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【連載】大切な人を亡くす子どもへのケア

第17回 子どもと患者さんが触れ合える環境をつくる(前編)

  • 公開日: 2011/11/9

これまで、医師やソーシャルワーカーなど、医療の場で「大切な人を亡くす子ども」にかかわるさまざまな職種の人に、その役割について、事例を交えて説明していただきました。

どの職種からも一様に、「いつも患者さんの側にいて、子どもに接する機会の多い、看護師との協働がとても重要」と、看護師の役割に期待が寄せられていました。今回はこれまでの内容を踏まえ、あらためて看護師の役割について考えていきたいと思います。


子どもに積極的にかかわる、ある病院の看護師たち

連載前半でも述べましたが、患者さんの子どもへのかかわりに戸惑いを抱く看護師は多いようです。けれども、患者さんがターミナルステージの状態にある場合、残されている時間は限られています。そのような状況で、少しでも患者さんと子どもが一緒に過ごす時間がもてるように、家族に働きかけたり、場を整えたりすることが求められるでしょう。

「そうできたらいいが、実際にはとても難しそう」と思われる人も多いかもしれません。しかし、そのような難しい状況だからこそ、看護の力、チームケアが発揮される場面なのだと思います。

今回は、筆者が行った研究をもとに、子どもへのかかわりを整理していきます。

筆者は、X病院の緩和ケア病棟に勤務する看護師たちを対象に、大切な人を亡くす子どもへのかかわりに関するインタビュー調査を行いました。

X病院の緩和ケア病棟は、大切な人を亡くす子どもへのかかわりを積極的に行っている施設で、看護師だけでなく、医師、ソーシャルワーカーによるチームアプローチのもと、子どもに対し、がんや死に関する説明などをはじめとしたかかわりを行っています。

インタビュー調査の結果、子どもへかかわる上で大切であると、これらの看護師が共通して考えていたものには、「子どもをとらえること」「信頼関係を築くこと」「環境をつくること」「子どもに説明すること」の4つがありました。

以降では、これらについて、具体的な例をまじえながら説明します。みなさんが臨床の場で実践する参考にしていただければと思います。

[1]子どもをとらえること──年齢に応じたかかわりを持つ

この緩和ケア病棟に勤務する看護師は、まず、年齢によって異なる子どもをとらえ、子どもに合わせたかかわりを行っていくことが大切だと考えていました。

幼稚園や小学校低学年といった小さな子どもは、そのほかの年齢の子どもに比べて、親や祖父母に連れられて病院へ来る機会が多くあります。また、その年齢の子どもは、検温など、看護師が行う業務に率直な興味を示すことが多く、看護師が子どもに話しかけた場合にも素直な反応がみられやすいです。

例えば、「今日、お父さんとどんなお話をしたの?」と看護師が子どもに問いかけると、「絵本を読んでもらったよ」などの答えが返ってくることもあります。このような反応がみられると、声をかけた看護師もうれしいですし、子どもにかかわりやすいと感じます。

調査からも同じように、看護師は小さな子どもにはかかわりやすいと考えており、病棟での子どもとのかかわりを通して、子ども自身ができることを伝え、ケアへの参加を促していました。

一方で、看護師は、中高生については、学校や部活などで忙しいため、小さな子どもに比べて病院へ来る回数が少ないと、とらえていました。社会生活や子どもたち自身を取り巻く環境が広がる年代であるため、仕方がない状況といえるでしょう。しかし、病院に来る回数が少ないと、患者さんと十分には話せない状況になりやすいようです。

調査においても看護師は、子どもと患者さんが話す時間が少しでももてて、一緒に過ごせることが大切であることを子どもたちに伝えるために、「○○ちゃんが来てくれると、お父さんは元気がもらえるんだね、すごくいい表情をしているね」と話しかけるなどしていました。

このように、看護師が年齢などによって異なる子どもの特徴をとらえることにより、個々の子どもに応じたかかわりが可能となってきます。

[2]信頼関係を築くこと──まずは声をかけることから

調査では、看護師は、日ごろからの子どもとのかかわりを通じて、信頼関係を築くことが大切だととらえていました。

例えば、看護師は子どもと廊下ですれ違った際などに、「おはよう」「こんにちは」「○○くん、元気?」などといった簡単な挨拶をするなど、子どもたちによく話しかけていました。

一見、何気ない事柄のように思えます。けれども、このように日頃から子どもと接する機会を少しでももち、それを積み重ねることで信頼関係が築かれていくと思います。その点では特に、子どもとの信頼関係が築かれていくと、患者さんの病状が悪化した際に、子どもに対して患者さんへのケアにかかわるように促しやすくなると、看護師は考えていました。

このほか看護師は、子どもの前で患者さんに誠実に対応することが大切であると感じていました。例えば、がん患者さんでは病状進行に伴い、意識が朦朧として、つじつまの合わない話をすることがあります。

そのような場合、看護師は患者さんの話していることを否定したりせず、なんとか理解しようと、患者さん個人を尊重して対応したり、言葉をかけたりします。

看護師としてこのようにかかわることは、当たり前のことではありますが、患者さんへのケアを通じて、子どもとの信頼関係を築くことができ、子どもへのケアにもつながっていくのです。

(『ナース専科マガジン』2011年2月号より転載)

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