【連載】がん患者さんを感染から守る!

第5回 浮腫・リンパ浮腫患者さんの感染対策と指導のポイント

執筆 清 好志恵

静岡県立静岡がんセンター、がん看護専門看護師

がん治療に伴い生じる浮腫とリンパ浮腫について、そのメカニズムとともに感染予防に関する基礎知識を紹介します。


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感染予防に欠かせない「スキンケア」

 リンパ浮腫における感染予防として、「スキンケア」は、早期から行われるべき必要不可欠で基本的なケアです。

 予防的スキンケアの柱となるのは、もっとも重要なバリア機能をもつ「表皮」の状態をいかに良好に維持するかです。スキンケアの多くは患者さん自身によるセルフケアとなるため、観察・ケアがなぜ必要かという理由を明確にし、セルフケアの重要性を理解してもらい、自発的に継続できるように指導を行うことが大切です。

 そのためには、まず正常な皮膚の構造と機能の理解を図るとともに、リンパ浮腫によって起こる皮膚のダメージを患者さんにも理解してもらうことからスタートすると良いでしょう。

 また、患者さん指導の際には、一度に大量の情報を伝えることは避け、広く浅い情報から段階を追って伝えていくことも大切です。

感染徴候がみられたら

 感染徴候として、浮腫のある部位の発赤や斑点、広範囲の発赤、熱感、圧痛などがみられます。感染徴候がみられたら、まず抗生物質の投与について医師の指示を仰ぎます。同時にリンパ浮腫であれば、患部の用手的リンパドレナージ、圧迫療法、運動療法をすべて中止して安静を保ちます。

 外的刺激を加えないよう注意して、スキンケアの三原則である皮膚の「洗浄」「適度な保湿」「被覆」を続けます。

 特にリンパ浮腫からの感染は、局所症状から全身症状への移行が急速で、全身状態へ移行すると、38℃以上の高熱、悪寒・戦慄などを生じます。午前中に発赤したと思ったら、午後には高熱が出るということがあります。極めてまれに敗血症に移行することもあり、早期発見と早期治療が大変重要です。

指導に役立つ3つの指標

 感染を起こさせないためには、感染を起こしやすい環境をつくらせないことです。そのためには、患者さんの個別性に合わせ、段階を追ったケアへの指導を行うことが大切です。

 個別性の指標としては、1.皮膚環境、2.行動環境、3.生活環境の3つのチェックをお勧めします。

1.皮膚環境

 皮膚の弱さ・強さ、硬さ・柔らかさ、白癬菌などの感染があるか、またそのために薬の処方を受けているかなど、患者さんの皮膚の状態を確認します。感染に至る侵入経路を遮断するための適切な洗浄と保湿の指導に役立てます。

2.行動環境

 仕事などで患者さんが日常的に行う行動のなかに、長時間の同一体位、重い荷物の持ち運び、温熱・寒冷刺激を受ける、部分的に圧迫する衣服を着用する、過剰な運動を行うなど、四肢に浮腫を生じさせやすい動作があるかを確認します。感染の前にまずリンパ浮腫を防ぐ指導に役立てます。

3.生活環境

 主婦であれば調理や水仕事が多い、大工さんであれば皮膚を傷つけやすい、畑に出ている人であれば日焼けや虫刺されをしやすいなど、生活環境の面から感染リスクを確認します。また、リンパ浮腫を生じやすい環境があれば、発症・重症化を防ぐ方法として、リンパ液や組織間液を心臓に戻しやすくするための患肢の挙上(図)やセルフリンパドレナージなどを指導します。
患肢を挙上した姿勢説明イラスト
(図 患肢を挙上した姿勢)

(『ナース専科マガジン』2015年10月号より転載)

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