【連載】看護師のための輸液講座

第18回 中心静脈カテーテルは定期的に入れ換える必要がある?

監修 日本コヴィディエン株式会社

シングルユース医療機器の製造及び販売、並びにこれらに関連する一切の事業

執筆 井上善文

医療法人川崎病院 外科 統括部長

中心静脈カテーテル(central venous catheter:CVC)はいつまで留置できるのか?そんなことを考えたことがありますか?答えは、『いつまでも』留置できる、でいいと思います。『いつまでも』とは言っても、具体的にはどのくらいの期間なのですか?ということになりますが。とりあえず現在のカテーテルの材質であれば、10年以上、という答えにしておきましょう。もちろん、これは長期留置用カテーテルの話です。
しかし、それなら、通常、病棟で使われている短期用カテーテルと言われているものはどのくらいの期間留置できるのですか?これもカテーテルの材質がシリコーンやポリウレタンでできていますので、かなり長期間留置できるはずです。要するに、合併症を起こさずに管理すれば、かなり長期間使用できるはずです。一番重要な合併症はカテーテルの感染なのですけど、と言えば、とにかく感染させない管理をすれば長期間留置して使用できるはず、ということになります。もう20年以上前になりますが、いわゆる普通のカテーテルで在宅静脈栄養をやっておられた患者さんがいました。自分で感染しないようにと『気をつけて、気をつけて』管理しておられ、当時のシリコーンカテーテルが材質として劣化するまで、という表現が適切でしょう、7年間、使用されていました。抜去したのは私ですが、少し引っ張るとプチプチと切れる、という段階まで使っておられました。要するに、管理さえ良ければ、このくらいの期間は現在のカテーテルの材質であれば留置可能である、ということです。(図1)
シリコン製CVCの写真
それでは、なぜ、こんなタイトルを第18回の『看護師の輸液講座』に選んだのか?という疑問が湧いてくると思います。いつまでも留置できるんでしょう?感染対策さえきっちりとできていれば、という考えになったばかりなのに。
『感染対策さえきっちりとできていれば』というところがポイントです。『きっちりと』とは言っても、完璧ではありませんし、患者側の問題や、管理中の小さなトラブルなども起こる可能性があります。逆に言えば、『感染対策がきっちりできていなくても、感染する前に入れ換えればいいんだ』と考えておられる方も多いようです。それに対して、なんらかの回答らしきものをお伝えすることができればいい、と思ってこのタイトルを選んだのです。

なぜ、CVCを定期的に入れ換えるべき、という考え方がある?

当然のことですが、留置期間が長くなるほど、CVCが感染する機会が増えます。単純に考えると、CVCの皮膚挿入部の固定糸が感染する機会が増えますし、輸液が汚染する機会が増えますし、側注などをしているとそこから感染する機会が増えますし、輸液ラインがはずれたり血液が逆流したり・・・、という機会も増えます。だからある程度の期間が過ぎれば、感染する前に入れ換えた方がいいのではないか、ということになるのです。この考え方が過ぎると、『3日毎に入れ換える』、『1週間毎に入れ換える』、ということになってしまうのですが、そんな短期間では・・・と思いませんか?
また、入れ換えるなら新しく穿刺するよりも、ガイドワイヤーを用いて入れ換える方が安全であるという検討も行われています。これについては、私は、定期的な入れ換えではなく、発熱をきたしてカテーテル感染かの診断がつきにくい場合にガイドワイヤーを用いて入れ換えて診断する、という方法もある、という論文 は発表しています。(図2)

GWを用いたCVC入れ替え手順

私が研修医の頃、ほぼ30年前ですが、日本の栄養管理をリードしていた大阪大学第一外科のIVH研では、30日毎にCVCを入れ換えるというプロトコールがありました。とにかく『感染する前に入れ換える』という考え方がありました。しかし、私がこの研究室で仕事をするようになった1985年頃には、定期的にCVCを入れ換えるというプロトコールはなくなっていました。要するに、ある一定期間CVCを留置しておくと、感染の危険が高まる、だから『感染する前に入れ換える』べきである、という考えになるのです。ご理解できましたでしょうか?

