【連載】知っておくと安心! イレウスの基礎知識とケア

イレウス(腸閉塞)とは?症状・原因・治療法や看護のポイント

解説 佐藤 幸宏(さとう ゆきひろ)

しば胃腸こうもんクリニック院長

イレウス(腸閉塞)とは、なんらかの原因で腸管内容物の肛門方向への輸送が障害されることによって起こる疾患です。


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【目次】


イレウスの分類(種類)

 イレウスは、原因によって、機械的イレウスと機能的イレウスの2種類に大別されます。機械的イレウスはさらに閉塞性と絞扼性に分類されます。

Ⅰ機械的イレウス

 物理的に腸管が塞がっている状態で、閉塞部の拡張、虚脱が明らかです。イレウスの90%が機械的といわれています。なかでも、手術後の癒着が原因で起こる術後癒着性イレウスが最も多いです。

➀閉塞性(単純性)イレウス

 単純性イレウスは腸管癒着、腸管壁の器質的変化、腸管外病変、腸管内異物などが原因で起こります。単純性イレウスは、早期には血行障害を伴わないことが知られています。

■腸管癒着
 癒着性イレウスは閉塞性イレウスの中でも最も多くみられます。その多くは腹部手術後に生じた癒着が原因です。癒着は腸管の捻転や屈曲、固定の原因となり結果として通過障害を起こします。

イレウス_癒着

■腸管の器質的変化
 イレウスの原因となる腸管の器質的変化では大腸がんが原因である場合が最も多いです。腹部手術の病歴がない中高年の方で、ゆっくりと発症するイレウスの場合は大腸がんの可能性も考慮してください。このような場合は、CTでないと診断に至らないことが多くあります。虚血性腸炎や炎症性腸疾患などが治る過程で生じる腸管の線維化もイレウスの原因となることがあります。

大腸がんによる器質的変化

■腸管外病変
 がんの腹膜播種や小腸への転移、卵巣がんや子宮がんへのからの浸潤が原因でイレウスが発生することもあります。

■腸管内異物
 胃石、胆石、誤飲した異物、寄生虫などが原因でイレウスが生じることもあります。

➁絞扼性(複雑性)イレウス

 絞扼性イレウスは癒着による索状物、腸捻転、腸重積、結節形成、ヘルニア嵌頓などが原因で起こります。絞扼性イレウスは、進行が早く、進行すると腸が壊死してしまうため、できるだけ早期に手術をすることが望ましいです。

■索状物
 炎症などによって生じた索状物により、腸管や腸間膜が絞扼され、血行障害を起こすことでイレウスを発症します。索状物で形成された隙間に腸管が入り込み、血行障害が生じて壊死が起こることもあります。

索状物

■腸捻転
 腸管が回転し、腸間膜もねじれ、腸管への血流障害や腸管の狭窄が起こります。S状結腸は可動性が大きく、基部が狭いため、特に軸捻転を起こしやすいことが知られています。

腸捻転

■腸重積
 口側の腸管が肛門側の腸管に入り込んで、嵌頓部位で絞扼されることで腸管の血行障害を起こします。成人の腸重積はがんやポリープなどの腫瘍を原因とすることが多いです。

腸重積

■結節形成
 非常に稀な病気ですが、腸管同士が結ばれて結節をつくることで血流障害を起こします。

■ヘルニア嵌頓
 ヘルニア嚢に腸管が嵌頓し、ヘルニア門で腸管もしくは腸間膜が絞扼されて腸管の血流障害が起こります。鼠径ヘルニアが多いですが、その中でも大腿ヘルニアが嵌頓しやすいので、注意が必要です。

Ⅱ機能的イレウス

 腸管に器質的な変化がなく、腸管の運動障害によって、腸内容物が停滞を起こします。機能的イレウスは、麻痺性と痙攣性に分けられます。

➀麻痺性イレウス

 腸管壁の神経や平滑筋が障害されることで腸管運動が麻痺します。麻痺性腸閉塞イレウスイレウスは開腹手術後に発症することが最も多いことが知られています。そのほか、腹膜炎や腹腔内出血、尿管結石や胆嚢結石の発作時、中枢神経の異常、腸間膜の血管閉塞などの原因で起こります。

