【連載】医療事故、あなたならどうする?

第4回 弁護士に依頼するタイミングっていつ?

監修 水島幸子

社団法人大阪府看護協会および社団法人兵庫県看護協会顧問弁護士。


直接、事故を起こしていなければ被疑者になることはないかというと、一概にそうとは言い切れません。

事故発生後、混乱することなく事実を整理し、対策を立てるためにも弁護士という法律のプロに依頼する必要があります。今回は、どの時点で依頼するのがよいのかを解説します。


Q 弁護士を依頼したほうがよいと言われましたが、事故のどの段階で依頼すればよいですか?

A 弁護士への依頼は、できるだけ早く、とにかく書類送検前に。

直接関与していなくても被疑者となる可能性はある

事情聴取というと、単に医療事故が起こった当時の状況について、警察から話を聞かれているだけと考えている看護師の方々もいるかと思いますが、警察はただ話を聞いているのではありません。事件性があるのかどうか、誰が被疑者(容疑者)なのか、一見して医療事故に直接関与していないスタッフに対しても、疑う姿勢で対応してきます。

つまり、※その当日現場にいなかったスタッフでも、被疑者になる可能性はあるということです。実際、管理不行き届きなどで、幇助(ほうじょ)罪に問われた事例もあります。

警察の事情聴取に呼ばれたけれど、自分が果たして被疑者なのかどうかということは、分かりにくいものです。事情聴取の際、刑事から「あなたは被疑者です」という通告もありません。そのため、※事故発生から何カ月も経過した後に書類送検されて初めて、自分が被疑者であるということを知るケースも多いのです。

そこで、自分が被疑者かどうかを見分けるポイントをご紹介します。それは事情聴取の冒頭で、「いまから話を聞きますが、言いたくないことは言わなくてもいいです。しかし言ったことは証拠になりますので、正確に話してください」という説明(これを「黙秘権の告知」といいます)を受ける場合があります。

※この黙秘権の告知を受けたら、被疑者として扱われているということを意味します(その時点で、「今のは、黙秘権の告知ですか」と質問してもいいでしょう)。あるいは、供述調書の冒頭に黙秘権の告知「あらかじめ被疑者に対し、自己の意思に反して供述する必要がない旨を告げて」という文言が記載してあれば、被疑者として扱われているということを意味します。


POINT1 直接事故を起こしたスタッフでなくても、被疑者になる可能性は十分にある

POINT2 送検されるまでに数カ月以上かかる場合が多い

POINT3 黙秘権の告知があれば、被疑者として扱われていることを意味する


対策を立てるため、早めに依頼する

ところで、医療事故が発生した場合、ご家族・ご遺族への適切な対応はもちろんのこと、警察対応において、不当に不利な立場に立たされないためには、※事故発生後、なるべく早い時点で、事実を整理し、どういう方向に進むのかを見極め、対策を立てなければなりません。こうした対策をきちんと立てるのは簡単な ことではなく、そのためには弁護士(刑事事件の場合は、「刑事弁護人」といいます)という法律のプロに依頼するのがベストです。

さて、質問にある弁護士への依頼の具体的な時期ですが、書類送検され、検事調べが始まろうとしている段階で依頼しても、時すでに遅しの感があります。※やはり、送検(事件が検察へ送られることを「送検」といいます)される前、できれば、警察へ異状死の届け出をした直後か、遅くとも黙秘権の告知を受けて自分が被疑者だと判明した時点ですぐに、弁護士へ依頼すべきです。

なお、弁護士にはそれぞれの得意分野があります。特に、医療事故の刑事事件は特殊な専門分野です。※なるべく、医療事故の刑事事件を多数取り扱ったことがある実績のある弁護士に依頼しましょう。近くに適当な弁護士が見つからない場合は、ほとんどの病院には顧問弁護士がいますから、※まず病院の顧問弁護士に相談して、紹介してもらうのもいいでしょうし、それでも見つからないような場合には、日本看護協会や各地の看護協会に相談するのもいいでしょう。私自身も看護協会からのご紹介で、これまで何件も医療事故の刑事事件を受任してきました。


POINT4 事故後早期に弁護士に依頼し、事実を整理し、どういう方向に進むか見極め、対策を立てておくことが大切

POINT5 遅くとも黙秘権の告知を受けた時点で、弁護士へすぐ依頼する

POINT6 医療事故の刑事事件に実績のある弁護士に依頼する

POINT7 弁護士が見つからなければ、
(1)病院の顧問弁護士に相談、
(2)看護協会に相談するとよい


※次回は、弁護士を選任する際の注意点について解説します。

(『ナース専科マガジン』2011年2月号より転載)

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