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【連載】今こそ、 訪看デビュー 働き方が選べる!スキルが上がる!

なぜ、今、訪問看護なの?②

執筆 小沼絵理

日本訪問看護財団 「訪問看護eラーニング」担当

目次


訪問看護師を増やすための教育・キャリアアップ施策

1 不足する訪問看護師の現状

 国は、前述したほかに、地域医療介護総合確保基金を活用し、各都道府県の在宅医療提供整備に対し助成を行っています。これにより、訪問看護の人材確保に関する研修会が実施されるなど、訪問看護師を増やす努力はされていますが、まだまだ足りていません。
 
 2016年の就業看護職員数は155万9,562人(実人数)ですが、そのうち訪問看護ステーションに就業している看護職員は4万6,977名で、全体の3%にすぎません(図1)1)。一方、訪問看護ステーション数は、ここ数年増加傾向にあります(図2)。つまり、多くの訪問看護ステーションが人員不足に悩んでいるのです*4
 
看護職員の主な就業先

訪問看護ステーション数の推移
 
 かつては、訪問看護師になるためには数年の臨床経験が必要だといわれていましたが、就業している看護師の多くが基礎教育で在宅看護論を学習していること*5、訪問看護師の高齢化*6などの理由により、今では新卒であっても訪問看護師になることが推奨されてきています。
 
 しかし、「訪問看護ステーションは、職員数が数名の小規模事業所が多く、新卒者に対する教育が難しい」「看護師養成機関が学生の就職先として医療機関を勧めることが多い」といった理由から、新卒訪問看護師はまだわずかです。

*4  求人倍率:2015年度2.22倍⇒2016年度3.69倍と施設別で最も高い2)
*5  1997年度から看護師基礎教育に「在宅看護論」が採用されている
*6  訪問看護ステーションの就業看護師の約76%が40歳以上3)

2 新たな訪問看護師を生み出すための研修制度

 このような現状はありますが、訪問看護師の増員と質の向上をめざし、さまざまな方策が提案されています。

 看護職免許があれば訪問看護を行うことは可能です。そのため、医療機関に勤務する看護師が訪問看護に携わることはいつでもできます。しかし、訪問看護には医療機関とは異なり、基本的に利用者の居宅で単独で看護サービスを提供するという大きな特徴があります。また、基礎教育で在宅看護論を学習していたとしても、医療機関での急性期看護を経験することで、利用者が「生活者」である視点を忘れがちになってしまうこともあるようです。
 
 そこで、訪問看護を始めるにあたり、さまざまな研修などが用意されています。訪問看護の入門編として日本看護協会が開発した「訪問看護入門プログラム」、各都道府県のナースセンター事業として開催されてきた「訪問看護師養成講習会」、ほかに、自宅や職場で訪問看護を学習できる、日本訪問看護財団の「訪問看護eラーニング」が代表的な研修プログラムです。

 ここでは、日本訪問看護財団の「訪問看護eラーニング」を紹介します。前述した訪問看護師養成講習会は、全日程に約30日間を要するため、小規模な訪問看護ステーションでは職員が参加しにくい状況がありました。また、離島や山間地域などでは、地理的に参加できないといった課題も指摘されていました。そこで、それらの課題を解決すべく開発されたのが、インターネットを活用した通信教育システム「訪問看護eラーニング」です。2008年に開講し、これまでに約1万3,000名が受講。訪問看護師養成講習会の講義部分に、「訪問看護eラーニング」を活用する都道府県看護協会が29都府県になるなど、広がりをみせています。

 医療機関などに勤務している看護師で、いずれは訪問看護を始めてみたいと考えている人や、退院支援に活かしたいと思っている人には、ぴったりの研修スタイルではないでしょうか。

 また、最近では認定看護師、専門看護師、特定行為研修など、より専門的な看護をめざす訪問看護師も増えています。認定看護の訪問看護分野は1998年に分野特定され、2006年に訪問看護認定看護師第1号が誕生しました。2018年3月現在、568名の訪問看護認定看護師が活動しています。
 
 専門看護において在宅看護分野が特定されたのは2012年ですが、1996年には地域看護分野が特定されており、ここに在宅で活動する看護師も含まれていました。2018年3月現在、46名の在宅看護専門看護師が活動しています。

 そして、最近注目されているのが「特定行為に係る看護師の研修制度」です。在宅ケアにおいては「利用者の体調変化にタイムリーな対応が可能になる」「予防的視点をもって重症化予防が可能になる」などの効果が期待されています。

 訪問看護では、小規模な事業所が多いこともありキャリア形成に不安をもつかもしれませんが、さまざまな学習の機会があり、可能性を伸ばすことはできるのです。


引用文献

1)、3) 厚生労働省:平成28年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況.(2018年6月22日閲覧)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/16/dl/kekka1.pdf
2)日本看護協会中央ナースセンター:平成27年および平成28年度ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人に関する分析報告書.(2018年6月22日閲覧)(平成27年)https://www.nurse-center.net/nccs/scontents/NCCS/html/pdf/h27/2271.pdf(平成28年)https://www.nursecenter.net/nccs/scontents/NCCS/html/pdf/h28/2281.pdf


この記事はナース専科2018年9月号より転載しています。

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