➁痙攣性イレウス

 腸管の一部が痙攣を起こして収縮し、腸管内容物の運搬が障害されます。痙攣性イレウスは、手術や外傷、神経障害、中毒などがありますが、発症頻度は低いです。

イレウスの症状

 イレウスの症状は、腹部膨満、腹痛、嘔気・嘔吐、排便・排ガスの停止、脱水などがあります。イレウスの原因によって症状が異なるので、注意が必要です。

➀腹部膨満

 腸管の内容物が停滞することによって、腸管が拡張し、腹部の膨満感が起こります。閉塞部位が口側の場合は、嘔吐によって腸管内容物が排出されるため膨満感は比較的軽いです。大腸などの肛門側に閉塞が起こった場合には、徐々に腹部の膨満感が起こります。

➁腹痛

 イレウスでは、初期には軽度で間欠的な腹痛がみられ、徐々に強くなります。絞扼性イレウスの場合には強く持続的な腹痛を感じることが特徴です。絞扼性イレウスでは早期に血流障害を伴うため激しい腹痛がみられます。

➂嘔気・嘔吐

 口側に閉塞が起こると早期に嘔吐がみられ、肛門側に閉塞が起こった場合には、腹部の膨満による嘔気が起こります。

➃排便・排ガスの停止

 イレウスでは腸内容物の輸送が障害されるため、排便や排ガスが停止します。ただし、閉塞が完全ではない場合には、排便や排ガスが停止しないこともあります。

⑤脱水

 イレウスは腸内容物の停滞によって嘔吐が起こり、水分・電解質を喪失し、脱水が生じます。また、腸管壁の循環障害によって腸管の浮腫が起こった結果、と腸管内への水分・電解質が血管から腸管内に漏出し、することにより。腸管内に大量の水分が溜まるため、り脱水を起こしますます。そのため、腹部膨満や悪心、腸内容の逆流による嘔吐や水分・電解質の異常な喪失を伴う脱水などを生じます。

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イレウス診断の流れ

 イレウスの診断において大切なのは手術歴や症状の問診と腹部の張りを調べる触診です。経験的なものですが、1度イレウスになったことがある患者さんは何度もイレウスになりやすい傾向にあります。

 イレウスを見逃さないように身体所見をしっかり確認してください。また、イレウスの診断に必要な検査も確認してみましょう。

➀身体所見

 閉塞性イレウスでは腹部は柔らかく、強い圧痛などの症状は起こりません。初期では腹部がやや膨満する程度ですが、進行すると視診でもわかるほどに膨満します。また、腸管の攣縮によって細長い腫瘤を感知する腸強直が起こることもあります。

 教科書的には、腹部の聴診では金属性腸雑音といって、高い調子で響きのよい音が聞こえることが特徴といわれています。しかし、私の経験上は金属音が聞こえないことも多く、金属音が聞こえないからといって安心しないようにしてください。また、症状が進むことで金属音が消失します。

 症状が進行し嘔吐などで脱水が起こると全身の倦怠感が現れます。さらに症状が進むと頻脈、尿量の減少、顔面蒼白と脱力感が出てきます。

 絞扼性イレウスは腹痛や腹部膨満、嘔吐が起こり、進行が急激です。腹痛は激烈で腹膜炎症状を伴い、腸雑音は消失します。冷汗、顔面蒼白、頻脈、発熱などのショック症状が起こります。

➁各種検査による診断

 身体所見からイレウスが疑われた場合には、腹部単純X線検査、CT、注腸造影、小腸造影などの順で検査を行います。疑われるイレウスの種類によって、検査を使い分けます。

 腹部単純X線検査は閉塞性イレウスの診断にきわめて有効です。拡張した小腸にガス像が見えるとイレウスの疑いがあります。特に立位における腸管内の液体の貯留と、その上層にガス像を認める鏡面像(niveau)は典型的なイレウスのX線像です。

 注腸造影X線検査は大腸の閉塞性イレウスの診断に有効な検査です。ただし下剤による前処置は禁忌とされており、絞扼性イレウスの場合はこの検査は禁止されています。

 小腸造影X線検査はイレウスの狭窄部位や狭窄の程度を判断するための検査です。胃管やイレウス管に水溶性造影剤を注入することで行います。

 CTは拡張腸管、腸管内容、腹腔内貯留液の有無、腸重積の有無、閉塞の原因検索、腸管への血流などの診断に使います。特に絞扼性イレウスの診断に有効です。ただし、CTによる絞扼性イレウスの診断は熟達した外科医や放射線科医でないと難しいです。絞扼性イレウスの疑いがある場合は血流障害の有無を判断するために必ず造影CTを撮り、速やかに専門医に診てもらうことが必要です。

