【連載】看護学原論に立ち戻って考える!KOMIケアで学ぶ看護の観察と看護記録

第9回 看護にとって「病気」とは? ―看護のものさし⑤持てる力・健康な力を活用し、高める援助(2)

解説 金井 一薫(かない ひとえ)

NPO法人ナイチンゲールKOMIケア学会 理事長/東京有明医療大学 名誉教授

そもそも「看護」って何だろう?何をすれば看護といえるのだろう?本連載では、看護とはどのようなことであり、どのような視点で患者を観察し、また記録するのかについて、ナイチンゲールに学びながら解説します。


第8回のお話で、草花の育て方には「看護のものさし」の発想がすべて網羅されていることが理解できたと思います。草花を育てるには、それぞれの種子に宿る生命の力、すなわち「持てる力」をまず信じることから始めること。そしてその生命力に力を貸していくという行為が、すなわち看護ケアになります。

それでは今回は、患者さんの「持てる力」を十分に活かす看護について、まず何から始めたらよいかを解説していきましょう。

「持てる力」を十分に活かし、高める看護は " 観察習慣 " から

第7回でお話した、自分で食べる力、排泄する力、眠る力など患者さんが持つ多種多様な「持てる力」・「健康な力」を活かした看護をするためには、正確な「観察習慣」を身につけることが大切です。そして看護師の観察力は、自然に身につくものでははく、何をどう見るのかという思考力を鍛える訓練が必要になってきます。

また、思考力を鍛える訓練の前提となるのが、患者さんへの心からの関心と、看護に対する意欲や情熱です。ナイチンゲールは、観察の習慣を身につけられない人は看護師にはなれないと、はっきり述べています。

看護師というわれわれの天職にあっては、そうした正確な観察の習慣こそが不可欠なのである。というのは、身についた正確な観察習慣さえあれば、それだけで有能な看護師であるとは言えないが、正確な観察習慣を身につけないかぎり、われわれがどんなに献身的であっても看護師としては役に立たない、といって間違いないと思われる

続いて次のように断言しています。

もしあなたが観察の習慣を身につけられないのであれば、看護師になることを諦めたほうがよいであろう。なぜなら、たとえあなたがどんなに親切で熱心であるにしても、看護はあなたの天職ではないからである
『看護覚え書』(現代社)p.189,2011.

適切に看護を行うためには、看護師として何を観察すべきかを理解する必要がありますが、現代のように看護マニュアルや学習プログラムがなかったナイチンゲールの時代には、「観察習慣」を習得することが一番難しいことだったのです。

患者さんの「持てる力」を観察するKOMIケア理論とシステム

患者さんについて何を、どう観察すべきかについて、現代では様々な角度から検討され、体系化されていますが、ナイチンゲールの看護思想を基盤とし、そこに現代科学の知見を盛り込んで、今日の看護・介護現場で実践的に活用できるようにしたのが「KOMIケアシステム」です。

KOMIケアシステムでは、患者さんの「持てる力」や「消耗している事柄」を観察する項目を立て、看護師がアセスメントした結果をチャートに記すことで、その時の患者さんの状況を視覚化できるようにしています。

KOMIレーダーチャート:患者さんの「身体状況」を視覚化する

KOMIレーダーチャート

そのときの患者さんの生命力の姿が明らかになる。
健康な人であれば、すべての項目が外円上にマークされ、真ん丸な円となって表れる。

KOMIチャート:患者さんの「生活状況」を視覚化する

KOMIチャート

「持てる力」を表わす項目は黒く塗りつぶす。
そのため、ひと目で患者さんの生活の自立度が把握できる

KOMIレーダーチャート、KOMIチャートを活用することを習慣化することで、患者さんの「持てる力」を十分に活かし、高める看護につながるシステムです。またデータ化を図ることで看護情報の共有化に役立ち、看護計画立案の礎にもなるでしょう。


次回は、いよいよ実践編(看護の方法論)!
「持てる力」や「消耗している事柄」を観察する方法を紹介していきます。

ナイチンゲールKOMIケア学会」同学会は、理事長である金井一薫がナイチンゲール思想を土台にして構築した「KOMIケア理論」により、現代の保健医療福祉の領域において21世紀型の実践を形作り、少子高齢社会を支える人材の育成に寄与することを目指します。

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