【連載】実践!エンゼルケア

第6回 エンゼルメイクの目的②腐敗とその対処

解説 小林光恵

「エンゼルメイク研究会」「看護に美容ケアをいかす会」代表

患者さんがご臨終を迎え、本人の人格やその尊厳を失わないよう、ご遺体がケアする人の手を離れるまでケアを行なう「エンゼルケア(逝去時ケア)」。本連載ではそのエンゼルケアの実践法を解説します。


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エンゼルケア(逝去時ケア)とは?目的・手順など


 今回は、死「腐敗」についてお話します。葬儀社の方が、遺体管理で冷蔵庫やドライアイスを使用するのは腐敗を抑制するためです。エンゼルメイク研究会でも、エンゼルケアの処置的な対応の中でもっとも注力しなければならないのは「冷却」だと考えるようになりました。

腐敗の対応について

腐敗抑制の第一の対策は「冷却」

 第2回で不可逆変化の話しをしましたが、腐敗も不可逆的に進んで行きます。平均的には、死後6時間後くらいから腐敗が始まりますが、早い方は死後4時間位でかなり進んでしまうこともありますので、できるだけ早い段階で腐敗の対応をすることが大切です。

 つまり、死後ケア=エンゼルケアの段階から、冷却の対応が必要になってくるということです。冷却対応をしっかり行うためにも「腐敗はなぜ起こるのか、どのように起こるのか」を理解しておきましょう。

腐敗しやすい方の判断方法

 亡くなる前から細菌は身体の中にあります。それらの細菌群は、亡くなったことでバランスを崩し、腐敗をもたらす細菌(中温菌)が繁殖し始めます。中温菌は温かい環境に繁殖しやすいため、冷却を行なわないと腐敗が早く進行するのです。腸内から腐敗が始まり、胸部に広がり、そして全身に広がります。


 進行の仕方には個体差があります。早く腐敗する可能性が高いのは、温かい環境で保管されているご遺体、臨終時に高体温だったご遺体などです。

 手先、足先、顔の表面は早く冷たくなりますが、体幹部分は熱がなかなか下がりにくく、冷却を行なわれないと腐敗しやすい状態にあります。

腐敗の対応説明図
図 腐敗の対応

腐敗を抑制するケア方法

 腐敗をもたらす細菌群の繁殖を左右するのが熱以外では水分と栄養です。水分や栄養が多い方、肥満で栄養が多い方などは腐敗進行が早い傾向だと言えます。逆に腐敗進行が緩慢な方は、水分や栄養が多くない方となり、在宅で亡くなる方のほうが病院で亡くなる方より緩慢の傾向があります。

 腐敗をもたらす菌にとって好環境であるかどうかを腐敗しやすい状態であるかの判断のポイントにしてください。季節にも関係しますから夏は、やはり腐敗しやすいです。

 腐敗が進むと同時に水分とガスが発生します。体内圧が高まっていき、お腹などが腫れて行きます。体内圧の高まりが漏液にもつながります。ガスが皮下に溜まって顔が腫れてしまうこともあります。

 エンゼルケア時の冷却対応としては氷か保冷剤を使う方法がよいでしょう。前述したように必ず冷却した方がよい部分は腹部と胸部です。

腐敗を抑制するケア方法説明図
図 腐敗を抑制するケア方法

 腐敗を抑制するためにはとにかく冷却が大事です。ただ、エンゼルケアの段階では、葬儀社の方が冷却対処を行うまでのつなぎですので、できる範囲で行ってください。

 次回は「エンゼルメイクの目的③『体温低下』と『死後硬直』」についてお話します。

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