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イレウスの治療

 イレウスの治療は、保存的治療と手術療法に分かれます。保存的治療を行った後、症状が改善しない場合は手術を行います。ただし、絞扼性イレウスは進行が早く、できるだけ早く手術を行う必要がありますので、両者を区別することが重要となります。

保存的治療

 閉塞性イレウスや麻痺性イレウスなどに対しては、絶飲食で保存的治療が行われます。胃管もしくはイレウス管を挿入し、胃腸内容物を医療機器によって間歇的低圧持続吸引することで口側腸管の減圧を行います。挿入は、透視下で経鼻的もしくは経肛門的に行われます。

 嘔吐や吸収障害、腸管内容物の吸引によって脱水や電解質異常が生じるおそれがあるので、同時に輸液療法も行います。機能的イレウスに対しては、腸管麻痺を生じている原因を取り除くほかに、蠕動亢進薬や蠕動抑制薬を投与する治療法もあります。

※経鼻的に胃管やイレウス管を固定する際の注意点
 胃管やイレウス管は経鼻的に挿入することがほとんどです。私の経験した中に、チューブを固定した部位が圧迫され、斑点のような痣ができたり、鼻の皮膚が壊死してしまった患者さんがいます。鼻は目立つ部位なので、そういったことが起こらないように、患者さんの様子をみて、鼻の痛みにも注意するようにしましょう。

手術療法

 閉塞性イレウスにおいて、保存的治療を行っても回復しない場合は、手術療法が行われます。日本では、保存的療法を行って7~10日程度様子をみることが推奨されていますが、アメリカでは、保存的療法を行って2~3日で手術を行うことが推奨されています。私の経験上、保存的治療を行って改善する患者さんは少なくないですが、10日間も飲食をせずに様子を見ることは稀です。確かに、保存的治療で症状が改善すれば手術の必要はなくなりますが、閉塞性イレウスが絞扼性イレウスに進展する可能性もありますので、数日様子をみて再開通しないようであれば、手術を考えることも必要です。特に高齢者の場合、4~5日で栄養不良、筋力低下によってADL不良となるので、3~4日で手術をするべきだと考えています。

 絞扼性イレウスに対しては保存的治療の選択はなく、手術療法が行われます。絞扼性イレウスは進行が早く、腸管虚血や腸管壊死が疑われるときには、緊急手術によって絞扼部または腸管を切除する必要がありますが、早期に手術が行われれば腸管を切除せずに済む場合もあります。

イレウスの種類による治療法

閉塞性イレウス

・胃内に経鼻胃管を留置するか、小腸にイレウス管を挿入し、消化管の減圧を行う。
・絶飲食のため、電解質や栄養を補給するために輸液管理を行う。
・脱水状態のモニターのために尿量、尿比重、電解質やヘマトクリットのチェックをする
・保存的治療後、数日間改善がなければ、手術を考える

絞扼性イレウス

・診断がついた場合は、速やかに開腹し、壊死腸管を切除して、吻合する手術を行う。小腸の広範囲に壊死があると、術後に短腸症候群を起こす可能性がある。

麻痺性イレウス

・腹膜炎などの原因があれば、そちらの治療を優先する。
・開腹手術後の中枢神経系の異常による腸管麻痺では腸蠕動促進薬(プロスタグランジンF2α、プリンペラン、パントール)を投与する。
・胃管や浣腸による減圧が必要なこともある。

痙攣性イレウス

・まずは原因疾患の治療を行う。
・ブスコパンやアトロピンなどの鎮痙薬の投与が有効。

イレウスの禁忌

 イレウスの治療は絶飲食で行います。腸管が閉塞しているため、飲食をすることで腸管内の圧力が上昇してしまうためです。また薬剤の経口投与も禁忌となっています。

術後のイレウスを予防するためには?