CVCは定期的に入れ換えるべきなのか?

結論と言いますか、現在、ガイドライン等で推奨されているのは、『CVCは定期的に入れ換える必要はない』です。データとしても示されています。要するに、カテーテルを定期的に入れ換えた場合と、なんらかの合併症が起こるまで留置した場合で比較すると、CRBSI発生頻度には差がなく、カテーテル留置期間は定期的な入れ換えを行わなかった場合の方が有意に長かった、という報告があるため、です。(表1)

報告表

それでは、本当にこれが結論である、としてもいいのでしょうか?ここが重要です。このデータを支持する論文では、3日または7日毎に入れ換える、という方針で検討されています。CDCのガイドラインで『カテーテル感染予防のためにルーチンにカテーテルを入れ換えない』と推奨している根拠となっているEyerの論文では、1週間毎の入れ換えでの検討です。外科ICUでの検討結果です。マルチルーメンが用いられ、多目的にCVCが使用されている場合のようです。こういう状況での検討結果ですから、安定した症例で、ある程度の長期間症例においては、この内容は適用できない可能性があります。
私、個人的な考え方になってしまいますが、定期的な入れ換えは推奨しません。その理由の一つは、入れ換えればいいんだから、という考え方になってしまい、管理自体が非常に『いい加減になってしまう』可能性が高いからです。現状としても、救急領域などでは、『熱が出ればカテーテルを抜けばいい、新しく入れ換えればいい』という考えで管理されている施設も多いようです。管理が『いい加減』なのであれば、定期的に入れ換えるという考え方もあります。しかし、これは、カテーテル感染を非常に甘くみていることになります。すべてのカテーテル感染がカテーテルを抜去すればオシマイ、ではありません。カテーテル管理の基本は、感染させないように厳重な無菌管理を行う、ということであり、これが遵守できない場合には定期的に入れ換えればいい、という考え方は論外です。とにかく、厳重な無菌管理を行うべきであり、定期的なCVC入れ換えは推奨されてないし、私も推奨しません。

一定期間が経過したらCVCを入れ換える方がいい場合もあるのでは?

これからは、エビデンスに則った話ではありません。長年、栄養管理、CVC管理、CRBSI対策に携わってきたものとしての経験からの話です。 CVCは、その使用目的、予定留置期間によって選択すべきです。何年ものTPN管理が必要な症例では、長期留置用のBroviac/Hickmanカテーテルや完全皮下埋め込み式カテーテル(ポート)を使うべきです。多種類の輸液・薬剤を投与する必要がある場合はポリウレタン製の短期用CVC(マルチルーメンカテーテルも含む)を使うべきです。
当科では、安定した症例のほとんどは、すでに説明しました、PICCを用いています。平均留置日数は30日から50日というところです。しかし、安定していて、TPN管理だけを行っておけばいい症例では感染率も低いのですが、多種類の輸液・薬剤を投与する必要がある場合には感染のリスクが高くなります。悩むのがこういう場合です。私は、多種類の輸液・薬剤を投与する必要がある症例に対しては、期間は非常に曖昧なのですが、たとえば、1ヶ月以上が経過したなら、入れ換えるという方針もおかしくないように思っています。感染対策が完璧であれば感染しない、それだったら留置期間がどれだけ長かろうか、入れ換える必要はない、ということになります。しかし、考えてみると、当科での感染対策が完璧かというと、(1)輸液の大部分は薬剤部で無菌調製されていますが(図3)、病棟での混注も行われている(図4)、(2)輸液ラインは基本的にはI-systemを用いた一体型を用いているが、一体型ではない輸液ラインを使わざるを得ない場合もある、(3)インラインフィルターを使っているが、あらかじめ組み込まれたものばかりでなく、途中に組み込む必要がある場合もある、(4)三方活栓は組み込んでいないが・・・、など、管理上の問題がある症例もあります。そういう場合、主治医達は熱が出るまでは使えばいい、熱が出たら抜いて入れ換えたらいい、という風な雰囲気があります。それでいいのだろうか、といつも思っているのです。こういう場合は、たとえば、1ヶ月くらいで入れ換えた方が感染のリスクが下がる、そういう考え方も必要なのではないでしょうか。感染してから入れ換えるということは、感染巣を残すことになる可能性もあるし、感染によって病態が複雑化することもあるからです。

