない事態です。ひとたび事故が起こると、物々しい状況の中で事情聴取が行われますので、なかなか冷静に対処することは難しいでしょう。そこで私が顧問弁護士を務めている国立病院機構(近畿ブロック) では、年に2回ほど、警察から取り調べを受ける場面のシミュレーションを体験してもらっています。私が警察官役をやり、証拠書類の押収や事情聴取のやりとりなどを経験してもらうのです。いつ何が起こるかわからない時代です。いざというときに、可能な限り冷静かつ適切に対応できるようにするための、心構えを養っておくことはとても大切です。


POINT1 警察に届出を行うと、直ちに警察官が病院に来て、関連するすべての証拠を押収される

POINT2 証拠書類にあたるのは、カルテ(検査結果やX線写真含)、看護記録、メモ類、チェックシート類などすべての書類。ただし最も重要な証拠はカルテと看護記録

POINT3 とにかく人海戦術ですべてのコピーをとる。色つきの書類なら必ずカラーコピー、物品なら写真を撮る


電子カルテのプリントし忘れは、隠蔽を疑われる

また、※電子カルテの場合、警察へはプリントアウトして提出するわけですが、提出し忘れたページがあると隠蔽を疑われるため、要注意です。一括出力でプリントアウトしたつもりが、実際には、リンクをクリックして開かなければプリントアウトされないページが残る場合が多いです。プリントのし忘れがあると、そのつもりがなくても証拠隠蔽を疑われる可能性がありますので、万全を期して電子カルテのソフトの操作に長けた人が、作業に携わったほうがよいでしょう。

なお、これも当たり前のことですが、※証拠書類は絶対に手を加えてはいけません。例えば、過去のカルテを整理しているときに良かれと思って何か補足したり、書き加えたり、訂正したりする等、絶対にしてはいけません。たとえ書き加えた内容が真実であっても、改ざんとみなされ、「嘘をついているのではないか」「ほかにも書き換えたところがあるのではないか」などと、あらぬ疑いをかけられるおそれがあるからです。

もし、どうしても何かを追記したいのであれば、追記したということが第三者にもわかるように、例えば別紙を添付して、誰がいつどこをどのように訂正するのか、訂正前と訂正後が明確にわかる形にして追記するようにしましょう。未整理の記録を整えるのはよいと思いますが、あたかもその当時に書いたかのごとくに書き加えるのは、絶対にやめてください。

いずれにしても、※記録類の管理がずさんだと、悪性立証※2)に使われることがあります。日ごろから記録類の整理と管理を心がけておきたいものです。

※2)悪性立証:起訴にあたり、検察官が被告人の悪い側面(前科や性格など)を強調して、立証すること。


POINT4 電子カルテの場合はプリントアウトして提出。提出し忘れたページなどがあると隠蔽を疑われるため注意すること

POINT5 提出書類は絶対に手を加えてはいけない。追記したい場合は追記したことが第三者にわかるように、別紙を添付して記載するように

POINT6 記録類の管理がずさんだと、悪性立証に使われることがある。日ごろから記録類の整理と管理を心がけよう


※次回は、事情聴取のときの注意点について解説します。

(『ナース専科マガジン』2011年2月号より転載)

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