手術中の処置が重要

 イレウスを予防するためには、手術中の処置が重要になります。開腹手術を行う際に、術野の汚染と腸管壁の炎症や乾燥を極力防止することが大切です。また、現在は「合成吸収性癒着防止材(セプラフィルムなど)」というヒアルロン酸とメチルセルロースでできた吸収性の人工膜が使用されています。これは、開腹手術を行った際に使用し、腹腔内の臓器の癒着を防ぐことによって癒着性イレウスを予防することを目的に使用しています。日本でも盛んに利用されており、使用者の半分程度で予防ができるという結果が出ています。ただし、腹膜炎などの炎症を起こしている場合には使用できないので、注意が必要です。

 手術による癒着を原因としないイレウスで最も多いのは、大腸がんを原因としたものです。大腸がんの検診を受け、大腸がんを早期に発見し治療することで、大腸がんを原因としたイレウスへの最大の予防手段となります。

治療後の食事開始はいつ?

 イレウスの治療は絶飲食で行います。しかし、絶飲食の期間が長いと、栄養が不足し、体が弱っていきます。
食事開始の目安は、ガスが出て、嘔吐がなくなり、排液が少なくなって、腹部の腫れがとれるか消失し、平坦になったたときです。排便が確認できれば食事を開始しても問題ありません。判断に迷う状態のときには、イレウス管を入れたまま食事を再開することもあります。

食事開始の注意点

 イレウスでは食事を再開したときに再発が起こりやすいので注意が必要です。再発した場合には再び絶飲食をし、様子を見ます。

 食事再開の際のポイントとしては、はじめは水から開始し数日様子をみて、流動食、固形の食事といったように段階的に食事を変えていくことです。ゆっくり変えていけばいくほど安全です。

 食事を再開する際の目安として、「イレウス管から排液が少なくなる」ということがありますが、チューブ自体が閉塞することで見かけ上排液がなくなったり少なくなっていることもあります。こういったことが起こらないためには、定期的にチューブが閉塞しないようにチューブにぬるま湯を流して洗浄しましょう。

 閉塞しているかどうかの判断は難しいですが、チューブで吸引したときにうまく吸えなかったり、洗浄したときにうまく流れないなどの場合は閉塞している可能性があります。

【イレウスの看護】脱水、嘔吐、便秘のケア

 イレウスを発症すると、患者さんは脱水や嘔吐を起こします。また、場合によっては便秘を起こすこともあります。イレウスを発症した患者さんのケアをする場合は最初の一晩に注意するようにしてください。医師はほかの患者さんを診ていたり、当直の場合は休んでいることもあります。一方、看護師は患者さんのベッドサイドにいて、患者さんの状態をしっかりと把握することができます。ですから、患者さんの痛みの状態や、腹部の張りの状況をしっかりと医師に伝えることが大切です。そうすることで、患者さんの痛みを軽減することもできますし、イレウスが進行して、絞扼を起こすリスクを減らすこともできます。

脱水のケア

 イレウスを発症した患者さんは必ず脱水を起こします。尿が出なくなってから点滴を開始する医師もいますが、早期から点滴を開始する必要があります。早期に点滴を開始しないと、手術を行うときには脱水が進み、ショックが起こることもあります。そのため、水とナトリウムを補う必要があります。また、嘔吐による電解質異常を是正するためにナトリウム、カリウム、クロールを補給することも重要です。

嘔吐のケア

 イレウス管を鼻から挿入し、嘔吐のもととなる胃や腸の内容物を体の外に汲み上げることが嘔吐のケアにつながっています。嘔吐によって誤嚥性肺炎を起こすリスクが高まります。特に高齢者の場合は、誤嚥性肺炎だけでなく、窒息死のリスクもあるので、排液が持続的にあるかどうか、チューブの折れ曲がりがないかなどを確認してしっかりとケアをしましょう。同時に腹部の痛みを訴えている場合にはブスコパンなどの痛み止めを使用するのもいいでしょう。しかし、痛みが止まらない場合は絞扼していることもありうるので、ドクターコールが必要となります。

便秘のケア

 ほとんどのイレウスは小腸に閉塞が起こるので、便秘のケアはあまり行いません。悪性腫瘍が原因で大腸に閉塞が起こった場合には基本的に手術となりますが、便性イレウスの場合には主に便秘のケアが必要となります。しかし、ケアの優先順位からすると、脱水や嘔吐が先です。逆に、便秘があると、イレウスになりやすい可能性はあります。海藻類は腸壁にくっつきやすいと言われており、海藻類を食べることを避けるのも予防につながります。

 管理するときには体内に入っているチューブの閉塞も念頭に置いて、患者さんをよく観察するようにしてください。

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