薬剤部での無菌調製の様子

病棟での輸液調整の様子

そういう考えはあると思うけど、入れ換えるたびに、気胸や血胸などの機械的合併症のリスクがあるし、患者さんも苦痛なのではないか?確かにそうなんですが、そういう問題をクリアするために、私は上腕PICC法(図5)を導入した、と言っても過言ではありません。安全にCVCを挿入できるようにしておけば、感染する前にCVCを入れ換えることもできる、その入れ換えにおいて機械的合併症が起きるリスクもほとんどない、そうすれば、CVCの感染率をゼロに近づけることができる、そう考えています。

上腕PICC法

長期留置用カテーテルの場合は?

Broviac/Hickman カテーテルは入れ換える必要はありません。感染さえさせなければ何年でも使うことができます。抗生物質ロックやエタノールロック、などの手段を用いて感染に対する治療を行う場合もありますから。本当に長期留置をめざすなら、ポートよりもBroviac/Hickmanカテーテルです。体外部分が損傷した場合には修理することもできますし(図6)。

Hickmanカテーテルのリペアの写真

ポートの場合は、ある意味、寿命があります。寿命という表現が正しいかどうか、私にもわかりませんが。寿命というのは、ポートのセプタム(圧縮シリコーンでできた、ヒューバー針を刺入する部分)の針刺し回数という意味です。通常は22ゲージのヒューバー針で、セプタムを機械的に万遍なく刺入して2000回が耐用穿刺回数とされています。計算上は2000÷365日で5年半です。しかし、万遍なく刺すことは不可能ですし、どうしても中心部近くを刺すことになります。5年くらいが経過しますと、セプタムの中心部のシリコーンが削られて穴が開いてしまいます(実際には大きな穴が開く、ということではないのです。図7)。輸液が漏れるようになってしまいます。ですから5年くらいが寿命と考えるべき、ということです。感染させずに5年間使用できたら、ポートの寿命と判断して入れ換えるようにする、これが一つの考え方です。ポートのセプタムに穴が開いて、そこから輸液が漏れて皮下ポケットが感染したから入れ換える、これは方針としておかしい、感染する前に入れ換える、それが適切な治療方針のはずです。入れ換える場合でも、私は、留置されているカテーテルの周囲に形成されている線維性鞘を用い(図8)、ポートの位置は変える、という方針で管理しています 。

ポートの寿命

カテーテル入れ替え

まとめ

今回の内容は、ナースにとっては難しい内容であったかもしれません。しかし、CVC管理はいい加減でも良い、定期的に入れ換えればいいんだから、という安易な考えになって欲しくない、という意味で読んでいただきたい、と思ったからです。基本は、『カテーテルは定期的に入れ換える必要はない』と、とにかく、『感染させないような厳格な無菌管理を行うことである』、のです。

i 井上善文、ほか:ガイドワイヤーを用いたカテーテル入れ換え法の意義-カテーテル敗血症診断の一手段として-.ICUとCCU 1991;15:851-857
ii 井上善文、ほか:先在するカテーテル周囲に形成された線維性鞘を用いた長期留置用カテーテル入れ換え法の意義.外科と代謝・栄養 2007;41(1):25-31

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