1. トップ
  2. 看護記事
  3. 医療・看護技術から探す
  4. 体位変換・ポジショニング
  5. 体位変換ができない場合の4つの要因と対処法

【連載】難しい患者さんの日常ケア

体位変換ができない場合の4つの要因と対処法

  • 公開日: 2014/3/19

▼体位変換・ポジショニングについて、まとめて読むならコチラ
体位変換とポジショニング
▼褥瘡について、まとめて読むならコチラ
褥瘡とは?褥瘡の看護ケア|原因と分類、評価・予防・治療など


褥瘡ケアが難しい患者さんへの対応のキホン

 褥瘡ケアで大切なことは、ケアの一つひとつの根拠を考えながら行うことです。たとえば、体位変換はなぜ行うのか。それは長時間の体圧が同一部位にかかると、虚血状態が生じ組織の壊死が起こるので、虚血状態になる前に支持面を変える必要があるからです。

 しかし、たとえしっかり「2時間ごと」に体位変換を行っていても、患者さんの状態によっては、褥瘡が発生してしまうこともあります。つまり一律に「2時間ごとに体位変換する」のではなく、患者さんの個別性に合わせた褥瘡ケアをプランニングできるような、知識と褥瘡のアセスメント力、ケアの技術が必要です。

患者さんや家族への根拠を持った説明も大切

 最近では体圧が一部に集中しないように、さまざまな「体圧分散寝具」が開発されているので、それらを使用することで体位変換が難しい患者さんを無理に動かさなくてもよくなりました。

 しかし、体圧分散寝具を使用すればそれでよいわけではなく、褥瘡予防にはセルフケアも大切になってきます。褥瘡発生の要因として、その人の姿勢や寝方の癖など、生活習慣によるところも大きいので、患者さんや家族に協力を得られるよう、ケアの方法や注意点を、根拠を持って説明することが重要です。

 さらに、褥瘡ができると創ばかりに目がいきがちですが、排便コントロールやスキンケアなど、褥瘡発生の原因を除去するケアをしていくことが大切です。

体位変換できない患者さんにどう対処する?

 体位変換できない場合の要因として考えられるものには、主に以下の4つが挙げられます。

①治療上動かせない、循環動態が安定していない

〔理 由〕

 治療上動かせないとは、たとえば術後、患部を固定する装具をつけている、あるいは止血を図るために安静が必要な場合、などです。また、手術中も全身麻酔で長時間体位変換できずに寝たままの状態にあったり、術式によって特別な体位を取らざるを得ない場合などは、褥瘡発生のリスクが非常に高くなります。さらにICUの重症患者さんで循環動態が安定していない場合は、体位変換ができないこともあります。

〔対処法〕

 体位変換の意味は、「除圧をし、ズレと摩擦を逃すこと」にありますが、同一体位による高い体圧がコントロールできないのであれば、「体圧分散マットレス」を使用するのが一番です。術後などは、ある程度安静時間が予測できるので、治療目標を確認した上で、効果的な体圧分散マットレスをあらかじめ準備しておくといいでしょう。

②ターミナル期

〔理 由〕

 がんの悪液質からくる倦怠感や浮腫などで、体圧が上昇する反面、組織耐久性の低下が起きやすい状態です。さらに、低栄養になりやすいなど、褥瘡発生リスクは非常に高く、がんそのものの痛みで体位変換ができない場合もあります。

〔対処法〕

 ターミナル期では、十分に疼痛コントロールを行っても、体位変換での苦痛が取り除けない場合があります。この場合、患者さんの思いや希望、安楽を最優先し、効果的な体位変換が実施できない分、別の対策を講じ、患者さんや家族に説明し、同意を得ます。

 患者さんの苦痛の少ない体圧分散マットレスを選択し、体位変換の間隔の延長や、患者さんの体が動かない程度に、介助者の手でマットを押し下げて、一部分でも局所の除圧を行うなど個別に計画することが重要です。

