【連載】早期介入がイイのはなぜ? 重症患者の経腸栄養Q&A

第11回 経腸栄養の合併症やリスクにはどのようなものがあるの?

執筆 鈴木俊繁

日本赤十字社水戸赤十字病院 救急科部長

Q.経腸栄養の合併症やリスクにはどのようなものがあるの? 誤嚥・嘔吐はどうしたら予防できるの?

A.チューブ接触による潰瘍、誤嚥や胃食道逆流に注意。胃内残存量を的確に把握し、投与時の速度や体位を検討していきます。

嚥下・咳嗽の反射が弱い患者さんに注意する

 合併症の予防と対策については、経鼻チューブを入れて施行する場合と、胃瘻・腸瘻などの消化管瘻アクセスの場合とに分けて考える必要があります。
 
■潰瘍・炎症など
 経鼻アクセスの場合、入院時や麻酔導入時などに排液のドレナージ用に挿入された太くて硬いチューブを長く留置すると、鼻翼の潰瘍や鼻中隔の壊死、副鼻腔炎、中耳炎、嗄声、声帯麻痺、食道潰瘍などの合併症を起こす危険があります1)。そのため、経腸栄養専用の細径カテーテルを用いるようにします。5~12Frのサイズが推奨されます1)

■気管への誤挿入
 経鼻チューブを胃内に確実に留置できているかは、聴診法などさまざまな方法で確認できます。今のところ、X線撮影(胸腹部単純写真)に勝る確認法はない1)とされています。
 
 気管に誤挿入した場合は、咳嗽反射によって気づく場合が多いですが、意識障害を伴う患者さん、気管挿管・気管切開されて人工呼吸管理されている患者さん、嚥下反射や咳嗽反射が何らかの理由で弱くなっている患者さんでは、誤挿入に気づかない場合も多々あるので注意が必要です。誤挿入のまま経腸栄養剤を投与すると重篤な合併症を引き起こすため、絶対に避けなければいけません。

■誤嚥
 誤嚥の危険性の高い患者さんには、幽門や十二指腸およびトライツ靭帯を越えて空腸内にカテーテルの先端を留置することを検討しましょう。
 
 チューブの先端が胃にあって、胃の貯留能が大きい場合には短時間注入(ボーラス投与)でも問題ありませんが、空腸内に先端がある場合は、下痢やダンピング症候群を起こさないよう、1時間あたり100mL以下の投与量になるようにします(図)。経腸栄養ポンプを使うと、時間あたりの投与量が設定できるので便利です。経腸栄養を一律に中止しても誤嚥の予防にはならないといわれています。
 
経腸栄養時の適切な姿勢

胃や腸の運動を促す消化管運動賦活剤も検討できる

■消化管外への誤留置
 胃瘻や空腸瘻を留置している消化管瘻アクセスの場合には、チューブの交換時にカテーテル先端が消化管外に留置されてしまうことによる合併症に気をつけなければなりません。胃瘻では特に、腹腔内へ誤留置されたまま経腸栄養剤を投与すると、汎発性腹膜炎による致死的な事態を招くため、注意が必要です1)

■胃食道逆流・誤嚥
 胃内への投与の場合、栄養剤の胃食道逆流と誤嚥が注意すべき合併症として挙げられます。胃食道逆流を防ぐためには、まず適切な胃や腸管の運動があることを確認することが大事です。重症病態では生体反応として脳や心臓の血流が最優先されるため、腸管の血流は乏しいことが多く、カテコラミンなどの昇圧剤を用いている場合はその徴候が顕著になりま2)。消化管に栄養を投与する場合は消化管運動に対して常に気を配ることが重要です。消化管の動きが悪い時には、消化管運動賦活剤として、モサプリドクエン酸塩(ガスモチン®など)、六君子湯®、塩酸メトクロプラミド(プリンぺラン®など)、エリスロマイシン(エリスロシン®など)1)2)などを適宜使用することを検討します。
 
 次に、仰臥位の時間が長くなるほど誤嚥や肺炎の頻度が高くなり、角度45°の上半身挙上で肺炎発症率の低下が報告されている1)2)ので、経腸栄養投与時は角度30~45°の上半身挙上をルーティンにしましょう。しかし、頭部挙上により循環動態が不安定になったり、強い上半身挙上が腹部の圧迫につながることもあるので、主治医と相談のうえ、挙上の角度を決定します。
 
 胃内残留量の測定は誤嚥や胃食道逆流のリスクをモニタリングする有用な方法である1)とされており、胃内残留量が多い症例では適切な処置を行うことが推奨されています2)。しかし、チューブから引ける量が胃内残留量を正確に反映するとは限りません。胃食道逆流のハイリスク患者さんに対しては投与中、投与前後での腹部の様子を観察し、例えば50mLの注射器や浣腸器などで抵抗なく胃の内容物が吸引される場合には、経腸栄養剤の中止を検討するなどの柔軟な対応を考えるべきでしょう。


参考文献
1)日本静脈経腸栄養学会,編:静脈経腸栄養ガイドライン 第3版.照林社,2013.
2)巽博臣,他:経管栄養開始時の条件 循環の安定性の評価、腸管機能評価、合併症対策.日本静脈経腸栄養学会雑誌 2015;30(2):659-63.


この記事はナース専科2017年5月号より転載しています。

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