③麻痺や四肢屈曲、拘縮がある

〔理 由〕

 脊髄損傷で痙性麻痺の患者さんの場合、車いすや頭側挙上(ギャッジアップ)が長時間となることで、ズレの排除や除圧が困難となり、特に坐骨部に褥瘡が発生しやすくなります。また、四肢に屈曲性の拘縮のある患者さんは、拘縮の影響で骨が突出しているために、その部位に圧力が集中しがちです。さらに体位変換をしても、屈曲拘縮のために姿勢保持が難しく、同じ向きになりがちです。そのため皮膚の密着部位に褥瘡が発生しやすくなります。

〔対処法〕

 こういった場合もやはり、体圧分散マットレスを使用するのがよいでしょう。また、拘縮によって、骨の突出部や関節など、体圧のかかる部分が決まってくるので、患者さんの状態に合わせたマットレスやクッションを選択します。そして、骨突出部や屈曲に合わせて体とマットレスの隙間をクッションで埋めていくことで、体圧を支える面積を多く取るようにします。

④認知症

〔理 由〕

 認知症の患者さんで、少し意識があり痛みも感じる場合は、痛い部位をかばってしまうために、どうしても同じ姿勢になりがちで、褥瘡が発生しやすくなります。

〔対処法〕

 まずは看護師が、同じ姿勢を長時間続けていないか、そして皮膚の状態を頻回に観察します。同時に、家族に具体的に観察すべきポイントを伝え、協力をしてもらうようにしましょう。

 また、患者さんの体動の癖を見極め、例えば踵に褥瘡ができやすいのであれば、あらかじめ踵に滑りやすいフィルムを貼るなど、摩擦やズレを回避する予防策を講じておくのも一つの方法です。ただし、いろいろな手を尽くしても、褥瘡を予防しきれない難しさもあるので、家族には「対策を講じても褥瘡が発生する場合があること」についても伝えておくとよいでしょう。

(ナース専科マガジン2014年4月号より転載)

この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

ポジショニングについてしっかりと学べる1冊

豊富な図で基礎から実践まで学べる  本書はセミナーや学会などで長年ポジショニングにかかわってきた田中マキ子先生が監修したポジショニングの基礎から実践まで必要な知識がまとめられている1冊です。改訂第2版となる今回は、スモールチェンジの効果など最新の知見も追加されています。

2024/2/7

アクセスランキング

1位

SIRS(全身性炎症反応症候群)とは?基準は?

*この記事は2016年7月4日に更新しました。 SIRS(全身性炎症反応症候群)について解説します。 SIRS(全身性炎症反応症候群)とは? SIRS(全身性炎症反応...

250839
2位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・用語...

250751
3位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974
4位

人工呼吸器の看護|設定・モード・アラーム対応まとめ

みんなが苦手な人工呼吸器 多くの人が苦手という人工呼吸器。苦手といっても、仕組みがよくわからない人もいれば、換気モードがわからないという人などさまざまではないでしょうか。ここでは、人工呼...

250017
5位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818
6位

アプガースコア(アプガー指数)

【関連記事】 ●新生児仮死における低酸素虚血性脳症の重症度分類|Sarnat分類 ●小児救急におけるトリアージと適切なアセスメント ●第1回 無痛分娩の麻酔の適応、方法、禁忌、外来での説...

248441
7位

陰部洗浄の目的・手順・観察項目〜根拠がわかる看護技術

*2020年4月16日改訂 関連記事 * おむつ交換のたびに陰部洗浄は必要? * 膀胱留置カテーテル 陰部洗浄・挿入・固定のコツ * 在宅療養におけるオムツ使用と陰部洗浄について知...

249675
8位

心電図の基礎知識、基準値(正常値)・異常値、主な異常波形

*2016年9月1日改訂 *2016年12月19日改訂 *2020年4月24日改訂 *2023年7月11日改訂 心電図の基礎知識 心電図とは  心臓には、自ら電気信...

250061
9位

吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コ

*2022年12月8日改訂 *2022年6月7日改訂 *2020年3月23日改訂 *2017年8月15日改訂 *2016年11月18日改訂 ▼関連記事 気管切開とは? 気管切開...

250001
10位

導尿の看護|手順やカテーテルの種類など

導尿とは?  何らかの原因で自力での排尿が困難な場合、尿道口からカテーテルを挿入し、人工的に尿を排出させることを導尿といいます。 【関連記事】 ●持続的導尿とは? 知っておきたいポイント...

308684